もう一度政権交代したい…窮地の立憲で浮上した「野田佳彦代表説」に歓喜の声!存在感がない泉代表には蓮舫もバッサリ

とにかく存在感がない泉健太
存在感が薄い立憲民主党の泉健太代表に「黄信号」が点滅している。昨年夏の参院選敗北後も続投した泉氏は執行部をベテラン議員で固めたものの、政党支持率が一向に上向かず、強い危機感が党内に充満しているのだ。4月の統一地方選や補欠選挙で惨敗を喫すれば “退陣” もささやかれる。「ポスト泉」として待望論が上がるのは野田佳彦元首相だ。民主党政権最後の宰相として裏も表も知る経験豊富な首相経験者に再評価の動きが広がる。
「まだまだ乗り越えないといけないハードルが沢山ある。政権交代に向けて多くの仲間を党に結集し、全力で取り組んでいこうではありませんか」。2月19日に開催した党大会で、泉代表は所属議員らに呼びかけた。2023年度の活動計画には「各党との『政策別連携』を深化する」と明記しており、昨秋の臨時国会から共闘する日本維新の会などと連携を強化しながら次期衆院選での政権交代を目指すという。
だが、維新とは憲法改正や安全保障政策で隔たりが大きく、かといって選挙協力を期待する共産党に近づきすぎれば「支持層が逃げてしまう」(ベテラン)という課題は解消できていない。保守層から一定の支持を集める維新と、革新の共産は「水と油」であり、どちらにも笑顔を見せる関係が奏功するとみるのは一部に限られる。
こうした曖昧な立ち位置は政党支持率にも表れる。立憲民主党の支持率はNHKの世論調査(2月10~12日)で5.4%にとどまり、38.0%の自民党に大きく離されている。維新は4.1%と迫っており「野党第1党」の座を守り続けられるか否かも見通せない。
蓮舫バッサリ「泉代表は発信力がダメ。経験が浅く、知名度がない」
最大の課題は、泉代表の指導力と発信力だ。中道層の取り込みに躍起となっているものの、民主党時代の仲間だった国民民主党の玉木雄一郎代表らとの距離はいまだ埋まっていない。4月の衆院補欠選挙で最重要選挙区に位置づける千葉5区では、維新や共産、国民民主も候補者を擁立する見通しとなっており、野党共闘の道筋を描けているとは言い難い。
加えて、どっちつかずの立ち位置は発信力を低下させている。ニュースで取り上げられるのは、閣僚辞任や首相秘書官による差別発言などを受けて発したコメントがほとんどで、そこには政権交代前夜を思わせる前向きなメッセージは皆無だ。NHKによれば、同党の蓮舫参院議員は1月17日の講演で「泉代表の発信力がダメなのではないか。経験が浅く、知名度がない人をトップに立てると、まっとうな政策を言っても国民に届かない」と先の参院選敗北の原因を分析したというが、この発言に共感する人は少なくないだろう。
危機感を募らせる岡田克也幹事長が「今年1年が大きな分岐点になる」と語るように、泉代表には悠長に構えている時間はない。1強時代が続く自民党はおろか、野党第2党の維新にさえもマウントをとられる可能性があるからだ。4月の統一地方選と補欠選挙で敗北すれば「泉おろし」の号砲が鳴るのは避けられないとみられている。
野党担当の全国紙政治部記者が解説する。「4月の選挙で敗れたら、泉代表はもたないでしょう。また党内はバタつきますよ」。
その動きとリンクするように再評価の動きが広がるのは、野田元首相だ。民主党政権最後の宰相として東日本大震災からの復興や社会保障・税一体改革、環太平洋経済連携協定(TPP)などに取り組み、自衛官の倅(せがれ)として保守層からも人気がある。
「野田代表」待望論が一気に噴出
2012年末の首相退任後は表だった言動を控えていたものの、地元・千葉の駅頭に立つことは忘れない異色の首相経験者でもある。安倍晋三元首相の死去を受けて行われた22年10月の国会追悼演説では「勝ちっぱなしはないでしょう、安倍さん」と語りかけ、昭恵夫人は「野田先生にお願いして良かった。主人も喜んでいるでしょう」と涙を浮かべた。松下政経塾1期生の野田氏は11年の民主党代表選で見せた「ドジョウ演説」を持ち出すまでもなく演説力には定評があり、自民党内でも「首相経験者として痛いところを突く質問をしてくる」(閣僚経験者)と評価する声があるほどだ。
2月8日、衆院予算委員会の集中審議では1993年の初当選同期で、早大の同窓でもある岸田文雄首相を高い質問力でうならせた。ロシアによるウクライナ軍事侵攻後も、経済制裁を担当する西村康稔経済産業相がロシア経済協力担当相を兼ねている点について「実務もないのに、なぜ大臣を置き続けるのか」と追及。昨年末に岸田首相が決めた防衛費大幅増に伴う増税プランに関しては「国民にお願いするならば、せめて議員定数を削減するくらい言ったらどうか」と迫った。何でも反対の姿勢ではなく、国民が抱く素朴な疑問をぶつけながら共感を得ていくのは野田氏の持ち味でもある。
枝野幸男前代表の後に就いた泉代表の任期は、来年9月末までだ。党内基盤が弱い泉代表と比べて野田氏は民主党時代からグループを率いる親分肌で、岡田幹事長や安住淳国対委員長は野田政権時代の幹部でもある。4月の選挙で立憲が敗北を喫することになれば「野田代表」待望論が一気に噴出する可能性は高い。
野田「もう一度、政権交代をしたい」
こうした空気を察してか、野田氏は最近メディアへの露出が増えている。1月末に出演したABEMAニュースでは、低空飛行を続ける立憲の支持率について「早く2桁にあがってようやくですね。(自民党)1強をつくっているのは多弱の野党。克服するためには野党全体をチームとしてまとめて緊張感を」と説明。泉代表については「一生懸命支えています。のびしろがある人だと思うので育てていきたい」と語った。
自らの待望論には「集まっていないですよ。そんなので血迷ってはいけない」と笑顔を見せたものの「もう一回、政権交代する道筋をつくるのが私の役割。これをやらなければ死んでも死にきれない」と強い決意も示している。
立憲民主党内にはインパクトに欠ける泉代表で党勢を回復させることは難しく、重厚感がある野田氏に期待する声は日増しに高まりを見せる。ただ、野田氏は2012年11月の党首討論で、自民党の安倍総裁(当時)に衆院解散を約束し、民主党を崩壊させた張本人でもある。付け加えれば、安倍政権時代の2度にわたる消費税率引き上げを事実上決めた「増税決定者」だ。
野田氏は「議員定数の削減で合意し、彼らが求める解散という一致点を見出した。あれ以上(解散を)のばしても維新、みんなの党が準備をしていて、野党第1党から落ちてしまうというギリギリの判断をした」と説明しているが、下野することになった12年末の総選挙で落選した候補者からは怨嗟(えんさ)の声も消えない。
「合戦には負けた。それは総大将の責任」。野田氏は責任を背負い続けているとしているが、民主党時代からバラバラ感がつきものの党内を再びまとめていけるのかどうかは不透明といえる。加えて、支持団体である連合は国民民主党とのバランスに腐心し、自民党も楔(くさび)を打ち込むことに躍起だ。岡田幹事長は「働く人々を代表する政党は1つで十分ではないか」と国民民主党に合流を呼びかけたが、国民の榛葉賀津也幹事長は「あんまりだ」と反発しており、野田氏が狙う「チームとしてまとめる」ことは簡単ではない。
理想だけを追いかけていたのでは、政策遂行ができないとして「幻想なき理想主義」を掲げる野田氏。トップを代えればうまくいくという党内の幻想から離れ、再びリーダーとして党勢回復の道筋を描くことはできるのか。「令和版ドジョウ演説」を聴く日が訪れるのは、もうすぐかもしれない。