なぜ教育”重課金”家庭は文京区に住みたがるのか…”全て”が揃った桃源郷! 23区で中学受験率トップ

牧野知弘
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 東大卒不動産評論家の牧野知弘氏が語る「住みたい街」。今回は文京区がテーマだ。大東建託が発表した「借りて住んだ(賃貸)&買って住んだ(持家)街の住みここちランキング2021【首都圏版】」でも、「借りて住んだ街(自治体)の住みここちランキング」にて「東京都文京区」が1位を獲得している。

 タワマン文学でも度々登場しては、異様に教育熱心な家庭が多いことなどをネタにされていた文京区だが、実は牧野氏が居を構える、不動産のプロ一押しの街でもある。「文京区には、欲張りな東京人の願いをすべて叶えられるポテンシャルがある」と同氏は語る。

アフターコロナで注目を集めることになる街は、バランスに優れた文京区だ

 コロナ禍は多くの人々に自らのライフスタイルを見直すきっかけを与えてくれました。毎朝毎夕通勤する、つまり会社に出向いてオフィスの机に座ることが働くことと信じていた価値観に大きな影響を及ぼしたのです。

 ウィズコロナに向けて世の中の考え方が定まってくるにつれて、多くの企業では今まで通り朝の出社を命じ、オフィス街に人が戻りつつあります。いっぽうで、仕事はリモートワークのほうが効率もよく、通勤をしていた時間を、資格の取得や副業、趣味の充実など、より有効に使おうという考え方が、一部の企業や社員にも着実に浸透してきました。

 今はこうした、新しいライフスタイルへ移行していく転換点にあるともいえます。

 毎朝毎夕の通勤は必ずしも求められないけれど、都心へのアクセスは絶対に譲れない。特徴のない郊外ベッドタウンに住むのはいや。都会のおしゃれなレストランや物販店には足を運びたい。遊んだり、癒されたりできる場所も欲しい。そして都心のど真ん中で、周りはオフィスビルばかりというのも殺風景であんまり好ましくない。自然環境がよければなおよし。できれば東京23区で。

 本稿では、そんなわがままな条件を満たす、とっておきのエリアを紹介しましょう。

 今回の私が住んでみたい街は「文京区界隈(かいわい)」です。このシリーズは「私が住んでみたい」がテーマですが、今回に限っては、私自身が文京区の住民です。多少「文京愛」に偏ってしまっているかもしれませんがお許しを! でもそのくらい居心地の良い街ですよ。

東京23区で山手線内にすっぽり入る区は文京区だけ

 まずは都心へのアクセスを見てみましょう。リモートワークが増えたといっても都心に気楽に出かけることができるのは便利で快適です。東京ではJR山手線は通勤電車の基幹ラインと言われますが、文京区はほぼすっぽり山手線内に位置します。山手線内であればそこは都心、あるいは都心へのアクセスが良い場所、と想像できますが、東京23区で完全に山手線内に入る区は存在しません。千代田区は東京駅八重洲口近辺で線路を跨いでいます。港区は芝浦、お台場が完全に線外です。中央区に至ってはほぼ全域が線外なのです。それに比べて文京区は山手線の「駒込」駅と「巣鴨」駅間のほんの一部の線路地を除いてすべてが山手線内にあります。

 区内を通る鉄道にはJRはありませんが、多くの路線が南北に走り、千代田区との境目である神田川めがけて下りてきます。この受け皿となるのが東京ドームのある飯田橋や水道橋、そして御茶ノ水のJR線各駅になります。区の西側より東京メトロ有楽町線、丸の内線、都営三田線、南北線、千代田線と都内各所へのアクセスは抜群です。区の東西を結ぶのが都営大江戸線で、東京ドームの北側を東西に突っ切り御徒町にたどり着きます。このように交通網は充実していて都心へのアクセスは区内のほぼどこにあっても軽快です。また区内は充実したバス網が構築されていて、鉄道とバスを組み合わせれば区内の移動で困ることもありません。

夏目漱石や森鴎外も住んだ街。春は小石川植物園で花見も楽しめる

 さて住み心地はどうでしょうか。文京区は江戸時代から大名屋敷が軒を連ねていたこともあって高級住宅地に事欠きません。本郷に近い西片、三菱財閥の重鎮が好んで住んだ大和郷(やまとむら)、本駒込、茗荷谷に近い小日向、目白台などは、武蔵野台地という標高20mから30mの高台に位置する都内屈指の高級住宅地です。

 文京区はお高くとまったセレブの街ばかりで構成されているわけではありません。「谷根千」として今ではすっかり有名になりましたが、文京区の根津、千駄木に台東区の谷中を加えた下町エリアには、手ごろな価格の飲食店、居酒屋、物販店が並びます。それでいて明治時代には夏目漱石や森鴎外などが居宅を構えていたため、文化的な香りも残っています。住宅価格も高台エリアに比べれば割安で、それでいて情緒豊かで住みやすい街です。特に千駄木は、団子坂の上に高級住宅地があるいっぽう、坂の下の不忍通り沿いに下町情緒が残っていて、そのギャップを楽しめます。

 江戸時代から、幕府は江戸の北からの夷敵の侵入を防ぐ目的で文京区や台東区のエリアに多くの寺社仏閣を配置しました。確かに区内を歩くと、区の面積のわりに実に多くの寺社仏閣があることに気づかされます。東京十社のひとつ、つつじで有名な根津神社をはじめ、学問の神様として有名な湯島天神、白山神社、護国寺、伝通院、吉祥寺など大小数多くの寺社仏閣は、街のそぞろ歩きにもってこいです。

 寺社仏閣の緑は生活に潤いを与えてくれますが、区内には公園も数多く存在します。本駒込にある六義園は徳川綱吉の側用人だった柳沢吉保の下屋敷として造営された大名庭園です。春には庭園内の桜が、秋には紅葉がライトアップされ、地元のみならず多くの人が詰めかけます。小石川植物園は、江戸幕府が設けた御薬園が始まりです。今年春から放映予定のNHK連続テレビ小説「らんまん」の主人公のモデルとなった牧野富太郎博士もここで働いていました。現在は東京大学理学部の所管で、春の桜のシーズンには多くの花見客が押し寄せます。東京ドーム近くの小石川後楽園は、水戸藩主2代目光圀の時に完成した大名庭園で、6月頃には花菖蒲が咲き誇ります。区内には癒されゾーンがてんこもりなのです。

 「寛(くつろ)ぐ・遊ぶ」のポイントも高いです。関口には椿山荘があります。庭園内には梅雨から夏に向かう季節、多くのホタルが飛び交い、夏の風情を醸し出します。子供連れで遊ぶには東京ドームが鉄板です。ジェットコースターから眺める東京都心の景色はここでしか見られない圧巻の光景です。ゲームに夢中になる子供だけでなく、野球、ボクシング、プロレスなどの観戦、東京ドームはおじさんたちにも遊び場の聖地になっています。東京ドームは今後三井不動産が中心となってさらに楽しいエンターテインメント施設の開発が予定されていて、期待が大きいです。

 高齢者にとって気になる医療機関も充実しています。東大病院、順天堂大学病院、東京医科歯科大学病院をはじめ、日本医科大学病院、都立駒込病院など都内有数の医療機関が区内に立地しています。

加熱する教育熱が、ますます文京区に新しい住民を呼び寄せる

 子供を持つファミリーにとって、教育環境は最も重要視するところですが、文京区には東京大学をはじめお茶の水女子大学、東京医科歯科大学、筑波大学などの国立大学。日本医科大学、順天堂大学、日本女子大学、拓殖大学、東洋大学など数多くの私立大学が学舎を構えます。

 こうした大学に多くの生徒を送り込む多くの有名校も文京区に立地しています。国立の名門、筑波大学附属中学校・高校、東京学芸大学附属竹早中学校、お茶の水女子大学附属中学校・高校、桜蔭学園、駒込高校、郁文館高校、都立小石川中等教育学校など進学校がひしめきます。

 公立小学校の充実ぶりも目を引きます。区内は上記の国立大学の附属小学校にくわえて「3S+K」(「3S1K」とも)と呼ばれる誠之、千駄木、昭和、窪町小学校は教育熱心なファミリー垂涎(すいぜん)の学校で、区内で売り出される新築や中古マンション、戸建て住宅を選ぶ際には、まずこれらの学校に通学できるエリアかどうかが重要な判断基準になると言われます。こうした人気を裏付けるのが、文京区内の公立小学校卒業生の国立私立中学への進学率の高さです。東京都教育委員会が作成した「令和3年度 公立学校統計調査報告書【公立学校卒業者(令和2年度)の進路状況調査編】」によれば文京区の公立小学校の国立私立中学への進学率は48.3%。東京23区内では中央区41.3%、港区40.1%を引き離してトップの座にあります。

結論:文京区は欲張りな東京人の願いをすべて叶えてくれる街

 結論的としては、文京区は子供から高齢者までが楽しく過ごせる山手線内にある唯一の桃源郷のような街といえます。

 ウィズコロナ、アフターコロナの時代。仕事もするから都心のオフィスへのアクセスは重要。でも遊びも、ランニングやウォーキングなどの運動も、おいしい食事や寛ぎも欲しい。歴史や文化にも包まれていたい。緑の多い、環境にやさしい街にいたい。エンターテインメントも楽しみたい。子供の教育もちゃんとしたい。いざとなったときにも安心の医療施設。最後、お墓に入った時にはお寺も、などなど。

 実は文京区界隈は、こうした欲張りな東京人の願いをほとんどすべて叶えてくれる老若男女すべてにとって快適なイチオシの区なのです。東京生活を満喫したい人は、ぜひぜひ文京区界隈、検討してみてください。

牧野知弘

不動産評論家。東京大学経済学部卒業。第一勧業銀行(現・みずほ銀行)、ボストンコンサルティンググループを経て三井不動産勤務。J-REIT(不動産投資信託)執行役員、運用会社代表取締役を経て、2015年にオラガ総研株式会社の代表取締役に就任。ホテルなどの不動産プロデュースを展開。2018年に全国渡り鳥生活倶楽部株式会社設立、代表取締役を兼務。著者に『ここまで変わる!家の買い方 街の選び方』(祥伝社新書)など多数。

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