“残念土産”の菅直人元首相レベル…必勝しゃもじギフトは安倍政権と比べて大きく見劣り「岸田の悪い所」凝縮

 ロシアの侵略と戦うウクライナのゼレンスキー大統領の手土産に、岸田文雄首相の地元・広島の「必勝しゃもじ」と、折り鶴をモチーフとしたランプを贈呈したことが波紋を呼んでいる。生きるか死ぬかの過酷な日々を送る戦時下の国のリーダーに、一国の宰相が持参する贈呈品として適切なものだったのか。元経済誌の編集長で、一流人の土産物事情にも詳しい小倉健一が斬る。

「戦地に地元の特産品とはお気楽すぎる」と野党は追及

 岸田首相がゼレンスキー大統領に贈ったのは、木製のしゃもじに「必勝」の文字が書かれた縁起物で「敵を飯とる(=召し捕る)」という意味が込められていて、岸田首相の署名が書き込まれている。ランプは広島の焼き物「宮島御砂焼(おすなやき)」で作られたものだという。 

 贈呈品にこれらを選んだ理由について松野博一官房長官は「ロシアによるウクライナ侵略に立ち向かうゼレンスキー氏への激励と、平和を祈念する思いを伝達するためだ」と説明した。岸田首相は「地元の名産をお土産として使った」「外交で地元の名産を持っていくことはよくやる」と説明し、野党からの「選挙やスポーツではない。『必勝』はあまりにも不適切だ」という問いに対しては「意味を私から申し上げることは控える」「ウクライナの人々は祖国や自由を守るために戦っている。こうした努力に敬意を表したいし、ウクライナを支援していきたい」と答えた。

 政権には是々非々で対峙している日本維新の会・馬場伸幸代表も「一言で言ってノーセンス。ゼレンスキー大統領は毎日生きるか死ぬか、生死を懸けた戦いをしている。命を懸けている。だから、お邪魔する側は相手側の立場をおもんぱかって、どういう精神状態でどういう日々を送っているのか考えてお邪魔しなければならないことを私はずっと言ってきた」「そういう場に地元の名産だということで、しゃもじを持って行くのは、ちょっとお気楽すぎる。私なら怒る」と述べた。

「ウクライナは喜んでいる」…選択の余地のない社交辞令を真に受ける岸田政権

 岸田政権としてはウクライナのコルスンスキー駐日大使が「これからは、日本からの贈り物として『必勝しゃもじ』がとても喜ばれます」とツイッターで発信したことを受けて「相手国は喜んでいる」と強調して、この「しゃもじ如きで怒るな」と批判を交わしたいようだ。

 もし野党が「必勝しゃもじ」の一点で政局にしたい、というのであれば賛同できないし、災い転じて福とならないかと願うばかりだが、なにゆえに岸田首相がゼレンスキー大統領に「必勝しゃもじ」を贈呈するに至ったかを考えれば、深い憂慮を抱かざるを得ない。

 読売新聞(3月25日付)は、ゼレンスキー大統領の単独インタビューを掲載した。その中で「私やウクライナ社会からのお願いだ。我々の勝利を助けてほしい。それはあなた方自身の勝利に貢献することでもある」「ウクライナ東部の戦線の膠着状態は、弾薬不足によるもの」「我々は多くの仲間と共にこの冬を乗り切った。日本の支援にも感謝している。しかし立ち止まっている場合ではない。我々は何か月か後に、新たな試練に直面するだろう。そのために備える必要がある」と述べている。

 大国ロシアとの戦争において、お金、武器、物資、技術、知識のすべてが不足している状況を訴え、また日本の援助に感謝していることがインタビューの全文から伝わってくる。この状況において、日本の首相が何をお土産で持ってきたところで「とても喜ばれます」(ウクライナ駐日大使)と言うのは、当たり前のことだろう。

 かつて、京セラ創業者の稲盛和夫氏が、元サッカー日本代表のラモス瑠偉氏を吉野家に誘い、牛皿を分け合って食べたというエピソードがある。同席していた人物の話によれば、牛皿に残った最後の一切れの牛肉を、稲盛氏は「どうぞ、どうぞ」とラモス氏に譲り、ラモス氏は恐縮して食べたという。ラモス氏は京都パープルサンガに所属していて、稲盛氏は事実上のオーナーである。そんな状態にあって、ラモス氏がテーブルを蹴飛ばす選択肢など、そもそもないのである。

 西側諸国に援助を続けてほしいウクライナにとって、怒りを示すことなどそもそもできないのである。むしろ、岸田政権を擁護することで日本政府へ「貸しイチ」になったと喜んでいるかもしれない。

確かに第一次、第二次世界大戦では必勝祈願として奉納されたが…

 次の問題は、広島の「必勝しゃもじ」の持つイメージだ。それは日露戦争で、必勝祈願として「しゃもじ」を奉納したのは事実のようだが、同じことは、第一次世界大戦、第二次世界大戦でも祈願されていたであろうことは、誰の目にも明らかだ。

「炭化したしゃもじ、食用油の成分が残った一升瓶、投網や重りの残骸…。原爆に踏みにじられた営みが地下75センチに眠っていた」(2023年1月2日・中国新聞)

「原爆資料館本館下の発掘調査で、被爆時の地層から見つかった黒く炭化したしゃもじ」(2020年5月21日・中国新聞)

「炭化した木材や焼け焦げたしゃもじ、熱で溶けた牛乳瓶、瓦もあった。多くの日常の証しはつまり、たった一発の原爆がもたらした非人道性の証しでもある」(2019年8月28日・神奈川新聞)

「しゃもじは原爆投下後の火災で炭化したとみられ、保存のため、熊本県の業者が風化や劣化を防ぐ処置を施した」(2017年7月11日・朝日新聞)

 被爆地・広島の「しゃもじ」から何を連想するかは人それぞれだろうが、自らの意思で持っていくべきかどうかは慎重に判断しないといけない。もし、ゼレンスキー大統領やウクライナ人が欲しいものであれば、この「広島のしゃもじ」でもいいと思うが、岸田政権は相手が欲しがっているものをきちんと調べることをしていたのだろうか。

「相手が喜ばない贈り物を渡す」岸田首相のセンスは、菅直人元首相より下か

 かつて、小泉純一郎首相(当時、以下すべて当時の肩書き)は、ブッシュ大統領が、ホワイトハウスの執務室に、明治神宮の破魔矢を飾っていることを調べあげ、鶴岡八幡宮の流鏑馬(やぶさめ)の矢を渡したら大いに喜び、そこから親密な関係が始まったことは広く知られている。

 安倍晋三首相(当時)は、オバマ大統領の好きな日本酒「獺祭」とゴルフパターをプレゼントした。ゴルフ好きのトランプ大統領には、金色のゴルフドライバーを、プーチン大統領には柔道家嘉納治五郎の書をプレゼントしていた。麻生太郎首相は、オバマ大統領にバスケットボール・ウェアを渡している。

 絶対に相手が喜んでいないだろうと思われるのは、民主党の菅直人首相がオバマ大統領に渡した「リンカーン大統領から徳川家茂にあてた親書の複製」のプレゼントだ。菅直人首相は、ポリコレ(政治的正しさ)を優先し、相手の好みなどお構いなしに渡しているのが想像できる。これで個人的な関係が醸成されるようには思えない。

 果たして、岸田首相のお土産は、ゼレンスキー大統領やウクライナ国民が喜ぶものだったのだろうか。

 かつて、岸田首相は、長男で首相秘書官を務める翔太郎氏に、ロンドンへの公費旅行のついでに、高級百貨店でネクタイを買いに走らせたことがある。帰国後、男性閣僚にその高級ネクタイが配られたという。そんなお土産大好き人間であるなら、歴代政権のように、もう少しゼレンスキー大統領の心のうちに入り込めるような物を調べることはできなかったのだろうか。

 はっきり言って、岸田首相のおみやげのセンスは、民主党の菅直人元首相以下だ。外交を担うものにとって、これ以上に不名誉な評価はあるまい。

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