4月23日、電撃”解散”説が急浮上…「高市騒動は政権に好都合」岸田政権”劣勢補選”の仰天穴埋めプラン

 岸田文雄首相が「電撃解散」に踏み切るとの観測が広がっている。戦後最悪と言われた日韓関係の改善に加え、ウクライナ電撃訪問を成功させた首相は、内閣支持率が回復傾向にある千載一遇の好機を迎えているからだ。政界には最速で「4/23総選挙」、遅くとも「6月総選挙」といった説が飛び交う。一時は支持率が続落し、退陣危機もささやかれた岸田首相はいつ勝負に打って出るのか――。

各種世論調査で岸田首相の支持率が上昇

 4年に1度、首長や議員を選ぶ統一地方選が始まり、3月23日に9道府県の知事選、同26日には6つの政令指定都市の市長選がスタートした。全国で1000近い選挙が集中するタイミングに注目されているのは、岸田首相による「電撃解散」の可能性だ。

 元々、4月23日には衆参5つの補欠選挙が投票日を迎える予定となっているが、首相はこのスケジュールに合わせて衆院解散・総選挙を断行するつもりではないかとの見方が広がっている。5つの補選のうち、いくつかは自民党が劣勢と見られているためだ。

 野党の戦闘準備が整っていない段階で首相が決断し、統一選後半戦や補選と総選挙を合わせれば強固な後援会・地方組織がフル回転し、相乗効果を生む可能性は高い。劣勢とされる選挙においても、国政における争点がクローズアップされ、メディアの注目は政権・与党が軸となる。支持率が低空飛行を続けていた今冬であれば考えにくかったが、回復基調にある現在は選挙に追い風となる。

 実際、岸田首相の支持率は上向いている。NHKの世論調査(3月10~12日)によると、岸田内閣を「支持する」と答えた人は前月比5ポイント増の41%で、7カ月ぶりに支持が不支持を上回った。時事通信の調査(3月10~13日)は29.9%と2カ月連続の上昇。毎日新聞の調査(3月18、19日)では2月調査時から7ポイント上昇の33%となり、朝日新聞(3月18、19日)でも前月比5ポイント増の40%と伸びている。

体たらくの野党、高市早苗騒動も岸田首相には好都合

 内閣支持率の続落で一時は「危険水域」に入ったと言われた岸田政権だが、昨年の参院選勝利によって向こう3年間は本格的な国政選挙のない「黄金の3年」を手に入れている。ただ、体たらくの野党を見れば支持率が上向いた段階で解散権を行使したい誘惑にかられるのは当然だろう。

 立憲民主党などの野党は、放送法が定めるテレビ局の「政治的公平性」の解釈が、当時、総務相だった高市早苗経済安全保障担当相らによって変更されたとして、総務省作成の行政文書をもとに追及を続けている。高市氏は自らに関する文書内容が「捏造(ねつぞう)だ」とし、野党は閣僚辞任を要求するなど攻撃のボルテージを上げているが、内閣支持率を低下させるには至っていない。NHKの調査で自民党の政党支持率は立憲民主党の6倍超だ。

 岸田首相からすれば、2021年の自民党総裁選で国会議員票が自身に次ぐ2位だった高市氏への攻撃は痛くもかゆくもないどころか、むしろ好都合にさえ映るのではないか。「高市氏個人」にフォーカスが当たっている間は支持率に響くことはなく、着々と政府の仕事をこなしていれば求心力を維持できるとの思惑も透けて見える。

 では、岸田首相はいつ解散総選挙に打って出るつもりなのか。まず言えることは、3月末に2023年度予算案が可決・成立したので勝負に出ることができる環境が整ったということだ。年頭の記者会見で表明した「異次元の少子化対策」のたたき台も3月末にまとめられる予定で、少子化対策・子育て支援策を争点に「イエスか、ノーか」総選挙で信を問うことは可能となる。

 低所得世帯に一律3万円といった給付策などを矢継ぎ早に決め、3月17日に首相自ら少子化対策に関する記者会見を開いてアピールしたことを考えても「4/23総選挙」が首相の手元にあるカードの中に入っていることは間違いないだろう。

日銀総裁人事、資産所得倍増プラン、日韓首脳会談…無駄にサプライズを好む性格

 次期衆院選は「一票の格差」是正に伴い、新たな選挙区割りで実施されることになるが、自民党は対象134選挙区のうち「支部長未定」が20強となるまで候補者調整を進めてきた。たしかに新年度予算案の可決・成立後まもないタイミングで衆院を解散するのは慌ただしいスケジュールかもしれないが、総選挙を迎えてもいいように準備ができていると言える。なにより首相は「サプライズ好き」であることを忘れてはならないだろう。

 そもそも、岸田氏は(第1次)内閣発足から10日後の2021年10月14日、大方の予想より早く、戦後最短の衆院解散に踏み切った人物だ。内閣改造人事やNHK次期会長人事、日銀総裁人事ではメディアの予想が結果的に外れる「サプライズ」も繰り返しており、これまでの常識は通用しない宰相でもある。

 首相は「難しいことから始めていくんだ」と周囲に漏らすことが多く、自民党内でも議論が白熱した防衛費大幅増に伴う増税や資産所得倍増プランの決定、そして少子化対策に取りかかってきた。そして、安倍晋三政権や菅義偉政権で冷え込んでいた日韓関係の修復に向け、今年3月16日に12年ぶりとなる日本での首脳会談を開催。銀座で「ハシゴ酒」を交わして関係改善を印象づけた後、3月21日にはウクライナに電撃訪問した。それは、まるで「電撃解散」へのステップのようにも見える。

 ただ、この段階で統一地方選と衆院選が重なることは、連立相手の公明党に慎重な声が根強い上、5月には岸田首相にとって今年の最重要イベントが待っている。5月19日に地元・広島でG7(先進7カ国)首脳が集まるサミットを開催し、首相は議長を務める。「4/23総選挙」であればサミットまで1カ月ほど時間があるとはいえ、各国リーダーとの準備などを考えれば決して余裕があるわけではない。

「電撃訪問」の次は「電撃解散」…G7後が有力か

 そのため、総選挙日程で本命視されているのは「6月総選挙」だ。4月の統一地方選で敗北さえしなければ、5月の広島サミットで注目度を最大値まで引き上げた後に信を問うことができるというものだ。6月上旬には「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太の方針)を決定し、首相が力を入れる少子化対策の大枠が示される。そこでバラマキと批判されようが、子育て世帯のハートをがっちり掴(つか)みたいとの計算も働くだろう。逆に言えば、サミット後はいつ選挙があってもおかしくない状況に入る。

 首相は来年秋に自民党総裁としての任期満了を迎えるため、長期政権を築くためには再選を果たさなければならない。それには総裁選前の衆院解散・総選挙で求心力を上げておくことが欠かせないが、今年末には2024年度の税制改正議論を控えている。防衛費大幅増に伴う増税プランを具体化させる必要があり、その過程では侃々諤々(かんかんがくがく)の党内議論が予想されている。その摩擦から自民党内に敵をつくることになれば、総裁選でマイナスに働くこともあり得るため、年末を迎える前に総選挙で勝利し、政権基盤をより安定させておきたいはずだ。

 加えて、岸田氏が信頼する麻生太郎副総裁は、首相就任直後、リーマン・ショックに伴う景気後退懸念から衆院解散に踏み切れず、2009年夏の総選挙で野党に転落した苦い経験を持つ。来年夏の自民党総裁選に近い時期が首相にとって求心力を高める最高の解散タイミングといえるが、「来年はどうなっているか誰にもわからない」(自民党幹部)ことから今年中の解散断行は必須と言えるのだ。

 岸田氏の周辺は語る。「電撃訪問の次は『電撃解散』があってもおかしくないよ。準備をしていない方が悪い、ということになるかもね」。サプライズを好んできた岸田首相は、メディアの驚きを楽しむように長期政権への道に自信を深めているようだ。

この記事の著者
佐藤健太

ライフプランのFP相談サービス『マネーセージ』(https://moneysage.jp)執行役員(CMO)。心理カウンセラー・デジタル×教育アナリスト。社会問題から政治・経済まで幅広いテーマでソーシャルリスニングも用いた分析を行い、各種コンサルティングも担う。様々なメディアでコラムニストとしても活躍している

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