登院拒否のガーシーが「懲罰で登院停止」の意味不明。公約無視の岸田増税はOKでいいのか

 昨夏の参議院選挙で大方の予想を覆して当選し、話題を呼んだ人気ユーチューバー、NHK党のガーシー氏。昨年末警視庁の事情聴取要請に続き、今度は参院での懲罰委員会が検討されているという。だがそんな騒動の間にも、「岸田増税」は着々と進行中だ。ジャーナリスト・小倉健一氏が、ガーシー現象の陰に隠れた自公政権の欺瞞をあぶり出す。

「ま、気長に待ちーな」‥インスタに公開された参院質問へのガーシー氏の回答書

 NHK党、ガーシー(本名・東谷義和)氏の国会欠席が続いている。昨年12月12日には、インスタグラムを更新し、参議院運営委員長である石井準一氏(自民党)から、国会欠席の理由を説明するよう求められたことへの回答書を公開した。

 その中で、ガーシー氏は『参議院選挙において、アラブ首長国連邦ドバイから一度も日本へ帰国せずSNSを利用して「当選しても日本へ帰らず海外で政治活動をしていく」と公約の1つに掲げ28万7714票を頂いて当選した。現在も公約通り、海外でSNSを利用して政界・経済・芸能あらゆる業界の不正を暴露し裁いていくことで、この国の不満を一つ一つ解消していきたい。これが、私に投票して頂いた皆様との約束であり理解を頂いている』『(自身に殺害予告等を受けていることを念頭に)帰国しても果たして大丈夫なのか不安が解消されれば国会へ出席したいと考えている』『いつでも要請があればドバイからリモートで同委員会へ出席したい。認められなければ電話での対応もお願いしたい。是非、文書ではなくデジタルを利用して直接話すべきであると切に願う』としている。

 また、その回答書を公開するにあたって、インスタグラム上で、「いろんなこじつけで、必死なんわかるねんけどなー笑笑 とにかく定められてあるだけで、法的義務はないよな? 義務にしてもーたら、病欠やゴルフで来てない議員も処罰対象なるからなー ま、気長に待ちーな な?」と発言をしている。

自民と立憲は懲罰で一致‥だが国会議員の除名処分は過去に2人のみ

 そんなガーシー氏に対して、自民党と立憲民主党は、1月24日、今の国会でも欠席が続けば懲罰を科すことが必要だという認識で一致したという。NHKニュース(2023年1月24日)によると両党は『懲罰は国会議員の身分に関わるため、できるだけ多くの会派が賛同する形が望ましいとして、丁寧に手続きを進めていくことを確認』した。国会法第15条の懲罰規定では、国会の召集日から議員が正当な理由なく7日以内に召集に応じず、さらに議長による招集書面にも応じない場合は、懲罰委員会を開催することになる。

 国会議員の懲罰に関しては、日本国憲法58条第2項に『両議院は、各々その会議その他の手続及び内部の規律に関する規則を定め、又、院内の秩序をみだした議員を懲罰することができる。但し、議員を除名するには、出席議員の三分の二以上の多数による議決を必要とする』とある。過去の懲罰例をみてみると、そのほとんどが『登院停止』処分となっている。実際に、出席議員の3分の2以上の多数を得て、除名処分、つまり国会議員が辞めさせられたという事例は2回しかない。それも1950年、1951年と70年以上も前の話で、内容については、JーCASTニュース(2019年06月07日)で工藤博司氏が詳細に述べているので引用する。

 『現行憲法下での除名の事例は2つ。1950年の小川友三参院議員(無所属)と51年の川上貫一衆院議員(共産)だ。小川氏は、予算委員会、本会議では反対討論をしたが、本会議では賛成票を投じたことが問題視された。委員会での表決と本会議での表決との間に「極めてまじめさを欠く発言」もあったとされた。当時の議事録によると、小川氏が本会議で弁明する際、社会党の議員から「エレベーター前で以て背負い投げを食いました」と発言。議場からは失笑の声があがった。

   川上氏の場合は、連合国軍総司令部(GHQ)による占領政策を批判する代表質問の内容が「虚構と捏造(ねつぞう)」だとして懲罰動議が出された。一度は陳謝処分が決まったが、川上氏は従わなかったため、除名になった。除名の原因になった代表質問について、吉田茂首相(当時)は「ただいまの議論は、要するに共産主義の宣伝演説であると考えますから、一々答弁しない」と答弁を拒否している』

ガーシー氏の議員除名には共産党も反対か?‥となると懲戒処分の中身は?

 戦後まもない混乱時期においては、共産党の宣伝演説をしたことで除名となっているが、現在の感覚に照らし合わせて、3分の2の多数派が自分たちの気に入らない少数会派の国会議員を除名にしていては、民主主義の基盤を破壊するような行為になりかねないのではないか。ましてや、ガーシー氏は、(本人の発言によれば)参議院選挙で、国会へ行かないことを明言していたということであり、それを踏まえた上での民意が彼に寄せられたということである。少なくとも当選から、ガーシー氏と立花孝志NHK党首の発言において、報道をデータベースで確認する限り、早期の出席を期待させるようなことは言っていない。

 おそらく共産党は、過去に所属議員が共産主義の宣伝演説(内容に虚偽が含まれていたにせよ)をしたことで除名を受けているというトラウマもあり、まったく政治的立場、思想信条は違うものの、除名処分には反対をするのではないだろうか。除名という重い処分を、全会一致(ただし、NHK党は絶対に反対するであろうから、NHK党を除く、全会一致)でなく、「多くの会派が賛成することが望ましい」とする自民・立民の両党の意見が通るかは、現段階では不透明な情勢だ。

 となると、処分は登院停止となるのだが、そもそも登院を拒否しているガーシー氏に、登院停止というのは、いささか皮肉の効いた笑い話に見えてしまう。私は昨夏の参議院選挙でNHK党に投票しておらず、日本に帰国することで逮捕されるという危険があって登院しないというガーシー氏の考えには全く賛同できないが、もしそれが、選挙で公約していたものだとすれば、その民意はやはり尊重しなくてはいけない。

 院内の秩序を乱したというが、それが選挙公約だったのであれば、国会とは民意を代表するさまざまな背景の人間が話し合いをする場であり、むしろ、国会へ行かない公約をして当選した人物に対して、「国会へ行け」などと公約違反を強制するのはおかしい。リモートでの参加も当然できるようにしたほうがよい。

選挙公約通りのガーシー氏、選挙で封印の増税にひた走る自公政権‥懲罰されるべきはどっちだ

 むしろ、公約に一切書いていない、増税に突き進む、岸田文雄首相や山口那津男公明代表こそ、倫理的、道義的責任を批難されて然るべきであろう。「増税すれば経済成長する」が政調会長時代からの持論であるのに、首相の座を獲得するために一時的に総裁選で封印し、衆院選、参院選でも一切防衛増税を口にしなかった岸田首相。公明党の山口代表も、参院選の公約では一切増税に触れず、参院選後の記者会見(8月23日)でも防衛費増額の財源としての増税に慎重な見方を示し、「ただちに国民の理解を得るのは難しい」「総合的に勘案して結論を出していくべきものだ」と強調していた。

 ところが公明の北側一雄副代表は、2023年1月19日の記者会見で、岸田文雄首相が防衛力強化に伴う増税方針を表明したことについて、「唐突にいきなり増税の話があったとは理解していない」と述べたというから、方針の180度転換は、国民への裏切りと断じざるを得ないではないか。

 選挙において、国会へ行かないと約束して国会へ行かない政治家よりも、増税の約束をせずに大増税を実行に移す政治家のほうが罪は重い。ガーシー氏を懲罰にかけるというが、選挙公約を守らなかったのは、ガーシー氏と岸田政権のどちらなのか。報道に騙されることなく、国民はきちんと判断しなくてはいけない。

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