空前絶後の円安相場…普通の個人投資家が機関投資家に勝てる唯一のこと

2000兆円を突破した日本の個人金融資産。政府はこの資産を投資に振り向けさせるため、「資産所得倍増プラン」を掲げた。ただし、経営コンサルタントの小宮一慶氏は、「政治も経済もわかっていないような経済初心者が株式投資をするのは危険だ」と警鐘を鳴らす。投資をすでに始めている人も、これから始めようと思っている人も、資産を守る「これだけは絶対におさえておきたい」ポイントを解説してもらった――。

個人投資家が機関投資家に勝てる唯一のこと、それは……

株式投資を始めたいと思っている人に、二つのアドバイスを送ります。まずは、「余ったお金を使い、買った株式を長期間保有すること」。最低でも5年、10年は使う予定のないお金を投資に回すべきです。近々必要になることがわかっている子どもの教育資金や住宅資金を株につぎ込み、その株価が暴落してしまったら大変ですよね。

デイトレードといった短期投資では、株を始めたばかりの個人投資家がプロの投資家に勝てることはまずありません。ファンドマネージャーやトレーダーと呼ばれる人たちは、大体3カ月~半年に1度のスパンで組織にパフォーマンスを評価されます。そこで「成果を出していない」と判断されると解雇もありえます。自分の生活がかかっているので、当然ですが必死になります。得ている情報も、使っている機器も違います。

彼らはTOPIX(東証株価指数)より自身のパフォーマンスが上回ることを重要視しているので、上がりそうな株があれば一斉に買って相場を過熱させ、落ち始めるとすぐに売ります。もし初心者がデイトレードでそんな人たちと戦おうとしても、ひどい目にあうだけでしょう。たまたま儲けが出ることはあるかもしれませんが、長い目で見ると儲け続けることはかなり難しいです。

投資家のみなさん、セブイレブンのnの謎、気づいていますか

ただし、個人投資家には長期間株を持ち続けられるという強みがあります。売られすぎたときに買って、それを長期間保有するのです。すべての株がそうだとは言えませんが、短期的には落ち込んだとしても、長期的に見れば株価は上がっていく傾向にあります。上がるまで待てるかが勝負です。

株を買うときは、自分が理解できない金融商品を買わないことが重要です。リターンが大きいからと言ってむやみに FXでレバレッジをかけたり、株式の先物取引に手を出したりするのは初心者にとってリスクが極めて大きいと知っておかなければなりません。

あとは、いきなり大きな額を投資に回さない方がいいでしょう。少額だとしても株を買うことで、その会社や市場への関心が高まります。たとえば、よく見かけるセブン‐イレブンのロゴ。最後の「n」だけ小文字だと知っていますか。この話を聞くと、見えるようになりますよ。関心を持つからです。

そうやって会社を知った上で、それでも株を買うに値する会社だと判断すれば少しずつ買い増していく。それが一番賢いやり方です。

ほとんどの人がとりあえず陥る、超初歩的なミステイク

アドバイスの二つ目は、基本的なことですが「相場が下がっているときに買うこと」です。たとえば欲しい洋服があったら、バーゲンセールで買う人も多いでしょう。でも株はほとんど誰もバーゲンセールで買いません。上がり始めたら「買わないと損だ」と思ってしまうんですよね。株もセールと同じです。安いときに買った方がいい。

「コロナショック」「リーマンショック」という言葉を聞いたことがあるかと思いますが、「ショック」は経済学では「社会に大規模な混乱が起こり、経済活動が急速に弱まる現象」を指します。そんなときにこそ株を買うべきです。やがてショックが収まり、株価が上がるのをじっと待つことです。

ただ、買い場・売り場がやってきたとしても、あまり欲を出しすぎないことも大事です。投資の世界に、「頭と尻尾はくれてやれ」という格言があります。誰しも「底値で買って天井で売りたい」と望みますが、そう思いすぎると買い逃し、売り逃しにつながります。

売買のタイミングを正しく判断するためには、国内外問わず政治や経済を勉強し、各企業の動向を分析することが必要です。一見難しそうに聞こえますが、やってみると案外簡単なんです。例を挙げると、投資をする上で大きなチャンスを迎えていたのが、民主党政権が交代したとき。日経平均株価が8000円を切っていたんですよ。そのときに株を買っていたら、いまごろものすごく儲かっていたはずです。

日経新聞の正しい読み方をお教えしましょう

相場の変動を知るための勉強方法としては、新聞を読むのが有効です。新聞の読み方で私がよくセミナーなどでお伝えしているのは、「リード文がついているような『主要な記事』は全部読む」ということです。新聞を読むような時間も取れないような人は、投資に手を出すべきではありません。まず勝てないですから。投資に時間を割くよりも一生懸命働いた方がリターンを得られるでしょう。

GDPや失業率などは重要な指標です。日本の経済はアメリカと中国の影響をすごく受けるので、海外の政治や経済に敏感になることも求められます。

私はニューズウイーク(日本版)を購読していますが、日本では取り上げられない記事が載っています。この前は、ウクライナ戦争はどう終わるのかが取り上げられていました。ウクライナ情勢が落ち着けばインフレも収まり、株価も戻りやすくなるでしょう。NYダウも上がるかもしれません。そういった兆候にセンサーを張り巡らせておいた方がよいですね。

買い時はいつだって「新聞を読みたくない時」

私自身も、基本的に株は長期で保有しています。ここ15年ほどは株を売っていません。買うタイミングもはっきりしていて、「経済新聞を開くのが嫌なとき」と決めています。正確に言うと、「株式欄を読むのが嫌なとき」ですね。自分の持ち株の株価が落ちているとわかっていて株式欄を開くのは誰だって嫌じゃないですか。だからこそ、そういうときは買い時なんです。逆に、株価が上がってくると、新聞を開くのは嬉しいけれども株は買いません。

次に、個別銘柄でどこを買えばいいかという話です。外国株については、私はS&P500やNYダウのインデックス投資しかしていません。個別の銘柄を買うのは日本の企業だけです。

私は経営コンサルタントなので、企業を見る目はあると自負しています。ただ、アメリカの企業については十分に分析できるだけの情報を持っていない。だから個別では買いません。それでもアメリカのインデックスを買うのは、日本よりアメリカの方が長期的に見ると経済の状況が良いだろうと推測できるからです。

日本企業で買う銘柄は、自分が「いいな」と思っている会社です。この「いいな」にも二つの指標があります。一つは海外で活躍している会社。日本はすごくいい国だと思っていますが、経済的に見れば非常に危険な状態にあります。なので、海外で活躍していなければ今後成長していくのが難しい。

たとえばトヨタや大手商社は海外で活躍していますよね。言い換えれば将来性があるということです。そのほうが安全性も高い。もし仮にトヨタが潰れるなんて事態が起これば、日本自体が早晩駄目になるでしょう。

EV車が増えるなら、買うべき株は見えてくる

二つ目が、ある程度の配当利回りがあるところです。2.5%以上はほしいですね。配当利回りがいいということは、業績が安定しているということですから。

将来性も大切です。たとえば、これからEV(電気自動車) の導入が進んでいくことはまず間違いありません。EVを作るためには、各種配線や電気モモーター内の巻き線に銅がたくさん使われます。なので、「銅を扱っている会社の株が伸びるかもしれない」、といったような推察もできます。

モーターの需要も伸びるでしょう。そのほか、半導体もいま世界的に不足しているので、半導体を作れる会社も期待できますね。このように、有望なところは結構あるんですよ。大企業だけでなく、規模の小さな会社でもよい企業はたくさんあります。ぜひご自分で勉強して探してみてください。

構成=松田小牧

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