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お前らのせいだろ! 統一教会を「知らなかったふり」する大マスコミの”報道しない自由”

テレビが「知らなかった」というのはあまりに無理がある

 当時の統一教会をリアルで知る世代には、とても不思議なことである。

 事件からしばらく、一部のテレビ番組や出演者は世界平和統一家庭連合、旧称・世界基督教統一神霊協会(以下、旧統一教会)の代表がみずから会見を開くまで、その名前も出さず、一部のテレビ出演者は会見後も、統一教会や勝共(後述)をよく知らない体で話した。いくらなんでもそれはない、と日本中(大げさだがほぼ事実だろう)の当時を知る世代から、とくにネット民からツッコミが入った。当時と違い、いまやSNSがあり、かつての史実は公に晒され続けているのに。まして現在は名前も違うし、教団もかつてとは違うと言っている。そのことの真偽はともかく、そうであるならば関係を知られたとしても問題ないはずなのに、不思議なことである。

 かつて韓国人、文鮮明が設立した旧統一教会は世界各国に勢力を拡大、日本でも1960年代から学生サークルの原理研究会(以下、原理研)による勧誘、1970年代から1980年代の姓名判断、四柱推命を使った「占い商法」と「印鑑販売」、個人宅訪問による「壺売り」「高麗人参売り」、1992年の桜田淳子ら有名人が参加した「合同結婚式」など数々の騒動があった。これは歴史の事実である。

 この合同結婚式騒動と同じ時期、『仁義なき戦い』で知られる作家の飯干晃一が、マインドコントロールされた娘を「奪還」するとして会見も開いた。その娘の入信から奪還までの手記も『われら父親は闘う 娘・景子を誘いこんだ統一協会の正体』として出版されている。

 思い出す限りをあえて書いたが、少なくとも40代以上の世代なら記憶にあるだろう。当時を知らなくとも、親が信者の「2世信者」「宗教2世」と呼ばれる存在が社会問題として取り上げられることも増えたので、知識としてあるかもしれない。

テレビこそ「霊感商法」を連日伝えていたのに

 断っておくが、本稿は基本的に公開された事実のみ書いている。当時の報道や裁判資料、書籍に書かれた事実と筆者体験を記しているに過ぎない。

 7月8日、安倍晋三元内閣総理大臣を銃撃した山上徹也容疑者には、かつての旧統一教会に巨額の献金をしたとされる母がいた。当初は現在の教団を狙ったが叶わず、教団に近いとされる安倍元首相を狙った、との趣旨が断片的に伝えられている。

 先にも書いた通り、テレビでは当初「ある宗教団体」とされていたが、教団の会見を以て一斉に報じられるようになった。それでも一部のテレビはいまだ遠慮ぎみで、テロップやボードには「統一教会」「旧統一教会」の名があっても出演者(コメンテーター)の中には頑なにその教団名を言わず「この団体」としている方もいる。いつもは専門外にも饒舌で「物知りな私」を演じている方々が、旧統一教会の話になると「知らない私」を演じる。中には、事件の原因は旧統一教会ではなく日本経済の停滞やら貧困、男性の孤独が原因といったコメントをする方もいる。容疑者は動機を「母親が(旧統一教会に)多額の寄付をして家庭が崩壊した」「10代の頃から恨みを持っていた」と言っているのに、とても不思議な話だと思う。

 当時の筆者の記憶を辿ると、そのテレビこそ「霊感商法」を連日伝えていた。当時、人気を集めていた心霊特集さながらのホラーチックなテロップで、とくにワイドショーは1980年代から1990年代初頭にかけて旧統一教会の霊感商法と「マインドコントロール」を扇情的に、ときにおどろおどろしく伝えていた。それは合同結婚式騒動でさらにヒートアップ、連日お茶の間に伝えられた。旧統一教会の壺が3000万円とか、多宝塔が1000万円なんて当時を知る者にはいまさらの話である。

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この記事の著者
日野百草

1972年、千葉県野田市生まれ。日本ペンクラブ会員。出版社勤務を経てフリーランス。国内外における社会問題、社会倫理のノンフィクションを中心に執筆。ロジスティクスや食料安全保障に関するルポルタージュ、コラムも手掛ける。2018年、評論「『砲車』は戦争を賛美したか 長谷川素逝と戦争俳句」で日本詩歌句随筆評論協会賞奨励賞を受賞。

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