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就活失敗、リストラピンチから経営の神様へ…稲盛和夫の”信者”55万人が日本経済に与えた大きな影響

90歳の天寿を全う…何が稲盛氏を偉大な経営者にしたのか

「いつかこの日がくるとは思っていましたが、いざ、そうなってみると、心にぽっかりと穴が開いた感じです」

 こう語るのは、3年前まで盛和塾の塾生だった、近畿地方の経営者だ。8月30日午後、京セラ創業者の稲盛和夫氏が亡くなったとの報道を聞いた時の感想だ。そして日本全国、世界各国で同じ空虚感を味わった人たちが何百人、何千人といた。

 稲盛氏が亡くなったのは8月24日、90歳の天寿を全うした。死去のニュースの後、稲盛氏に関する多くの評伝がメディアを飾った。ここでも稲盛氏の企業家人生を振り返るが、経営手法等については詳しくは触れない。それよりも稲盛氏と、その周囲の人との関係性からその足跡を追ってみる。

 少年時代は結核で療養生活を余儀なくされ、受験では何度も涙をのんだ。鹿児島大学工学部へ入学したものの就活も思うようにいかず、京都の碍子メーカーである松風工業に入社する。この就職は決して望んだものではなかったが、ここでセラミックと巡り合ったことが、後の運命を決めるのだから、人間、何が幸いするかわからない。

 松風工業は業績不振でリストラ必至となり、稲盛氏は同僚を引き連れ京セラを創業する。それを一代にして世界的セラミックメーカーに成長させるのだから、それだけでも立志伝中の人物と言えるが、これだけならあまたいる成功者の中の一人でしかなかった。

「稲盛和夫」の名を世に広めた第二電電の創業

 「稲盛和夫」の名前が多くの人に知られるようになったきっかけは、1984年の第二電電(現KDDI)の立ち上げだった。当時、「メザシの土光(敏夫)さん」率いる第二次臨時行政調査会は、「増税なき財政再建」を掲げ、行政改革に取り組んでいた。その中の目玉政策が、国鉄民営化と通信自由化だった。それまで国内通信は電電公社(現NTT)の1社独占だったため通話料金は高止まりしていた。そこに競争を持ち込むことで、通話料金を安くする狙いだった。

 通信事業に新たに参入する新電電には3者が名乗りを上げたが、一番不利なのは第二電電だと思われていた。まずは資本力のなさ。当時の京セラは創業からまだ25年。売上高は3000億円前後のベンチャー企業という位置づけだった。残る2社のうち日本テレコムの親会社は世界最大の鉄道会社だった国鉄。もう1社の日本高速通信は道路公団(現NEXCO)とトヨタ自動車の合弁会社だから、勝負にならない。

 もう一つの不利な条件が、回線設置だった。日本テレコムは線路の、日本高速通信は全国の高速道路網の一部を利用して、日本全国に回線を敷くことができる。ところが第二電電には線路も道路もない。そのため無線によって全国を結ぶしかないが、中継基地局の建設費だけでも膨大な費用が必要だった。

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この記事の著者
関慎夫

1960年新潟県生まれ。横浜国立大学工学部情報工学科中退。流通専門誌を経て1988年(株)経営塾入社。2000年から延べ10年にわたり『月刊BOSS』編集長を務める。2016年に(株)経済界に転じ『経済界』編集局長に就任。電機、自動車、流通、IT業界などを中心に、これまで数百人以上の企業トップ、要人へのインタビュー実績を持つ。

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