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望月衣塑子「統一教会問題、落としどころ」「安倍事務所の無視」「なぜメディアは報じてこなかったか」「共産党は変わった」(本音のインタビュー#2)

 安倍晋三元総理の銃撃事件後、メディアでは旧統一教会の報道を連日繰り返している。これまで本部が刑事事件化されてきていないことや、信仰の自由の観点からも、どこに「落としどころ」を設けるべきか見えてこない。東京新聞望月衣塑子記者は団体の解散を前提に「グループとして宗教を続けることに問題はない」と指摘する――。(望月衣塑子「本音のインタビュー」全3回の2回目)

第1回:望月衣塑子「菅義偉のすごさ、岸田文雄の愚かさ」「秋にも解散説」「3.11を忘れるな」

第3回:望月衣塑子「記者はモノをいうためいる」「朝日新聞の過ち」「記者クラブはなくなるべきだ!」

目次

共産党は変わったのに、自民党は変わっていないのです

――統一教会問題はそもそも何が問題なのでしょうか。

 戦後、国際勝共連合を岸信介が支援してつくり、笹川良一がそのトップに就いたという流れを含めて考えると、統一教会は「反共」を旗印に自民党と結託し、自民党を支えてきました。過去の霊感商法での事件などがあり、現罪、組織としての票数は8万~10万票程度しかないと言われていますが、議員にとって、欠かせないのが選挙のときの信者たちの支援です。電話かけやハガキ書き、ポスター貼り、戸別訪問など、とにかく、食事とトイレ以外は、朝から晩まで選挙ボランティア、スタッフとして寝ずに圧倒的に働いてくれると聞きます。

 昔の話で言えば秘書として国会議員の事務所に入り、議員からは給料をもらわない一方で、勝共連合から給与をもらっており、議員の動きが逐一、教団側に報告されていたようです。地方自治体であれば、自民党の県議や市議そのものが信者だったり、そういうケースも多々ありました。政権与党である自民党に入り込んでいたのです。そういうことが安倍元総理の銃撃事件後に一気に露呈したことで、国民が自民党の掲げてきた政策のいくつかに不信感を持つようになったと思います。これで自民党や有権者の意識が変わらないのであれば、この国はよっぽど変わらない国なのだなと思います。

 ――勝共連合はその当時の日本に必要だったと思いますか。

 当時アメリカでは、レッドパージ(赤狩り)が活発に行われ、ソ連や中国の共産党は脅威だったと思います。「共産主義への防波堤を日本に作りたい」との意向があり、勝共連合自体は日本の意志だけで作られたわけではありませんでした。

 当時は「この国を共産主義に染めさせてはいけない」という考えが日本に根強くあったのは事実ですが、その時から今にかけて共産党は大きく変わりましたし、日本の共産党と中国やソ連の共産党は、現在、没交渉状態で、日本社会での共産党に対する評価もずいぶんと変わってきました。ジェンダーの多様性という意味では、政党内でのジェンダーバランスをはじめ、掲げる政策面でもいまどの党よりも進んでいるのではないでしょうか。自民党が言う「歴史的に統一教会との結びつきは必要だった」という主張は、今もなお強くつながっていることに対する言い訳にはならないでしょう。

 さらにいえば、統一教会は北朝鮮を支援してきました。「拉致の安倍」などと言われていたのに、創設者の文鮮明がガンガンお金を送って北朝鮮から感謝されていたような統一教会と、安倍さんがズブズブだったのです。拉致被害者家族の支援団体「救う会」や「拉致被害者家族会」は、今回の件では、沈黙を続けていますが、彼らからすれば安倍さんが表で言っていたことと、選挙を通じて裏でやっていたことは、拉致被害者の方々への裏切り行為とも取れるのではないでしょうか。

「今だけだから…」自民党の二枚舌を許せない!

――この問題は今に始まった話ではないはずです。

 自民党の茂木敏充幹事長はじめ「今後、統一教会と関係を持つ議員は、離党してもらう」と、必至に「関係遮断」をアピールしていますが、自民党が行った「自己点検」には、やる気のなさが表れており、発表直後から次々と申告漏れ、党に報告、訂正が続いています。ジャーナリストの鈴木エイト氏によれば、統一教会内部では「自民党は表ではああ言っているけど、やっぱり3年後の選挙は心配だし、本当に我々を切る気はないから大丈夫」「いまだけ我慢」などと政治家の本音が知れわたってしまっている始末です。

 そもそもなぜ2015年に統一教会から世界平和統一家庭連合への名称変更が認められたのか。なぜ18年間も名称変更を認めないとしてきた文化庁の方針が、2015年になり突如動いたのか。臨時国会が始まれば、文化庁が「確認中」として提出していない、当時の下村博文 文部科学相への説明文書や名称変更を巡る経緯に関する内部資料も出てくるだろうと思います。「事前と事後に説明を聞き、了承しただけ」と話す、下村さんと名称変更の関わりもより具体的に明らかになっていくでしょう。

――前々から問題として存在していたはずなのに、なぜメディアは今まで報じてこなかったのですか。

 2009年の「新世事件」(統一教会と関係が深いとされた印鑑販売会社の社員らが霊感商法をめぐって有罪判決が確定)では、統一教会の本部に対しては家宅捜索がかけられませんでした。元信者らの被害者救済にあたる弁護士によると、当時、警察とつながりのある政治家の意向が強く働いたとの情報もあるようです。

 いずれにせよ、第一次と第二次の安倍政権の間では、統一教会に関連した事件を刑事事件化できたのが、その後は、被害は継続しているにもかかわらず、事件化される動きが、パタっと止まってしまいました

 安倍さんが銃撃され死亡するということが起きなければ、統一教会と自民党との深いつながりがここまでクローズアップされることはなかったでしょう。そして安倍さんを銃撃した山上徹也容疑者のツイッターの文面や犯行前に統一教会の関係者に送っていた文書が明らかにされなければ、山上容疑者はじめ、カルト2世たちの状況がこんなひどいことになっているとは、多くのメディアが把握できていませんでした。

私はカルト2世の1億円被害者を取材した。それでも解散できないとはどういうことなんだ

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この記事の著者
望月衣塑子

東京新聞社会部記者。東京都出身。東京地検特捜部で事件を取材。2004年、日本歯科医師連盟のヤミ献金疑惑をスクープ。17年2月から「モリカケ問題」を追及するため、菅義偉官房長官(当時)の記者会見に出席。『武器輸出 と日本企業』『新聞記者』など著書多数。

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