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白人の憂い、黒人の怒り、そしてアメリカン・ドリームの行く末…映画に映るアメリカ社会の実相(みんかぶ特集「米国株の底値」)

 映画は社会を映す鏡である──。みんかぶプレミアム特集「米国株の底値」(全10回)の最終回は、いまのアメリカ社会を知るためにおすすめしたい、社会派エンターテイメント映画5本をピックアップ。ハリウッド大作やディズニーアニメーションでは決して描かれていない、現代アメリカの素顔を読み解く。

目次

アメリカ社会の現実を浮き彫りにした傑作…『ノマドランド』

 社会情勢を知るには、マスコミが発信するニュースをチェックするのが最適だが、そうした直接の「報道」とは別方向でリアルな社会を伝えてくれるメディアが「映画」である。人間ドラマに感動したり、エンタテインメントとして楽しんだりしているうちに、背景の社会情勢をすんなり受け止めてしまう。あるいは、通常の報道ではカバーしきれない裏の断面まで切り込んでいく……。映画は、社会を知るうえで最高の教科書にもなりえる。

 とくにアメリカ映画は、その役割が顕著だ。さまざまなジャンル、多様なスタイルで今の社会を取り込むことが得意。映画という文化が、社会の写し鏡にもなっている。アメリカの社会、その現実はどうなっているのか。肌で感じるうえで、どんな映画が最適なのか紹介していこう。

 社会の現実を伝えつつ、映画としても傑作という意味で、ひとつの指標になるのがアカデミー賞作品賞。その歴史を振り返ると、作品賞に輝いた映画は、単に評価が高かっただけでなく、その時代、その時代の状況を反映しているものが多く、アメリカの歴史を代弁してきたとも言える。とくに近年はその傾向が強く、中でも2021年の作品賞受賞作『ノマドランド』はアメリカ社会のある一面を鋭く見据えながら、この国の実情を浮き彫りにしたことで観るべき一作だ。

 『ノマドランド』の原作は2017年に発刊されたが、その発端は2008年のリーマン・ショックにさかのぼる。大手証券会社の破綻によるかつてない経済危機は、その後、現在に至るまで尾を引いていることが『ノマドランド』を観れば、リアルに伝わってくる。主人公のファーンは、この経済危機のあおりを受け、自宅を手放すことを決める。最低限の家財道具だけを車に積み、仕事を求めて移動生活する彼女を中心に、現代のノマド(=遊牧民)と呼ばれる高齢者たちの日常を追っていく。

 Amazonでは繁忙期だけ臨時で働いたりと、その現実は厳しいし、トランプ政権誕生後の分断社会の一片も浮き彫りとなる。しかも実際にノマド生活を送っている人が俳優として参加しており、現実感は満点。ここまで書くと徹底的にシリアスな作品のようだが、ファーンたちの生活がじつは幸せかもしれない……と思わせるのが本作の素晴らしさ。アメリカ社会の現実と、どう折り合うかという希望もうっすらと見えてくる。

Director/Writer/Editor/Producer Chloé Zhao and Frances McDormand on the set of NOMADLAND. Photo by Joshua James Richards. © 2020 20th Century Studios All Rights Reserved

◆『ノマドランド』ディズニープラスのスターで配信中

ウォール街が舞台の超一級エンタメ作品…『マネー・ショート 華麗なる大逆転』

 そのリーマン・ショックを “利用した” 側もいる。これもアメリカ社会の現実であることを教えるのが『マネー・ショート 華麗なる大逆転』だ。重要なのは、経済破綻を予知できるかどうか。本作の主人公である金融トレーダーのマイケルは、破綻を予知したことで “勝ち組” になろうと奮闘する。不動産の抵当証券に信用度の低いサブプライム・ローンが組み込まれていることに気づいた彼は、好景気に浮かれるウォール街の面々が耳を貸さないことをチャンスと捉え、バブルが崩壊した後に保険金で儲けようと目論む。実話を基にした小説『世紀の空売り 世界経済の破綻に賭けた男たち』の映画化。

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この記事の著者
斉藤博昭

映画専門のジャーナリスト/ライター。おもな執筆媒体は、シネマトゥデイ、Safari、スクリーン、キネマ旬報、Movie Walker、劇場用パンフレットなど。日本映画ペンクラブ会員。コロンビアのカルタヘナ国際映画祭、釜山国際映画祭では審査員も経験。

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