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「我こそが安倍晋三の後継者である」自民党の血みどろ争いが始まった…寵愛された高市早苗は大ピンチ

参院選は自民党大勝だが…求心力を失う安倍晋三なき自民党

 7月10日に投開票がなされた参議院選挙で、自民党が単独で改選過半数を確保した。岸田文雄首相はこれを受けて、8月下旬に内閣改造・党役員人事を実施する考えで、党人事では麻生太郎副総裁と茂木敏充幹事長を留任させる方向で調整している。

 しかし、今後の岸田政権の歩みを考えると、安倍元首相という羅針盤なしで、どこへ向かうのか、誰にも分からない。

 岸田政権は昨年の内閣発足以降、主要な政策を軒並みトーンダウンさせた。「新しい資本主義」に至っては、それが何ものであるかを党内で誰もうまく説明できない状況になってしまった。株価は下落し、市場関係者の怒りを買っていった。

 そこに割って入ったのが、安倍元首相であった。党内最大派閥「清和政策研究会(安倍派)」を率いる安倍元首相は、迷走気味になった岸田政権に保守の柱を打ち立てた。

 韓国の反発も予想された佐渡金山の世界遺産登録への道筋や北京五輪での外交ボイコット、ロシアによる侵攻に伴うウクライナへの支持表明、憲法改正…。安倍元首相の主張に岸田首相は盲目的に従っていった。

 参院選では、当選すれば安倍派への加入が既定路線だったとはいえ、安倍派が支援した新人・元職ら4人の加入が決まり、復党した橋本聖子氏の派閥再加入が決定するなど着実に勢力を拡大している。同派は7月21日、同日時点の会員数を「97人」と発表し、最大派閥の地位を守った。

 しかし、今、安倍元首相の突然の死によって、安倍派は分裂、弱体化の兆しを見せており、幹部も焦りを隠せないでいる。

塩谷「本当に何をやっていいかわからない」

 「『当面』というより『当分』集団指導制をとらざるを得ない。誰一人、現状では全体を仕切るだけの力もカリスマ性もない」。安倍氏や麻生太郎党副総裁とともに「3A」と呼ばれ、長期政権の屋台骨を支えた甘利明元幹事長は7月20日、安倍氏が率いた最大派閥「清和政策研究会」(安倍派)の現状について、メールマガジンでこのように評した。

 安倍派の会長代理を務める塩谷立・元文部科学相は、7月21日の「安倍元首相に代わる新たな会長を当面は置かないと確認」した清和研の総会後、記者団に対して「組織的に何か設けることはすぐにはない」「(安倍元が亡くなった後の対応を巡り)本当に何をやっていいかわからないというのが正直なところだ」と胸の内を明かしている。

 7月11日、BS日テレの番組「深層NEWS」に出演した安倍派会長代理の下村博文・前政調会長は、次のような発言を繰り広げた。

 「岸田首相はリベラル系。安倍さんあるいは清和研(安倍派)が、自民のコアの保守の人たちをつかんでいた。それを疎んじることになったら、コアの保守の人たちが自民から逃げるかもしれない」

 「安倍さんが亡くなったことが岸田首相にとって都合が良くなるか。逆になることもあると考えて人事を配慮してもらう必要がある」

 現政権には清和会から、松野博一官房長官や萩生田光一経済産業相ら4人の閣僚を送り込んでいるが、安倍元首相は生前、「次の内閣改造では5人に増やしたい」と周囲に語っていた。ところが、もはや閣僚の増員どころではない。現状の4人の閣僚枠を守ることに精一杯であることが、テレビ番組の下村氏の発言から見てとれる。

 人事面での対応は、塩谷氏があたるとされているが、岸田政権としては、安倍派が求心力を失ったとみて、分裂含みの安倍派の足元を見るような局面になりつつある。

長期政権となった首相は、みな清和研出身だった

 安倍氏の祖父・岸信介元首相を源流とし、福田赳夫元首相が立ち上げた清和研は2000年の森喜朗内閣以降、自民党最大派閥の力を背景に小泉純一郎首相や安倍氏を輩出した自民党の中核だ。それまでは竹下登元首相が築いた竹下派の流れに押されてきたものの、00年4月に小渕恵三首相が倒れ、当時の森幹事長や青木幹雄官房長官、野中広務幹事長代理、亀井静香政調会長、村上正邦参院議員会長という「五人組」が会談。森氏の後継が事実上決まり、権力の空白を回避した。

 それ以降、清和研以外の宰相は麻生氏、鳩山由紀夫氏(民主党)、菅直人氏(同)、野田佳彦氏(同)、菅義偉氏と続いたが、いずれも約1年という短命で終わっている。6人目の岸田文雄首相は宮沢喜一元首相以来約30年ぶりに「宏池会」政権を誕生させたものの、カリスマ喪失という混沌とした政局の中で、その「ジンクス」を突破できるのかは見えにくい。

 近年の首相は清和研の「数の力」に依存してきた。昨年秋に内閣を発足させた岸田首相も安倍氏とは頻繁に面会し、内政から外交・安全保障まで指南を受けるシーンが目立ち、最大派閥の意向を無視できなかったのは間違いない。しかし、7月8日に安倍氏が銃撃され死去した今、そのバランスが急激に変化しつつある。 

 安倍元首相が率いていた自民党最大派閥「清和政策研究会」(清和会、通称「安倍派」)のホームページには、「ごあいさつ」として、安倍元首相のこんな言葉が遺されている。

 「我が国をめぐる安全保障環境は厳しさを増しています。国民の生命と平和な暮らしを守るため、外交・安全保障政策を進化させて参ります。清和政策研究会は『真正保守』として『日本のために語れ』この使命感と信念のもと発言し行動して参りました」

さながらNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」のような後継争い

 今、「真正保守」を掲げるこの清和会、そして保守的な立場をとる議員たちによって、「我こそは安倍晋三の正当なる後継者である」と言わんばかりの血みどろの抗争が始まりつつある。キーパーソンは、13人。奇しくもNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」と同じ数だ。

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