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混迷極めるロシア・世界情勢…見えた!トランプ大統領復活の道…最大ライバルは極保守「ネオトランプ」候補

日本の相場が、米国政治に翻弄されている。またその米国政治もロシア・プーチンに大きく影響されている。現大統領のジョー・バイデンの支持率は記録的な低さに推移しており、すでにポストバイデンが誰になるのか、ワシントンや日本経済界の間で話題が頻繁にのぼる。そんな中で、前回の大統領選で敗れた共和党ドナルド・トランプが復活の兆しを見せている。彼の最大のライバルは超保守発言を繰り返すロン・ディサンティス・フロリダ州知事。学校のクラス内で性的指向や性自認に関するディスカッションを禁じる「Don’t Say Gay(ゲイと言ってはいけない)」法を同州で可決させるなど、全米で大きな注目を集めた。次の共和党予備選はトランプVSネオトランプの様相になってきた。国際政治アナリストの渡瀬裕哉氏が分析する――。

トランプ前大統領の勢力はまだ死んでいない

1月6日連邦議事堂襲撃事件に関する調査委員会報告の公開が行われており、トランプ前大統領の親族や側近も含めた証言が注目を浴びている。調査委員会報告はトランプ前大統領やその周辺が暴動を扇動し抑止しようとしなかったことを立証するものだ。

しかし、同報告書に記された関係者の証言はトランプ前大統領の2024年大統領選挙再選の道を完全に閉ざすものであろうか。

筆者はトランプ前大統領の影響力はやや減少しつつあるものの、2024年大統領選挙における台風の目であり続けると予測する。トランプ前大統領の影響力は共和党内に隠然と残されており、共和党幹部も連邦議員もトランプ前大統領の動向を常に意識せざるを得ない状況だ。

2022年2月に行われた共和党全国委員会主催の冬季大会において、ロナ・マクダニエル共和党全国委員会委員長は1月6日連邦議事堂襲撃事件に関して、トランプ大統領を不問とし、逆に同氏を糾弾する2名の所属議員を処罰した。

もちろん、自党の大統領職にあった人物の責任を問うことは政党として致命傷になり得るため、共和党の党組織がトランプ前大統領を糾弾することは想定できない。しかし、この冬季大会での出来事はトランプ前大統領の影響力は建前以上に共和党内に深く浸透していることを証明するものだった。

共和党内の反トランプ勢力は上院ではミット・ロムニー上院議員、下院ではリズ・チェイニー下院議員だ。両者ともにトランプ前大統領に対立的な姿勢を示しているものの、その姿勢を強めるほど共和党内では孤立を深めている。逆に下院ではバイデン大統領就任の正統性を認めなかったスティーブ・スカリス下院議員がケビン・マッカーシー院内総務の後継者として地位を固めつつある。たとえトランプ前大統領に内心で反感を抱いていたとしても、それを表で口にすることは連邦議員のキャリアに関わる大問題と成り得る状況となっている。

また、トランプ前大統領の集金力は共和党全国委員会の集金能力をたった一人で上回っている。同氏のPACに寄せられる個人献金の勢いはいまだ健在である。多額の選挙資金を必要とする米国政治において同氏の集金力を無視することは不可能であり、同党関係者はトランプ前大統領の莫大な資金の磁力に引かれていることは否めない。先立つものは代えがたいものであることは世界中の政治における共通事項だ。

このような事情から共和党としては徒にトランプ前大統領を巡る問題をスキャンダルのネタにされることを回避し、党内分裂を防いで何とかやり過ごそうとしている姿勢が伝わってくる。

共和党内で隠然と残るトランプの影響力

では、実際にトランプ前大統領が共和党内に保有している影響力はどの程度であろうか。その影響力の大きさは5月・6月に実施された中間選挙予備選挙の結果で明らかになった。

今回、共和党が上院改選となる接戦州のうち、オハイオ州やペンシルベニア州の予備選挙結果は、トランプ前大統領の現在のパワーを如実に表している。オハイオ州とペンシルベニア州では候補者が濫立し、同予備選挙は党内の各派閥の代理戦争と半ば化していた。そして、トランプ前大統領が推薦した予備選挙候補者がギリギリで頭一つ抜けて他候補者を打ち負かした。

トランプ推薦候補者の得票率は約30%程度であることから、共和党内の生粋のトランプ支持者のパーセントは20~30%程度であると推測できる。この数字は2024年の共和党予備選挙の立候補者が濫立した場合、トランプ前大統領が他候補者を抑えて、党指名を勝ち取る可能性が十分にあり得ることを示すものだ。

トランプ復活の死角は何か?

ただし、トランプ前大統領の復活劇には死角も存在している。それは予備選挙で強力なライバル候補者と1対1の対決になった場合、非トランプ系の支持者票を結集した候補者に敗北するシナリオだ。

実際、ジョージア州知事選挙予備選挙で、トランプ前大統領が推薦した候補者はタイマン勝負で現職知事に完敗している。ジョージア州は2020年大統領選挙で最後まで不正選挙問題で大荒れに荒れた州であり、トランプ支持者も少なからず存在しているエリアだ。それにも関わらず同州の共和党員は、不正選挙疑惑でトランプ前大統領を否定したケンプ知事を圧勝させる判断を下した。この出来事は知名度及び求心力がある非トランプ系候補者が出馬した場合、トランプの共和党予備選挙での勝利が危ないことを示唆している。

現在、トランプ前大統領の党内最大のライバルは、ロン・デサンティス・フロリダ州知事だ。同知事の言動は極めて保守的であり、その政治経歴も含めて党内保守派からの信任は厚い。

共和党では関係者が定期的に集まる集会で「次の大統領は誰が相応しいか」という模擬投票を行うことが慣例となっている。その集会の1つである西部保守サミットでは、2021年・2022年2回連続でデサンティス知事はトランプ前大統領を打ち負かしている。党内予備選挙で大きな力を持つ共和党保守派は、人物ではなく政治的主張に注目する傾向があり、既に自分たちの意にかなったトランプ前大統領以外の候補者も物色し始めていると言えるだろう。デサンティス知事にはトランプ前大統領を支持してきたメガドナーも急速に接近している。

ただし、2022年6月にMorning Consultが共和党員全体に実施した世論調査では、トランプ前大統領は共和党員の53%の支持を獲得し、デサンティスその他の候補者を大きく引き離している。しかし、この数字が最大値であるとすると共和党支持者の約半数はトランプ前大統領以外に投票したことになり、今後この傾向は一層強まっていく可能性が高い。デサンティス知事はトランプ前大統領に対抗する人々の支持を結集していく柱となるだろう。

トランプ候補はこのまま勝ち抜けるのか

では、トランプ前大統領が共和党内で大統領選挙候補者として指名を得たとしても、今度は民主党の大統領候補者との本選で勝ち抜くことはできるのか。

バイデン政権の失政によって民主党の支持率は急落の一途を辿っている。ただし、

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この記事の著者
渡瀬 裕哉

1981年生まれ。早稲田大学大学院公共経営研究科修了。 早稲田大学公共政策研究所招聘研究員、事業創造大学院大学国際公共政策研究所上席研究員。機関投資家・ヘッジファンド等のプロフェッショナルな投資家向けの米国政治の講師として活躍。2016年トランプ大統領当選、2020年民主党による大統領・連邦上下両院勝利を正確に予測し、米国政治に関する分析力に定評がある。『メディアが絶対に知らない2020年の米国と日本』(PHP新書)、『2020年大統領選挙後の世界と日本 』(すばる舎)、『なぜ、成熟した民主主義は分断を生み出すのか』(すばる舎)

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