1兆円を動かす機関投資家リウムが絶対守る”3つのルール”…「プロスペクト理論と付き合え」「ゴミ箱を蹴飛ばせ」
たった数分で1兆円の取引をするインターバンクトレーダー。日本国内で20人足らずの、トレーダー業界のトップ・オブ・トップとも言われる存在だ。前回記事「『分レベルで1兆動かす男』がこの重大局面で警戒する “二つのシグナル” と勝負をかけるタイミング……」では、そんなインターバンクトレーダーの世界について、大手証券会社で年間数百億円の取引をしていたリウム氏にお話を伺ったが、好評につき、改めて3回連載で、リウム氏の投資のルール、投資で勝つために見るべき情報、2023年の為替予想について、詳しく話してもらった。第1回は投資のルールについてだ。
1兆円トレーダーの投資ルール 1 …「許容損失を明確化せよ」
──リウムさんが投資を行う上で立てているルールがあるそうですが、それについて教えてください。
リウム 私が重要だと考えている投資のルールは主に3つあります。まず1つ目は「許容損失を明確化する」ということです。これまでの経験から言うと、大きな損失を出してしまう投資家は、損切りができないという共通点があります。本来、ポジションをエントリーする段階で、ストップロス(SL:損切り。保有するポジションを指定する逆指値で確定すること)の位置を確かめる必要があります。ところが、ディールで許容できる損失はいくらになるのかを明確にしておかないと、損切りするにしてもタイミングを悩んでしまうのです。その結果としてズルズル負けが続き、取り返しのつかない状況に陥ってしまうことにつながります。
──損切りができないから多大な損失を被ってしまう。では、その許容損失を決めるうえで何を参照すればよいのでしょうか。
リウム 人間がどういう状況でどういう心理状態に陥りやすいのか。これを調査した研究が進んでいるので、科学的な知見を頭に入れることです。たとえば、人間は危機的状況下においては、自分にとって有利な情報を集めようとする傾向があります。有利な情報だけで意思決定すると、その情報を根拠にして非合理的な意思決定を下してしまいます。それでは重要な局面で正常な判断ができないですよね。
ですから、自分はどういうバイアスに陥りやすいかを科学的な面から認識しておくことが重要です。そのうえで損失に立ち向かわないといけません。