「株が好きなんや」資産16億円、投資歴69年の87歳デイトレーダーが年を重ね”やめた投資”と”諦めた投資”

「人生100年時代」「老後2000万円問題」「年金受給額の引き下げ」――。高齢者を取り巻く現状は決して明るいものではない。政府は2022年に閣議決定した「新しい資本主義のグランドデザインおよび実行計画」の中で、高齢者に対しても投資を促す方針を掲げたが、現実はなかなか進んでいない。そんな中、デイトレードで月数億円にも上るお金を動かし続けているのが御年87歳の藤本茂さんだ。投資歴69年に及ぶ藤本さんに、株との向き合い方について伺った――。
後編:投資歴69年、億を動かす87歳のデイトレーダーがたどり着いた「株選定の3つのルール」日経平均は”3月に3万行くと思ったが…”
3台のパソコンで1日40~50回の売買
「(株価が)上がっとるな。売りや」――。神戸市東灘区にあるマンションの一室で、藤本茂さん(87)がパソコンモニター3台を見つめながら素早く注文を出す。
前々日に443円で買った株が、451円に上昇していた。保有している2000株のうち、1300株を売りに出す。儲けは1万円超。「1円でも2円でも、上がってたら儲かるんや」と力を込める。
藤本さんは、1日に40~50回ほど株の売買繰り返すデイトレーダーだ。「ほんまは月に1000回(の売買)が目標なんやけど、最近は600回くらいしかできてないわ」と豪快に笑う。投資歴69年に及ぶ藤本さんの資産総額は、実に16億円に上る。
日本の高齢者はお金を “貯めこむ” 傾向がある。2018年に金融庁が発表した「高齢社会における金融サービスのあり方」によると、2014年時点で家計金融資産の約3分の2を60歳以上の世帯が保有する一方で、60歳以上の保有する金融資産額は過去20年間で横ばいとなっている。
対して米国では、現役時代から退職後に至るまで投資信託などによる資産形成が活発に行われている結果、75歳以上の金融資産は20年で約3倍に増加している。かつて同程度だった日米の高齢者の保有資産は、20年で大きく差が開いた。
政府は2022年「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」の中で高齢者に対しても資産形成を促す方針を掲げた。ただし、この中でイメージされているのはNISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)の拡充といった、比較的リスクが小さいとされる手段だ。