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個人の判断ができない日本人の過剰な自意識…日本に蔓延るマスクの呪いを憂うフランス哲学者

まるでヘビとカエルのように「後手」に回ろうとする日本人

 「ヘビににらまれたカエル」という慣用句がある。要するに、カエルを今にも捕食しようとするヘビを前にしてカエルが硬直してしまう図によって、「恐ろしい人を前にして体がすくんでしまった状態」をたとえたものだ。

 さて、カエルは、ほんとうにヘビが怖くて身動きが取れないのか? このとき、逃避という合理的な行動をとらないのはなぜか? 

 実は、カエルが静止しているのは、ヘビに射すくめられているからではなく、一種の「戦術」であることを、2020年、西海望研究員を中心とするチームが発見して話題になった(academist Journal, 2020年6月17日記事)。

 研究チームは、トノサマガエルとシマヘビが対峙(たいじ)するシーンを観察した。トノサマガエルの逃避運動は、放物線の移動であり跳躍後の進路変更は不可能だ。ヘビに先んじてカエルが跳べば、ヘビに軌道を読まれ、捕食されてしまう。

 ヘビの動きも同様である。ヘビがカエルにかみつこうとして体を伸ばし、目標物にかわされた場合、いったん体を曲げてからでないと方向を変えられない。この体勢立て直しには約0.4秒間かかり、そのタイムロスは、カエルにとってはヘビから逃げ切るのにじゅうぶんな時間だ、というのである。

 したがって、ヘビもカエルも、それぞれが相手に対して「後手」に回る機会をうかがって、身じろぎもせずにいるのだ。

 わたしたちは、集団のなかで生きているかぎり、他人の思わくや行動に依拠して自分の思わくや行動を決定している。いちばんわかりやすい例は、対戦相手のいるゲームだ。サッカーの試合である選手が味方の選手にパスするとき、あるいはゴールに向かってシュートを打つとき、彼がボールを蹴り出す方向は敵チームの選手の次の瞬間の動きに対する推理に基づいている。あるいは、棋士が指す次の一手は、その一手を彼が指した場合に対戦者が構想するであろう戦略の解読にかかっている。

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この記事の著者
福田肇

哲学者。フランス国立レンヌ第Ⅰ大学哲学科博士課程にてDEAを取得。 同大学およびフランス国立応用科学院で講師を務める。現在新島学園短期大学で「思想」を講ずるほか、中島義道主催「哲学塾カント」で「現代フランス思想入門」を担当する。

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