寿司ペロ事件で弁護士が「寿司屋ではアナゴ一択」と考える理由…ペロペロの代償は多くて3000万円か

回転寿司チェーン「くら寿司」の店で、客席にある醤油(しょうゆ)差しを舐(な)める。うどん店では、天かすを入れるためのスプーンを口に入れる。さらには、そのめいわく行為を撮影した動画をSNS上に投稿し、店の業務を妨害する。今、こんなめいわく行為が社会問題化している。現代社会が産んだ病理ともいえる「めいわく行為×SNS」は、どのような顛末(てんまつ)を迎えるのか。社会問題に詳しい、城南中央法律事務所所長で弁護士の野澤隆氏に話を伺った。(聞き手、小倉健一)
加害者が中学生の場合、誰が責任を負うのか
――めいわく行為がSNS上で拡散され、社会的に大きな影響を及ぼす事件が後を絶ちません。例えば、回転寿司チェーン大手「スシロー」で、高校生の少年が醤油ボトル、湯呑み、寿司に唾液を付着させた事件では、SNS拡散直後に株価が暴落し、一部報道では「時価総額が一時168億円下がった」という指摘もあります。このようなめいわく行為をした場合、どのような顛末を迎えるのでしょうか。
野澤隆弁護士 まず仮定の話で、もしそのまま株価が低迷を続けていたとして168億円全額を本人(高校生)に請求したらどうなるか、民事上の責任能力を中心に考えます。
ケース・バイ・ケースではありますが、一般論として加害者が未成年者の場合の民事賠償事件では、小学生以下のときは親が責任負担、高校生以上のときは自分で責任負担、中学生のときは誰が負担するのか揉める、といったところで、本件では本人が責任負担するのが原則です。
次に、現実問題として本人がいくら払うことができるかを法律家の立場で思考します。
ペロペロ被害、色々粘って会社が勝ち取れるのは2000万~3000万円
野澤 私の思考実験ともいうべき内容は、こんな形です。
○今回、悪意に基づく損害賠償ものなので、破産されても(税金や養育費などと同じく)非免責債権に該当する関係上、法的に権利そのものが踏み倒されることはないだろう