これまでの仮想通貨の市場規模の変遷を振り返る

これまでの仮想通貨の市場規模の変遷を振り返る

仮想通貨の市場規模は、2015年初めの時点では、56億ドル程度でしたが、2017年末には100倍以上となる5650億ドルまで成長しました。2021年11月には2兆9000億ドル台まで拡大。その後は大きく縮小しましたが、1兆ドルという巨額を上回る水準で推移しています。

◇仮想通貨市場の時価総額推移(2016年~)

2016年から2023年の仮想通貨市場のマーケットキャップ推移

出所:CoinMarketCap

仮想通貨市場はどのようにして拡大してきたのでしょうか。

今回は、これまでの仮想通貨市場の拡大時期に起きた出来事や誕生した仮想通貨についてみていきます。

目次

市場拡大と代表的な出来事

2016年はビットコインが3倍程度になったほか、イーサリアムに注目が集まり一時20倍を超えるほど上昇しました。

年初に100円台だったイーサリアムは、スマートコントラクトという技術に注目が集まり、半年間で20倍以上になりました。これにより、仮想通貨市場の時価総額は2000億円ほど押し上げられました。

さらに、ビットコインの半減期を前に数週間でビットコインの価格は5万円から8万円台に急騰。その後は、The DAO事件(マイナー通貨との付き合い方には要注意)もあり相場は落ち着きましたが、年末には中国人のキャピタルフライトとしてビットコインを購入する動きが加速。11月以降のビットコインは、ほとんど押し目の無い上昇トレンドを描きました。

2016年末の時価総額:2兆7000億円程度、BTC比率:85%

2017年

2017年に、仮想通貨市場は2兆円台から70兆円台まで劇的に急成長しました。

・1月~3月(ビットコインの時価総額1.6兆~1.9兆円)

ビットコインの価格は1月5日に15万円を記録。しかし、その直後に中国で仮想通貨の取引規制が発表され、取引所に対する立ち入り検査が行われたため、すぐに8万円まで下落しました。

その後、価格は13万円程度まで持ち直したものの、ビットコインETFの非承認やUASF騒動(NYA合意)によるソフトフォークを嫌気し、価格は伸び悩みました。

ただ、仮想通貨ブームがじわじわと盛り上がっており、時価総額2位のイーサリアムが1000円から5000円にまで上昇。時価総額は4000億円も拡大しました。一部では、イーサリアムの価格はビットコインを超えるとまで言われていました。

・4月~5月(ビットコインの時価総額1.7兆~2.3兆円)

4月1日に改正資金決済法が施行され、仮想通貨取引業者に対して金融庁への登録を促す流れとなりました。ちなみにこの時点では、みなし業者に対する風当たりの強さは2019年ほどではなく、新しい技術をできるだけ柔軟に受け入れるという風潮でした。

また、日本ではビックカメラグループでビットコインによる決済が可能となり、国内でも多くの場所(4000店舗以上)でビットコインが決済通貨としての役割を果たせると期待されました。さらに5月にはビットフライヤーでテレビCMが行われ、認知度向上とともに市場規模は拡大していきました。

そして、この時期にはアルトコインが非常に盛り上がりました。

・8月(ビットコインの時価総額4.5兆)

ビットコインがハードフォークを行い、ビットコインキャッシュ(BCH)が誕生しています。ビットコインキャッシュの価格は、ビットコインとのハッシュレート比率であった10%とほぼ同じ価格が付きました。これにより、たったひと晩で仮想通貨市場の時価総額は6000億円押し上げることとなりました。

また、この際のハードフォークでは1BTCにつき1BCHを付与するということが行われました。仮想通貨を持っていると、結果としてほぼノーリスクで資産が増えたという衝撃的な出来事は、仮想通貨への投資を加速させるカンフル剤となりました。

ビットコインキャッシュは、2019年にSBIVCから取り扱い中止などの扱いを受けたものの、現在も時価総額トップ10に入る通貨となっています。ただし、時価総額は誕生時点とほぼ変わらない状態です。

・9月(ビットコインの時価総額8兆)

中国で仮想通貨が実質的に取引禁止といえる内容の規制を発表・実施しました。この後に、バイナンスやフォビが拠点をマルタに移した理由も、中国の強い規制が原因です。

ステーブルコインとしてテザーが注目され始めました。誕生時に10億円程度であったテザーの時価総額は、2017年半ばから度重なる発行を行い、年末には1400億円まで膨れ上がることとなりました。

日本でもSBIグループがSコイン、三菱 UFJグループでは MUFGコイン、みずほ、ゆうちょ、地方銀行(60行)はJコインをそれぞれ発表しています。ただし、記事執筆ではその3つの仮想通貨はリリースされていません。

今後、各仮想通貨が実装される段階では、日本国内の規制や法律は、さらに整えられていると予想されるため、大きな混乱はないと予想できます。

11月(ビットコインの時価総額11兆)

ビットコインのスケーラビリティ問題を解決するために、 Segwit2x の実装が計画されました。しかし、この計画は頓挫し、ビットコインは2019年の段階でもアップデートを繰り返しながらスケーラビリティ問題に対処しています。

2017年は仮想通貨市場では ICOが流行し、世界中で実行されていました。そのため、ICOをきっかけとして仮想通貨取引所に上場した仮想通貨も多く存在しています。

また、ICOに参加するためにはBTCやETHを購入する必要があり、そのために法定通貨からの資金流入が加速。相場の上昇トレンドに合わせて、ビットコインの価格は加速度的に膨れ上がることとなりました。

2017年1月から、仮想通貨全体の価格が大きく上昇したことにより、仮想通貨長者が多数誕生。仮想通貨で得た莫大な利益を他の仮想通貨やICOに投資することにより、主要なアルトコインであったリップル(XRP)やネム(XEM)も急騰。

この頃になると、情報商材屋やブロガーなどが草コインと呼ばれる時価総額の低い仮想通貨を煽るように紹介したことにより、価格が100倍になるような仮想通貨も誕生しました。

さらに、ビットコイン先物などの機関投資家向けの商品やレバレッジ取引も普及し、2017年末の仮想通貨市場はここ数年で最大級に盛り上がったと言えます。

2017年末の時価総額:68兆7000億円程度、BTC比率:37%

2018年

2018年に入ると仮想通貨の価格は一気に下落します。

加熱相場の冷え込みもありましたが、大規模なハッキング事件やマイナーの争いなど、仮想通貨・ブロックチェーンの大きな課題とも言える事件が多発しました。

・1月(ビットコインの時価総額22兆)

フェイスブックが仮想通貨の広告を禁止する規制を発表しました。これは、ICOに対する詐欺率の高さを危険視したと言われています。

さらにコインチェ ックで5億2300万枚のネム(XEM)がハッキングによって流出。仮想通貨業界で過去最大となる額の資産流出となりました。そのため、ビットコインを初めとした仮想通貨の価格が2分の1程度まで下落する事態となり、仮想通貨のリスクを世間的に認知させる事件となったといえるでしょう。

・2月(ビットコインの時価総額15兆)

中国で仮想通貨関連サイトへのアクセスが 全面的に遮断され、仮想通貨関連事業を行うことが中国では不可能となりました。

また、国内でもZaifが先物取引を終了し、仮想通貨に対するマイナスのニュースが立て続けに起きたことから、ビットコインの価格は1BTC65万円程度まで下落しています。

確定申告に絡む仮想通貨の売りが背景にあったとも言われており、申告の最終週はビットコインの価格は特に大きく下がりました。

・4月(ビットコインの時価総額11兆)

コインチェックを正式にマネックスグループが買収。経営の立て直しと、セキュリティー体制の見直しが図られることが発表されました。

また、ブラックロックが仮想通貨へ投資を行うかもしれないとのニュースが流れ主要な仮想通貨は急騰しました。

5月には、EOSが評価され価格は3倍以上に急騰。これにより、時価総額を1兆2000億円程度回復させました。

しかし、6月には日本の仮想通貨交換業者に金融庁より業務改善命令が出され、1日でビットコインは10万円程度急落。その時価総額を吹き飛ばす結果となりました。

・9月(ビットコインの時価総額12兆)

国内の大手仮想通貨取引所であるZaifで67億円相当のハッキング被害が発生。後にフィスコ株式会社へ事業を譲渡し、運営会社であるテックビューロは解散しています。

・10月(ビットコインの時価総額11兆)

日本仮想通貨交換業協会を金融庁が正式に自主規制団体と認め、仮想通貨に対する規制などに対して一定の効力を持つようになりました。

・11月(ビットコインの時価総額11兆)

ビットコインキャッシュがコミュニティー内の意見をまとめられずに、ビットコインABCとビットコインSVに分かれるハードフォークが発生。ハッシュ戦争と言われたこの事件は、過去に例がないほど混乱を巻き起こし、仮想通貨の価格が軒並み大暴落しました。

※ビットコインABC側をオリジナルのBCH、ビットコインSV側をビットコインSVと呼んでいます。

ビットコインSVはその後も開発が進められており、2019年7月24日にはビットコインSVがブロ ックサイズを拡大するハードフォークを成功させています。

2018年末の時価総額:14兆円程度、BTC比率:52%

2019~2020年

2019年に入ると、匿名技術MIMBLEWIMBLEと提携したライトコインが急騰。

また、世界最大級の取引所であるバイナンスが新サービスを多数展開。取引所トークンであるBNBは6倍にまで上昇し、時価総額を4500億円ほど押し上げました。

3月からは、ビットコインを中心とした好材料により市場規模が急拡大しました。

2019年4月・5月のビットコインチャート

その後も仮想通貨市場は、2018年初めにつけたピークは越せないものの、2020年末にかけて堅調に推移します。

2021年

2021年、再び仮想通貨は大ブームを迎え、上昇につぐ上昇が続きます。2021年5月に市場規模2兆4000億ドル台をつけていったん暴落に見舞われますが、7月に1兆3000億ドル台まで下落したところで反転。11月に2兆9000億ドル台まで上昇します。

2022年~

2021年11月に市場規模2兆9000億ドル台に達した仮想通貨は再び下落に転じ、22年6月には1兆ドルの大台を割り込んでしまいます。しかしほどなく底打ちし、その後は1兆ドルを挟んだ水準で推移しています。

まとめ

仮想通貨市場は、一大ブームを終えた後に衰退した時期を乗り越えて着実に成長しています。

仮想通貨も開発がきちんと行われて、実用性のあるプロジェクトのものが残るようになってきており、ITバブルの後と似ているという人もいます。

今後は、社会にどのような影響を与えるか、そしてどれだけ浸透していくかという実需により注目が集まってくるでしょう。

インターネットに次ぐ革命だと言われているブロックチェーン・仮想通貨の今後に期待したいですね!

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