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任天堂創業家vs東洋建設、ついに最終決着!反対する経営陣を追い詰めた創業家による鬼の”B-dash”

 日本企業の株主総会と言えば、かつては“しゃんしゃん総会”と揶揄されたように、会社側が示した取締役案を大した議論もせずに可決するものと決まっていた。ところが近年、そうした構図が大きく変わってきている。かつてはネガティブに捉えられていた「物言う株主(アクティビスト)」の存在感が増し、一般の株主もそれに同調するようになってきたのだ。コロナ明け、2023年の各社株主総会から見えてきた、新たな風景とは?

企業の説明責任を問う流れが加速‥2023年株主総会の新たな潮流

 株主総会には企業社会の雰囲気がよく表れていると思う。新型コロナウイルス禍の中だった過去数年は、先行きへの不透明感や不安を映し、「サステナビリティ(持続可能性)」が議論の中心を成した。コロナ明けとなる2023年の総会は、投資家が株主価値や利益還元、企業統治(コーポレートガバナンス)などを問う場面が多かったようだ。アクティビスト(物言う株主)の戦術も変わってきた。見方によっては、株式会社制度の原点回帰。説明責任のハードルが上がり、難しい時代になったと感じる経営者も多いのではないか。

 三菱UFJ信託銀行の調べによれば、2023年6月総会で株主提案のあった会社は90社(議案数344件)と、過去最高だった昨年の77社(292件)を上回った。アクティビストを含む機関投資家の提案は43社、112件。企業にとって神経を使わなくてはならないのは、市場のプロともいえるファンド・機関投資家の提案だ。

 機関投資家の提案の内訳をみると、「社外取締役の員数・構成」が14件と最多で、以下、「株式報酬等の付与・報酬額改定」「押収額・算定方法の開示」「役員の選解任」と続く。つまり、ガチンコのガバナンス・企業価値の向上策が突きつけられた。

 この点で思い出されるのは海洋土木大手の東洋建設が6月27日に開いた定時株主総会で、任天堂創業家の資産運用会社「ヤマウチ・ナンバーテン・ファミリー・オフィス(YFO)が提案していた取締役候補7人が可決され、取締役の過半を占めることになった一件だ。

大株主・任天堂創業家が独自の取締役候補を立てた東洋建設の事例

 YFOは東洋建設に会社側の同意を前提とした株式公開買い付け(TOB)による非公開化を提案していたが、東洋建設側が賛同を示さなかった。そこで協議を打ち切り、2023年1月に武沢恭司社長(当時)らの選任に反対したほか、4月には独自の取締役候補を提案した。

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この記事の著者
小平龍四郎

1964年生まれ。静岡県出身。早稲田大学第一文学部卒業。日本経済新聞入社後は主に金融・証券畑を歩き、「山一証券破綻」「村上ファンド登場」などの特報にかかわる。欧州総局(ロンドン)やアジア総局(バンコク)を経験し、現在は日経新聞の編集委員。専門は証券市場、ESG/SDGs、企業統治。著書は「グローバルコーポレートガバナンス」「アジア資本主義」「ESGはやわかり」。 Twitter:@Kodaira_Nikkei

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