6000人が不法に暮らす治安最悪巨大墓地を歩く…墓場で生まれ、墓場で学び、墓場で死ぬ・クーロン黒沢「フィリピン・マニラ」

ホスト売り掛け問題、松本人志問題、セクシー懇親会…混沌とした日本のニュースに気が滅入る人も多そうだが、アジアはもっとカオスだった。紛争中の1997年からカンボジア・プノンペンに住み、『怪しいアジアの歩き方』などの著作があるクーロン黒沢が、アジア・アンダーグラウンドの今をお伝えする――。
セブ島などの美しいリゾート地でも知られるフィリピン。その華やかな一面の一方で、いまだに多くの国民が貧困に喘いでいる。フィリピン統計機構の発表によると、2021年時点でフィリピンの貧困率は23.7%だったという。光と闇の落差は大きい。
第3回は、そんなフィリピンの「闇」に迫る。貧困層が不法に住みつき、スラム街となったフィリピンの巨大墓地へーー。連載「世界一受けたくない授業」
目次
フィリピンの墓場には人が勝手に住んでいる
フィリピン・マニラ首都圏──人口1300万のうち、3割以上の市民がスラム居住者という驚きの都市。海や川のほとり、橋のたもと、線路脇など、ありそうなところには大抵ホントにスラムがあって、まさに期待を裏切らない町なのだが、なかでも意外に感じたのが「墓場」だった。
フィリピンの都市部には墓場に定住する人々がおり、特に管理のずさんな公営墓地は数千人規模の住人を抱え、文字通りの「墓場スラム」状態。麻薬売買など犯罪の温床にもなっているという。

最深部にある貧困層の集合墓。舗装路以外はかなり汚い=フィリピン・ナボタス公共墓地
そんなフィリピンは国民の9割がキリスト教徒。宗教上の理由から、埋葬の際に遺体はほぼ土葬される。マニラの高架鉄道で移動中、眼下にたびたび墓地を見ることがあるが、墓のサイズがとにかくデカく、2階建て、3階建て、豪邸のような墓も珍しくない。