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加盟社の運用資産は1.2京円!! 日本の企業統治改革を裏で操ってきた「ICGN」の正体…彼ら話し合う次なるトピック

 機関投資家を中心に構成するネットワークで、コーポレートガバナンスの水準の向上を通じた市場や経済の発展のために、提言の発信を行っている団体「ICGN」。加盟社の運用資産が77兆ドルを超えるこの団体の年次会議に、日経新聞の上級論説委員兼編集委員である小平龍四郎氏が参加。そこで議論されてきたテーマ、見えてきた喫緊の課題について解説する――。

目次

ICGNは日本の10年に及ぶ企業統治改革にも助言

 AI(人工知能)、格差、民主主義――。ひとつだけでもきわめて重く、リスクへの対処法は容易に見つからない。そんなテーマばかりがずらりと並ぶ国際的なカンファレンスに参加した。7月15日から17日まで英国ロンドンで開催された国際コーポレート・ガバナンス・ネット・ワーク(ICGN)の年次会議だ。

 米欧の年金基金などが1995年に設立し、加盟社の運用資産が77兆ドル(1.2京円)に達する民間団体ICGNは、時々の世界情勢に投資家の視点から問題提起をしてきた。金融市場の関連では米ネットバブルの崩壊やグローバル金融危機。国際政治の分野でもロシアのウクライナ侵攻に声明を出すなど、問題意識は市場の森羅万象に及んでいる。日本の10年に及ぶ企業統治改革に助言をしてきたのも、この組織だ。

 そんなICGNがAIから民主主義など投資とは無関係にも見えるテーマを一時に議論の対象としたのは、企業活動や資本市場が重層的なリスクに覆われているからである。

「責任あるAI」は世界的な課題になっていた

 AIに関する議論では、ビジネスへの恩恵だけでなく、与えうる損害の大きさにも目を向けるべきとの指摘が相次いだ。特に研究開発でのAIの応用は今や不可欠なものになったが、使い方を誤ると個人情報の不正な使用やプライバシー侵害といった人権の問題を引き起こしかねない。日本でもAIを利用した内定辞退率のスコアを無断で企業に提供されていた「リクナビ問題」で注目された。患者の個人情報を大量に集めて解析する新薬開発の分野でも「責任あるAI」は世界的な課題となっている。

「(責任あるAIに向けて)今こそ行動の時だ」。スイス製薬大手ノバルティスのエシックス・リスク・コンプライアンス最高責任者、クラウス・ムースマイヤー氏は、ICGN会議の場でこう力説した。会場の投資家からも「企業のAI活用に関して透明度のいっそうの向上が求められる」との声が聞かれた。

「経済的な格差」についても大真面目に議論

 格差や社会の分断に関しては、新たな情報開示の枠組みが話題となった。TISFD(Taskforce on Inequality and Social-related Financial Disclosures、不平等・社会関連財務開示タスクフォース)。米英の年金や資産運用会社、ILO(国際労働機関)などが主導し、企業活動や気候変動がもたらす経済的な格差などについて情報開示と分析を進めるプロジェクトだ。2024年9月に正式に発足するという。

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この記事の著者
小平龍四郎

1964年生まれ。静岡県出身。早稲田大学第一文学部卒業。日本経済新聞入社後は主に金融・証券畑を歩き、「山一証券破綻」「村上ファンド登場」などの特報にかかわる。欧州総局(ロンドン)やアジア総局(バンコク)を経験し、現在は日経新聞の編集委員。専門は証券市場、ESG/SDGs、企業統治。著書は「グローバルコーポレートガバナンス」「アジア資本主義」「ESGはやわかり」。 Twitter:@Kodaira_Nikkei

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