医学部志望の小学生がこぞって通う塾の正体…医者になりたいなら!関係者「学校教育や受験教育では、このような力を養うことは難しい」

教育ママ・パパたちの間で、医学部受験熱が高まり続けている。そんな中、医学部受験を志す家庭が小学生のうちにこぞって通わせている謎の「理系塾」があるという。Xでのフォロワー数1.8万人超えの教育投資ジャーナリスト・戦記氏が塾関係者に直撃取材したーー。みんかぶプレミアム特集「中学受験 栄光への最短ルート」第6回。
目次
大学入試で医学部受験を意識するなら、小学生までに何をやらせておきたいか
教育投資ジャーナリストの戦記(@SenkiWork)と申します。「大学入試で医学部受験を意識するなら、小学生までに何をやらせておきたいか」というテーマでみんかぶ編集部より寄稿を依頼されました。
結論から申し上げると、
①医学部受験が現実的な選択肢として視野に入るだけの基礎学力を養うこと
②医学部受験に対して関心を持つような生物学的知己好奇心を養うこと
この2つが重要になると考えます。上記①を具備しなければ医学部受験への挑戦権がありませんし、②が無ければ幾ら高い学力を持っていたとしても、医学部受験への志を持つに至らない可能性があるからです。
以下、首都圏中学受験組の最上位層が集う鉄緑会レギュラコースの空気感を参考にしつつ、論考を進めていきます。
小学生のうちに基礎学力を養うこと…毎年約9000名の枠を争うのが医学部受験
少子高齢化に伴う日本経済の先行き悲観論などを原因に、安定的な収入への期待値の高さや社会的地位の高さから医学部人気が過熱していることは、本稿をお読みの方は既にご存じだと思います。
日本には医学部は国公立大学50校、私立大学31校、防衛医科大学1校の合計82校存在します。医学部の定員はざっくり110名/校ですので、約9000名の枠を争う受験になります。
ここで問題になるのが、国公立大学の学費が約400万円/6年なのに対して、私立大学の学費は相対的に高いことです。具体的には、最も安価な国際医療福祉大学でも1850万円/6年で、私立医学部御三家と称される慶應義塾大学・東京慈恵会医科大学・日本医科大学で約2200万円/6年、そして最も高価な川崎医科大学で4550万円/6年となります。つまり、私立医学部の学費を賄える家庭は、かなり限定されています。
経済的な制約条件から、私立医学部の学費を賄えない家庭からの医学部受験は、国公立大学50校に集中することになります。よって、国公立大学の医学部に合格するには、東大合格レベル(理三を除く)に到達している必要があるというのが、世の中の一般的な認識です。すなわち、富裕層以外の家庭にとっては、医学部受験に挑戦するということは、東大合格レベルの学力に到達する必要があることを意味します。
もうお分かりだと思いますが、中学受験をするのか高校受験にするのかはさておき、小学生時代にある程度の学力を保有しておかないと、東大合格レベルの学力に中学高校の6年間で到達することは、かなり厳しいというのが現実だと考えます。
よって、小学生時代に学力を高めておく、というのが必要条件になると考えます。
小学生のうちに生物学的知己好奇心を養うこと…適性がないのに医学部進学する前に
医師という職業に対して否定的な小学生の一般的な反応は、「血が怖い」とか「人が死ぬのが怖い」といったものだと思います。特に非医師家庭の場合は医師という職業のリアルを子供に伝える機会が少ないことから、最初から関心がないことも多いかと思います。
さて、ここで大事になってくると思われるのが、小学生時代に生物学的な分野への知的好奇心を養っておくことです。「血が怖い」ではなく「なぜ怪我をしたら血が出て、治るのだろうか?」とか、「人が死ぬのが怖い」ではなく「なぜ人は死ぬのだろう、なぜ細胞は老化するのだろう、どうしたら老化を止められるのだろう?」といったクエスチョンマークが浮かぶような思考回路を構築しておくことが、重要だと考えます。
時間軸の観点でも、小学生時代は大事になるでしょう。苛烈な中学受験を経て中高一貫校に入学したら忙しい毎日が待っていますし、高校受験を選択した方でも中学入学からわずか3年後には高校受験ですから忙しい毎日となります。新しく始まる英語や数学への対応に時間が取られ、医学部受験への関心が育たないまま、時間が過ぎてしまうことは多いにあり得ます。