勉強会を多数主催「神戸の敏腕投資家」が語る銘柄選定の“至極ルール”…キーワードは「ストック性の高い不人気銘柄」

本稿で紹介している個別銘柄:霞ヶ関キャピタル(3498)
昨今、兼業投資家の活躍が目覚ましく、“億り人”を達成する人も増えてきている。しかし、8月に起こった令和のブラックマンデー以降、多くの投資家にとって苦しい状況が続いている。そんな中でも、兼業投資家で幾多の投資勉強会を主催してきたキリン@神戸投資勉強会(X:@yudu1105)氏は、「どんな投資手法であっても、焦って変なことさえしなければ、お金はちゃんと増えます」と話す。みんかぶマガジン短期連載「神戸の兼業投資家が教える、負けない兼業投資の秘訣」第2回は、銘柄選定における極意と良質な企業の見極め方について語ってもらった。
目次
購入したら目標株価に達するまで放置
ーーキリン氏の銘柄選定の方法について教えてください。
『四季報』で、その企業の売上が毎年確実に増加しているかを確認しています。利益については投資段階では一時的に減少することもあるため、最近の動向を見て増加傾向にあるかをチェックしています。あと時価総額があまり大きくなく、PERが高すぎない銘柄が好きですね。
例えば、中期経営計画で「3年間で業績が倍になります」と宣言しているPER20倍の企業があったとします。これが実現すればPERは半分になりますよね。ただ、株価が上がらないまま3年後にPERが10倍を切るような状況になれば、途中に株価の上下があれど、さすがに上昇基調になるだろうと予想して購入することが多いです。
購入後の四半期決算で数字をチェックし、芳しくなければ損切りし、順調であれば途中の上げ下げを多少許容しながら保有するようにしています。
ーー本業がある方は、ずっとザラ場を見ていられるわけではないと思うのですが、注文などはどのように発注されているのでしょうか?
銘柄の板状況にもよりますが、頻繁に売買をしないため、まとめて購入して目標株価に達するまで放置することが多いです。売買の細かいタイミングまでは計っていません。リスクヘッジのためにも、段階的に購入するのが理想ではありますが。
ーーちなみに、段階的に購入されるのはどんなときですか?
銘柄に対して半信半疑の際は、数回に分けて購入することが多いです。一度購入してから次の決算を見て判断するという具合です。逆に、一気に購入するのは「しばらくポートフォリオの柱にしよう」と思える銘柄に出合ったときです。
投資すべき銘柄は「霞ヶ関キャピタル」に学ぶ
ーー直近で「この銘柄をポートフォリオの柱にしたい」と思われた銘柄はありましたか?
私のことを知っている方はすでにご存知かと思いますが、最初に挙げるなら霞ヶ関キャピタル(3498)ですね。最初に買ったのが2022年頃で、現在にいたるまでポートフォリオの中で最も多く保有している銘柄です。
ーー選ばれたポイントとは?
私は社長の動画で人となりや言動を見るのが好きなのですが、霞が関キャピタルの社長さんほど、事業のビジョンについて確信を持って話している方は見たことがないんです。また、中期経営計画にある数字も野心的で、かつ達成できそうな具体的な成長戦略を明示してくれているので、個人的に好きな企業です。2023年2月には、私が主宰する神戸投資勉強会にもきていただいて、強烈なインパクトを残して帰られました。
業種が不動産経営であるため、借入が多く、財務体質について指摘されることもあります。また、最近の利上げの影響などのマイナス要素もあり、株価の変動が激しいです。ただし、業績自体はとても順調で、先日の中期経営計画では大幅な増益見通しが示されましたので、今後の推移にも期待しています。
想定外のシナリオになったら「売り」一択
ーーつづいて、売却の際に意識されていることについて教えてください。
自分が予想していたシナリオと異なる展開になった場合や、何かのきっかけで見通しが崩れたときですね。先ほどの霞が関キャピタルの場合、もし社長が辞任することになれば、私は保有している株を全て売却すると思います。
それから保有している銘柄よりも、さらに魅力的な銘柄が見つかった場合でしょうか。現物取引を行っていると、何かを購入するためには何かを売却しなければならないというトレードオフが生じます。つまり、いろいろな銘柄を保有していると、各銘柄への理解度や投資額、信用度などにばらつきがでてしまうのです。そのため欲しい銘柄があれば、優先順位の低い銘柄から順に売却してスイッチングしていきます。
業績を伸ばすだけじゃダメ。成長過程も投資家に示していく企業が理想
ーー神戸投資勉強会を主宰される中で、よいなと感じる企業の特徴はありますか?
企業さんによって、ご参加いただいた回数が違うため一概には言えませんが、こうした会に参加して地道にIRをされている企業さんは、後々評価される傾向にあります。ですが、IRだけでは株価は変わらないのが難しいところではあります。
ーーどういったIRが理想的と言えますか?
IRというのは、まず企業活動が基盤にあって、業績などを誇張せずに正確に伝えることが求められます。表現が難しい部分もありますが、企業が業績を伸ばし、その成長過程も含めて投資家に示していくのが大切なのです。もっと言えば、それを聞いた投資家が「これからも投資したい」と納得できるように伝えることができれば、なおよいですね。
年間約20%成長していた「隠れた優良企業」に注目
ーーこれまでの中で、非常によかったと感じた企業の一例をご紹介いただけますでしょうか?
勉強会に定期的にご参加いただいているプレミアグループ(7199)という、業績が右肩上がりで年間約20%成長している成長企業です。同社は、中期経営計画などで目標の時価総額を提示するなど、投資家に向けたメッセージを積極的に発信していて、業績も伴ってきています。派手さはないですが、ポートフォリオに入れておくと安心感がありますよ。
さらにストック性が高いため、貸借対照表を確認すると順調に成長していることがわかり、投資しやすい企業だと思います。個人的にも好みです。四季報を見てみると、過去4年間で売上と利益がともに約2倍に増えていて好調です。
なお、2017年の上場時には当時の東証2部とあまり人気のない市場に属していて、公募価格割れで上場しました。個人的にそういった人気がなく割安な銘柄が好きでしたので、神戸投資勉強会にきていただく以前から株を保有しています。
株価が乱高下している昨今、ボラティリティの大きさに思わず魅せられてしまいそうになりますが、上記のような株価が堅調に上昇している銘柄に投資をするほうが資産は増えると思いますよ。
〈構成・西脇章太(にげば企画)〉