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サウジ「世界経済のハブ化」の現実…「金融オールスターが集う砂漠のダボス」そして“メッセージゼロ”の日本

「砂漠のダボス会議」と呼ばれる国際投資会議「フューチャー・インベストメント・イニシアチブ(FII)」が、サウジアラビアで29日から31日に開催された。日経新聞の編集委員である小平龍四郎氏は、今年この会議に参加して、「サウジアラビアの野心」が見え隠れしていたと語る。世界長者番付常連も登壇した注目会議を解説していくーー。

目次

「砂漠のダボス会議」もすでに8回目。各国から金融界の大物が参加

 サウジアラビアの首都リヤドで10月29日~31日に開催された「フューチャー・インベストメント・イニシアチブ(FII)」に足を運んだ。政府系組織が主催する国際投資イベントで、第8回となる今年は米欧、アジア、中東から7500人超が集った。「砂漠のダボス会議」の異名も定着してきたようだ。

 ブラックロックのラリー・フィンク、シタデルのケン・グリフィン、HSBCのノエル・クイン、ブラックストーンのスティーブン・シュワルツマン、カーライル・グループのデイビッド・ルーベンシュタイン、スタンダード・チャータードのビル・ウィンターズ、フランクリン・テンプルトンのジェニー・ジョンソン、シティグループのジェーン・フレーザー、ステート・ストリートのロン・オハンリー、モルガン・スタンレーのテッド・ピック、アポロ・グローバル・マネジメントのマーク・ローワン、ゴールドマン・サックスのデービッド・ソロモン……。

いまやサウジアラビアは「金融オールスター」が集う場所

 FII初日の円卓会議には米欧を代表する金融機関や資産運用業トップが顔をそろえた。日本からは三井住友銀行の高島誠会長が参加。世界経済やグローバルな投資の流れ、地政学リスク、AI(人工知能)などテーマは多岐に渡ったが、議論を通じて発せられたメッセージは別のものだ。

 だれもが知る金融の有名人が駆けつけ、会話し、握手して去って行く。その様子がネットやSNSを通じて世界に拡散され、「サウジ=金融オールスターが集う場」のイメージが形成されていく。イランとイスラエルの応酬などが連日報じられる日本にいては理解できない「中東」のまったく違う断面でもある。

世界中の金融人がオイルマネー・ビジネスに注目

 地政学リスクどこ吹く風とばかりに世界中から金融人がサウジに集まるのは、同国でのビジネスチャンスを期待してのことだ。世界有数の同国政府系ファンド、パブリック・インベストメント・ファンド(PIF)は、2兆8000億サウジリヤル(112兆円)強の運用資産のおよそ2割を国外の投資にふり向ける。PIFが株式を保有し、一時は世界一の時価総額を誇った国営石油会社サウジアラムコも代替エネルギー開発の投資を全世界で広げている。こうしたオイルマネー・ビジネスに本格的に関わっていくためにも国家行事に参加し、パイプを太く保っておく必要がある。円卓会議に勢ぞろいした金融オールスターの顔ぶれにはビジネスの計算が色濃くにじむ。

 国を挙げてのオイルマネーの戦略的活用の背景にあるのが、サウジの実力者ムハンマド皇太子が旗振り役となり2016年に策定された「ビジョン2030」。クリーンエネルギー開発や製造業の育成、観光振興などを通じて脱石油依存型の経済を目指す国家計画だ。翌17年から始まったFIIはグローバル金融市場に「変わるサウジ」を訴える目的がある。会議を運営するFIIインスティチュートの最高責任者(CEO)、リチャード・アティアス氏はダボス会議の国際プロデュースにも関わった経験を持つ。FIIの戦略については「23年は12月に香港でもFIIを開催した。いつかは東京でも開きたい」と語る。今後、中国や日本でサウジやFIIの存在感が高まる可能性は大きい。

あのイーロン・マスク氏もFIIに登壇

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この記事の著者
小平龍四郎

1964年生まれ。静岡県出身。早稲田大学第一文学部卒業。日本経済新聞入社後は主に金融・証券畑を歩き、「山一証券破綻」「村上ファンド登場」などの特報にかかわる。欧州総局(ロンドン)やアジア総局(バンコク)を経験し、現在は日経新聞の編集委員。専門は証券市場、ESG/SDGs、企業統治。著書は「グローバルコーポレートガバナンス」「アジア資本主義」「ESGはやわかり」。 Twitter:@Kodaira_Nikkei

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