竹中平蔵、裏金問題のレッテル貼りに憤り「裏金ではなく不記載」…国民民主党の政策は「ほぼ意味ない」そして次の総理2候補実名あげる

衆院選の結果、自公は過半数割れした。経済学者の竹中平蔵氏は「メディアが非公認の元自民候補者たちを『裏金議員』とレッテルを貼ったのはいかがなものか」と憤る。一方で議席数を伸ばした国民民主党について、その政策は「大したことない」と切り捨てる。なぜ大したことないのか。竹中氏が解説するーー。
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非公認の元自民候補者たちを「裏金議員」とレッテルを貼った
衆院選で自民党が敗北しました。誰のせいでここまで負けたのかという戦犯探しをしてもあまり仕方がないのですけども、やはり岸田文雄政権そのものが経済政策において必ずしも成功していない中で、岸田前総理は裏金の問題を白黒つけずに退任したこと。それを引き継いだ石破茂首相が輪をかけていくつかの失敗したこと、その背後で森山裕幹事長が非公認議員側に2000万円支払っていたことなどが重なったのでしょう。
それにしてもメディアは非公認の元自民候補者たちを「裏金議員」とレッテルを貼ったのはいかがなものかとも思います。この問題、そもそも裏金ではなく不記載です。不記載というのは法律会計上では書き直せばいいことになっています。一般人の確定申告でも申告修正というのはいくらでもある話です。それがおかしいと思うなら法律そのものを変えるという議論が本来は必要です。結局は安倍派潰しだったのでしょう。しかし、安倍派を潰そうと思ったら自民党ごと潰れてしまったのです。
改めて、石破首相は準備ができていませんでした。彼が最初に総裁選に出たのは2008年、麻生太郎氏が総理になった時です。それから16年。何度も総裁選に出て2位になったこともありました。総理に近いところにいたはずなのに政策の準備もできていなければ、それを取り巻く人的な準備ができていませんでした。
石破さんはどういうロジックで今も首相を続けているのか
この準備のできてなさはまるで民主党が政権をとった時のようです。振り返ってみると阪神淡路大震災があったのは村山富市首相(自社さ連立政権)の時、東日本大震災があったのは菅直人首相(民主党政権の時)です。私は凄く嫌な予感がしています。今北朝鮮がロシアと組んで、ウクライナ問題が世界的な戦争に変わりました。たしかに石破首相は与党の人間ですが、”自民党内野党”と呼ばれていた人物です。野党ではなくてもポリティカルキャピタルが大きくない人間です。
しかし自ら勝敗ラインを「自公で過半数維持」と設定したのにもかからず石破首相が辞めないのはなぜなのか。とあるメディア関係者との話の中で、「石破さんはどういうロジックで今も首相を続けているのか」という話題になりましたが、結局何のロジックもないのでしょう。
その一方で国民民主党が大きく議席を伸ばしました。ただ、「103万円の壁」の撤廃を掲げていますが、これはほとんど意味がないでしょう。改めて、日本の税制上、給与収入が年間で103万円を超えると所得税が課税されます。また扶養に入っている大学生のアルバイト収入が103万円を超えると場合は扶養から外れます。国民民主党はこの103万円を178万円に拡大しようとしています。しかし、これって今度は「178万円の壁」ができるだけなのです。
所得が多い人ほど減税効果が大きくなる問題
たしかに103万円の壁を動かすことによってメリットを受ける人もいるでしょう。一方で設計を間違えると高額所得者にものすごく有利な制度にもなり得ます。なぜなら所得が多い人ほど減税効果が大きくなる問題が生まれるからです。そもそもですが「財源はどうするのか」という問題が残ります。
政府の試算によると178万円まで引き上げた場合7兆6000億円ほど税収が減るといいます。たしかに、政府の支出はいくらでも見直せます。例えば特別会計を見直すとか。しかしこれには大きな利害が絡んできます。誰かが剛腕を振るえばできるのでしょうが、もしそんな剛腕を振るうならこんな”大したことのない”減税ではなく、もっと抜本的な行政改革をするべきです。社会保障の一体改革とか、国税庁と社会年金機構の統合とか。
たしかに今までこの「103万円の問題」が残っていたことは「変なこと」であり、今までずっと長い間議題にあげられてこなかったことはたしかに不思議です。ですが、「103万円の壁の撤廃」だけでは、「画期的な政策だ」とは全く評価できません。
自民党というより、既存政治全体に対するNO
さて今回の選挙では一つ気になることがありました。比例投票の2割が6大政党(自民党、立憲民主党、日本維新の会、公明党、国民民主党、日本共産党)以外の政党(れいわ新選組、参政党、日本保守党など)に入っていました。今回の選挙でたしかに国民は自民党に対してNOをつきつけました。しかしそれは自民党というより、既存政治全体に対するものだったのではないでしょうか。