選挙勝利で禊は済むのか…斎藤氏県政混乱に玉木氏は不倫でブーメラン直撃「過去にブログで誓った『不倫しない』宣言の空虚さ」

11月17日投開票の兵庫県知事選で、失職後に臨んだ斎藤元彦前知事が約111万票を獲得して2回目の当選を果たした。斎藤氏はパワーハラスメント(パワハラ)疑惑や「おねだり体質」が問題視され、県議会で知事不信任を議決されたものの前回から25万票以上も得票を伸ばした。一方、10月の総選挙で躍進した国民民主党の玉木雄一郎代表は一部週刊誌が報じた元グラビアアイドルとの不倫を「おおむね事実」と認めた。党の代表続投を容認するばかりか、首班指名選挙で同党は「玉木雄一郎を首相に推す」とした。経済アナリストの佐藤健太氏は「パワハラや不倫は許容される、という誤った社会にならなければ良いが・・・」と警鐘を鳴らす。
目次
一体、今までの騒動は何だったのか
「今回の文書問題で、県民に不安を与えたことについて大変申し訳なく思う。選挙戦では『もっと改革して県政を前に進めてほしい』との期待をいただいた。指摘や批判も真摯に受け止め、県職員や県議会、市町の首長とも信頼関係をもう一度構築して県政を前に進めていきたい」。パワハラ疑惑などを告発されてきた斎藤氏は、返り咲きを果たせたことに安堵の表情を見せた。
一体、今までの騒動は何だったのか―。斎藤氏のパワハラ疑惑は、幹部職員だった元西播磨県民局長が告発する文書を報道機関に送ったのが発端だ。斎藤氏は告発者の特定などのため内部調査を指示し、県幹部が告発職員のメール送受信記録を調べたり、事情聴取をしたりした。「ウソ八百」と告発内容を強い表現で否定し、4月の会見では「公益内部通報制度では受理していない。公益通報には該当しない」と述べている。
元県民局長は懲戒された後に命を絶った。斎藤氏は処分について「適切だった」と繰り返してきたが、県議会の調査特別委員会(百条委員会)で追及され、全議員が辞職を求める異常事態となった。百条委が県職員を対象に実施したアンケートの結果を見ると、斎藤氏によるパワハラを「目撃などにより実際に知っている」と回答したのは59人、「実際に知っている人から聞いた」は466人、「人づてに聞いた」は1225人に上った。
予算権や人事権を持つ県のトップが追及された9月6日の百条委員会には、斎藤氏の最側近だった片山安孝元副知事が出席し、「知事から(内部告発者を)徹底的に調べると言われたので行為者を探さないといけないと思った」などと説明している。片山氏は県の公益通報の担当だった。
有権者は「疑惑」よりも政策や改革姿勢を選んだ
サイドテーブル、レゴブロック、靴、ネクタイ、浴衣、ユニフォーム、牡蠣、枝豆、カニ、タマネギ、ケーキ・・・。百条委で斎藤氏は数々の贈答品を受け取っていたことを委員から厳しく問われ、「いただいたことはある」「貸与していただいている」「知事応接室で使っている」などと答えた。こうした経過を経て、県議会は9月19日に斎藤氏に対する不信任決議を全会一致で可決している。
斎藤氏が公益通報制度を踏まえず、元県民局長を「ウソ八百」と批判した上で犯人探しや懲戒処分を加速させたのは問題だろう。数々の贈答品を受け取っていたことも自らが認めている。だが、11月17日投開票の知事選で共同通信社が実施した出口調査を見ると、投票で「疑惑告発文書問題」を重視したとの回答は9%にとどまった。60代以下の全年代で他の候補を上回る支持を得ている。投票率が3年前の前回知事選に比べ14ポイント高くなったことを踏まえれば、有権者は「疑惑」よりも政策や改革姿勢を選んだことになるのだろう。
ただ、1つ言いたいのは「パワハラが許容される世の中であってはならない」ということだ。知事再選後の兵庫県議会は、これまでの対決姿勢は何だったのかと思うような態度に県議たちは変わるはずだ。斎藤氏も「最新の民意」を背景に県政運営に自信を深め、県議会での疑惑の真相解明は遠ざかる。つまり、パワハラ行為の有無は今回の選挙結果によって「不問」となる見込みだ。
選挙で勝利すれば「禊」は済んだのか
筆者は、そこに一抹の不安を覚える。真相解明が進まない斎藤氏のケースを除外するとしても、仮にパワハラ行為やセクハラ行為などの疑惑が浮上した政治家が選挙で勝利すれば、「禊」が済んだとばかりに許容されるのは不可解だからだ。あくまでも選挙では政治的に勝ったに過ぎず、有権者から高い支持を得たとしても別問題と見るべき話のはずだ。