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「大戦犯だ」斎藤前知事「奇跡の大逆転」決定づけた「机叩き動画」相生市長に止まぬ批判…本当にSNS嘘情報のせい?稲村氏敗因3つのポイント

 11月17日投開票の兵庫県知事選で、パワハラ疑惑などをめぐり知事不信任決議を議決された斎藤元彦氏が返り咲きを果たした。序盤の劣勢を挽回した斎藤氏には「SNSの拡散で追い風が吹いた」「新聞・テレビというオールドメディアの報道に有権者が嫌気をさした」といった分析がなされている。ただ、もう1つ注目すべきなのは急失速した元尼崎市長・稲村和美氏の敗因だ。SNSを活用した選挙戦略に定評がある選挙プランナーの佐藤健太氏は「斎藤氏をパワハラ疑惑などで追及する時に、ある市長が机をドンと威嚇するように叩く動画が拡散された。支援の輪が結果としてマイナスに働いた面は否めない」と指摘する。その市長は同県相生市長・谷口芳紀氏で、SNSでは「大戦犯でしょう」などと批判の声があがった。谷口氏はその後、その振る舞いについて「大変な不愉快な思いをさせてしまった」謝罪したが、選挙にはどれほどの影響があったのか。佐藤氏が解説するーー。

目次

稲村氏の「選挙手法」のミス

「斎藤候補と争ったというより、何と向かい合っているのかなという違和感があったのは事実です」。落選した稲村氏は、SNS上で真贋が入り交じった情報が激しく交錯した異例の選挙戦をこのように振り返った。

 投票箱のフタを開けてみれば、再選を果たした斎藤氏に約14万票差をつけられての敗北。しかも、相手は県議会で知事不信任決議を議決された人物だ。斎藤氏の勝因については様々な分析がなされているが、逆に稲村氏の敗因は何だったのか。そのポイントは大きく3つあるが、どれも稲村陣営は裏目に出てしまったと言える。

 1つ目のポイントは、稲村氏の「選挙手法」のミスだ。今回の知事選で稲村氏は政党や組織に頼らず、学生チームがSNS戦略に携わり、一人ひとりの有志の力を結集して挑戦するとした。政党色を薄めながら兵庫県政の混乱に終止符を打つと訴えたものの、自民党や公明党、立憲民主党の県議らが支援に回り、投開票日の3日前には県内29市長でつくる市長会の有志22人が記者会見を開いて稲村氏の支持を表明した。

 知事選や国政選挙などの立候補予定者に対して、自治体の首長らが出馬要請や支援表明することは何ら珍しいことではない。政策や政治信条などが近い、あるいは対立候補に勝ってもらいたくない場合には多くの首長選や国政選挙で見られているものだ。地元に限らず、選挙区外の候補者の応援演説をすることもある。

 ただ、選挙期間中に22人もの市長が連名で特定候補の支持を明らかにするのは異例と言える。しかも、11月14日に県庁で開かれた会見はあまりに酷いものだったのだ。県政の混乱は県民を不幸にする、県を立て直す知事として稲村氏には資質がある―といった主張はともかく、一部の市長がいきなり激高する場面がみられた。

集まった記者の面前で机を激しくドン

 相生市長の谷口芳紀氏は斎藤氏に関し「私は少なくとも県知事として資格がないんじゃないかと思っております」と述べると、集まった記者の面前で机を激しくドンと叩いた。その様子に周囲が驚いていると、「何が悪い!以上です」と威嚇するように声を荒げたのだ。もともとは斎藤氏の再選阻止を目的に稲村氏支持を表明したのだろうが、この威圧的言動の模様はネット上で拡散されることになった。

 選挙後、谷口氏はその後、その振る舞いについて「大変な不愉快な思いをさせてしまった」謝罪したが、稲村氏にとっては追い風どころか、投開票直前というタイミングで一気に逆風を受けたところだろう。今回の県知事選は、幹部職員だった元西播磨県民局長が斎藤知事の「パワハラ」疑惑などを報道機関に“告発”したことに端を発する。斎藤氏は県議会の調査特別委員会(百条委員会)で追及され、全県議が辞任を求めた。知事不信任決議の議決を経て斎藤氏は失職し、出直し知事選にいたる。

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この記事の著者
佐藤健太

ライフプランのFP相談サービス『マネーセージ』(https://moneysage.jp)執行役員(CMO)。心理カウンセラー・デジタル×教育アナリスト。社会問題から政治・経済まで幅広いテーマでソーシャルリスニングも用いた分析を行い、各種コンサルティングも担う。様々なメディアでコラムニストとしても活躍している

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