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トランプ政権でESG投資ブームが“終了”か…証券会社営業マンのセールストークに使いまわされた末路

 環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の3つの要素に配慮した経営を行う企業に投資する「ESG投資」に注目が集まっている。世界全体の資産残高は2020年時点で35兆米ドルとなり、2016年から55%増加。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、より意識されるようになったが、トランプ大統領がふたたび誕生することによって、向かい風が吹き始めている事実もある。日経新聞の編集委員である小平龍四郎氏が、ESG投資をめぐる海外の動きを解説するーー。

目次

「米国ではESG投資が禁止される」そんな噂が出始めている

 トランプ次期米大統領は上下院ともに共和党が多数派をなす議会の力も借り、1期目よりもやりたい放題になると予想する声が多い。多くの分野でバイデン政権下で進んだ政策のちゃぶ台返しが見られそうだ。資本市場で一世を風靡した感もあった「ESG投資」も風前のともしびである。

 投資に脱炭素や人権などの問題を関連づける考えは、共和党筋から「Woke(意識が高い)」と攻撃され、民主党的エリート主義の産物と見なされるからだ。すでに共和党の強い「赤い州」では、年金運用の受託などでESGが禁句になりつつあった。トランプ時代にはさらにその傾向が強まるだろう。「米国ではESG投資を法律で禁止される」という観測まで浮上している。

「投資が細ることはない」トランプ大統領誕生でも動じないサウジアラビア

 「トランプ2.0」の時代。ESGはこのまま消えるのか。しかし、米国の外に目を転じれば新しい潮流も見えてくる。米大統領選を目前に控えた10月末。サウジアラビアのリヤドで「砂漠のダボス会議」とも称される国際会議「FII」(フューチャー・インベストント・イニシアチブ)に出席した。総出席者は約8500人。米ウォール街は英シティー・オブ・ロンドンの重鎮たちが競って集まる様子は、前回の当コラムで報告した。そこでの議論は世界経済やAIなど最先端のテーマが多かったが、「脱炭素」や「サステナビリティ」も負けず劣らず、出席者の関心を集めた。

「私たちは世界中から技術を探す」。同国サウジアラムコの上級副社長、アハマド・アルコウェイター氏は会期中の朝食会の席上、代替エネルギーや二酸化炭素(CO2)の回収・分離、燃料電池などの分野に幅広く投資を続ける方針を高らかに宣言した。筆者は朝食会で同席したアラムコ関係者とおぼしき人物に「トランプ大統領が誕生したら投資に影響を受けるか」と聞いたところ、「投資が細ることはない」と断言された。

シンガポールのイベントでも主要テーマは「ESG」

「トランプ2.0」といっても最長で4年。一方、石油依存の経済構造を変えるというサウジの国是は「ビジョン2030」という計画名が示すとおり、それを超える。「サステナビリティー/ESG2.0」という言葉を聞いたのも、砂漠のダボスに集った米系投資家の口からだ。

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この記事の著者
小平龍四郎

1964年生まれ。静岡県出身。早稲田大学第一文学部卒業。日本経済新聞入社後は主に金融・証券畑を歩き、「山一証券破綻」「村上ファンド登場」などの特報にかかわる。欧州総局(ロンドン)やアジア総局(バンコク)を経験し、現在は日経新聞の編集委員。専門は証券市場、ESG/SDGs、企業統治。著書は「グローバルコーポレートガバナンス」「アジア資本主義」「ESGはやわかり」。 Twitter:@Kodaira_Nikkei

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