斎藤知事めぐり相次ぐ告発!N国・立花党首は弁護士らを「虚偽告訴」…全てのはじまりPR会社代表「実績アピールnote」の重すぎる代償

11月の兵庫県知事選で再選を果たした斎藤元彦知事の周囲が“カオス”になっている。斎藤氏と選挙を支援したPR会社の社長は公職選挙法違反の容疑で告発される事態となったが、今度は告発そのものが「虚偽告訴」と主張する人物が現われたのだ。斎藤氏の選挙運動収支報告書はPR会社への支払い額が一部未記載と報じられたが、知事サイドは「問題ない」と説明する。経済アナリストの佐藤健太氏は「もはや何が本当なのかわからない異常事態。選挙戦略の“暴露の代償”は決して安くない」と見る。
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全ての始まりとなった、実績アピールnote
発端は、11月17日投開票の知事選で斎藤氏を支援したPR会社の女性社長が投稿サイト「note」において自らの“実績”をアピールしたことだった。この社長が「広報全般を任された」としたため、主体的に運用戦略立案などを担っていれば公選法違反ではないかとの声が挙がったのだ。
斎藤氏の代理人弁護士は11月27日の記者会見で「『note』に記載されているようなSNS戦略を依頼したという事実はない」と説明。斎藤氏も「公選法に違反していない」と繰り返している。要するに、斎藤氏サイドは女性社長が「勝手に『盛った』ことを言っているだけ」という姿勢だ。
斎藤知事は9月末にPR会社の事務所を訪問し、ポスター制作費などに計71万5000円を支払ったという。ただ、12月3日公表された「選挙運動費用収支報告書」には、このうち「公約スライド制作」約30万円に関する記載はなく、40万円弱の支払先も「さいとう元彦後援会」となっていた。斎藤氏側はPR会社が後援会宛に請求してきたことなどを理由にあげ、「問題なし」と説明している。
こうした状況を受けて神戸学院大の上脇博之教授と元検事の郷原信郎弁護士は、公選法違反(買収と被買収)の疑いがあるとして12月1日付で斎藤知事と女性社長に対する告発状を神戸地検などに送付した。
これに対し、「NHKから国民を守る党」の立花孝志党首は同月3日の「X」(旧ツイッター)に「これは郷原弁護士による完全な虚偽告訴罪だと思料します!よって本日、郷原弁護士を被告発人、立花孝志と石丸幸人弁護士を告発人とする、刑事告発状を東京地検と麻布警察署に郵送します!」と投稿。立花氏は「(郷原氏は)やりすぎ。メディアと郷原氏が結託して斎藤さんをいじめている」などと主張している。
何が真実で、これからどうなるのかわからず
もはや一般人には何が真実で、これからどうなるのかわからず今の状況はカオスと言えるだろう。ただ、兵庫県議会の調査特別委員会(百条委員会)や斎藤知事に関するメディアの報道量は一気に減ってきたようで、斎藤知事をめぐる一連の騒ぎは一体何だったのかと感じる人は少なくない。筆者も「捜査当局や裁判の行方を見守っていれば、もう良くない?」と苛立ちのような感覚を抱く1人だ。
ただ、今回のケースで腑に落ちないのは、なぜPR会社の女性社長が「広報全般を任された」などとアピールしたのかという点である。このPR会社は広島や高知などでSNSを活用したプロモーションや運用支援などを担っている「PRのプロ」だ。同社のホームページを見ると、事業内容として「広報・PRコンサルティング事業」「ブランディング事業」などの他に、「写真・動画撮影」「デザイン制作」などの記載がある。
サイトには会社情報やサービスの一覧があるが、具体的な事例や実績などは記載されていない。女性社長はSNSで存在感を発揮してきたものの、なぜ斎藤氏の知事選において「広報全般を任された」などとアピールしたのかわからないのだ。斎藤氏側の説明によれば、ポスター制作などは「口頭契約」だったといい、選挙の支援は社長個人がボランティアで参加していたという。それでも知事選では選挙カーの上に乗り、スマホを手にSNS配信に協力していたというわけだ。
女性社長の「広報全般を任された」という点
女性社長の「広報全般を任された」という点については、斎藤氏の代理人弁護士が指摘したように「盛った」という可能性があるのかもしれない。だが、そうであれば斎藤氏にとっては、とんだ「自己アピール」をされたことになる。
斎藤氏サイドは女性社長の「実績」を強調するSNS投稿をチェックしていなかったというが、少なくともポスター制作費など70万円超を支払った「クライアント」だ。そのオフィス訪問やイメージのあり方など、選挙戦略の“暴露”につながり得ることを明かす行為は「PRのプロ」としてどうなのか。
それが選挙であれ、政治活動であれ、「裏方」である人物が自身や会社の「実績」をアピールすることは従来であれば考えられないものだ。最近はSNS戦略に長けた選挙が注目されているが、「私がやった」「うちの会社で引き受けた」というものは見かけない。あくまでも“守秘義務”を弁えた上で、クライアントの許可を得たものだけをセールスポイントにするのではないか。