プロ野球の観客動員が過去最多!なぜ中日、楽天、オリックスも増加?日ハムは…NPBのSNS規制で変わる野球観戦

 NPB(日本野球機構)によると、2024年シーズンの入場者数は2668万1715人で過去最多を更新したという。その理由と今後の行方について、ライターの小林英介氏がレポートするーー。

目次

2024シーズンは2668万1715人で過去最多

 NPB(日本野球機構)は10月、2024年シーズンの観客数を発表した。今季のセ・パ公式戦入場者数は2668万1715人となり、新型コロナウイルスの感染が拡大する前となる2019年の2653万6962人を上回って過去最多となった。内訳ではセ・リーグが1461万7824人、パ・リーグが1206万3891人。試合数はそれぞれ429試合で、1試合平均はセ・リーグが3万4074人、パ・リーグが2万8121人だった。観客数はセ・リーグがパ・リーグを255万3933人、1試合平均もセ・リーグが5953人それぞれ上回る結果となった。

 球団別では阪神が300万9693人で最多。次いで巨人が282万5761人、福岡ソフトバンクが272万6058人と続いた。1試合平均人数は阪神が4万1801人で、両リーグ唯一で4万人以上を記録した。

 2023年5月、厚生労働省は新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけを、新型インフルエンザなどと同じ2類相当から5類に変更。それも相まって、日常の生活が戻ってきたことも大きく関係していると筆者は見ている。 

新型コロナ感染拡大でオープン戦は無観客試合、開幕も延期

 今からさかのぼること約5年前の2020年、中国の武漢が発祥とされる新型コロナウイルスが世界的な流行を見せ、2月1日からキャンプに入った球界にも影響が及んだ。まずは一部球団が応援でのジェット風船使用やファンサービスの自粛を発表。開幕前のオープン戦でも、観客を入れない「無観客試合」を実施し、テレビ画面には、観客が誰もいない中でプレーする選手たちが写っていた。今考えれば、異様な光景だったといえるだろう。

 2月末に開いた12球団の臨時代表者会議では、以後のオープン戦72試合を無観客開催するとし、翌月の臨時代表者会議では3月20日に予定していたプロ野球の開幕を延期すると決定。決定は専門家からの「(プロ野球開幕は)延期が望ましい」との提言を受けての決断だった。その後には練習試合を休止。プロ野球の開幕日は先送りされ、試合数の削減も検討されるとともに、オールスターゲームの史上初の中止を決めた。 

「新型コロナウイルス感染症については(略)全国的かつ急速なまん延による国民生活および国民経済に甚大な影響を及ぼすおそれがある事態が発生したと判断し、緊急事態宣言を発出いたします」

「緊急事態宣言」解除後の6月に開幕も、少しずつ観客数は回復

 2020年4月7日、安倍晋三内閣総理大臣(当時)は、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、大阪府、兵庫県、福岡県の7都府県に緊急事態宣言を発令。4月16日には対象を全国に拡大し、外出自粛のほか感染予防対策の徹底を呼びかけた。

 こうなれば、本格的に試合を開催している場合ではないのは明白。当時、「自粛警察」なるものも現れ、自粛を破ろうものなら批判が殺到する事態にまで発展することもあり、さらに先行きも見通せなかった。開幕先送りの判断は賢明だったといえるだろう。緊急事態宣言は5月末、全国で解除。それを受けて6月19日にプロ野球が開幕することが決定した。3月20日から3か月余り。ようやく開幕へとこぎつけた。

  プロ野球が開幕したのはいいが、「特例事項」という制限がついた中でのシーズンとなった。主な特例事項は以下の通り。

  • レギュラーシーズンは各リーグごとの6球団24回戦総当たり。各球団の試合数は120試合
  • 延長は10回まで。なお同点の場合は引き分け試合
  • 出場選手登録は1球団31名まででベンチ入りは26名まで(そのうち外国人選手は出場選手登録5名以内、ベンチ入りは4名以内)

 シーズン途中からは観客を入れて試合が再開されたこともあったが、観客数の制限を設けていたことも影響し、2020年シーズンの観客数は482万3578人だった。新型コロナウイルスの感染が減少し、観客の入場制限や声出し応援が解禁されるにつれ、21年に784万773人、22年2107万1180人、23年2507万169人と観客数は少しずつ回復し、2024年シーズンでコロナ禍前の水準となった。

今シーズン好調チームのそれぞれの背景、地元選手獲得に社長交代も

 2024年シーズンのうち、中日は3年連続最下位となり立浪和義監督が辞任。新監督として井上一樹監督が就任する。しかし、2023年シーズンと今シーズンの中日主催試合の入場者数差は15万5000人あまりで、セ・リーグ最多。入場者数は233万9541人で、2008年以来16年ぶりに230万人を突破した。

 背景には、愛知・名古屋が関係しているとの見方もある。根尾昂投手(岐阜県出身)、髙橋宏斗投手(中京大中京高校出身)、石川昂弥内野手(東邦高校出身)など、中部圏にゆかりのある人気選手がいる。若い選手も多く試合に出ており、根っからのドラゴンズファンがそれらの選手たちを長く応援することもまた、多くの入場者数を記録する要因になっているとの考えもあるのだ。

 2023年シーズンと比べた入場者数が約28万3000人ほど増え、増加数ではセパ両リーグを通じて最多となった楽天。昨シーズンの観客動員数は135万8512人で、12球団で最少となるシーズンとなった。昨年8月には新社長に森井誠之氏(元プロバスケットボールチーム「仙台89ERS会長)が就任し、「顔が見える」をコンセプトとして様々な人々が関わりあっていく球団を作り上げている途中。来シーズン以降はどのような集客方法を採用するのかに注目していきたい。

オリックスは期待値で?エスコンは再開発への期待

 昨シーズンに3連覇を達成したオリックスだったが、今シーズンはけが人や得点力不足に悩まされ、Bクラスとなる5位に沈んだ。一方で観客数はパ・リーグで2位となる214万9202人を記録した。6月下旬には球団史上最速となる観客動員数100万人を達成し、9月中旬には球団史上初となるシーズン入場者数200万人を突破した。これはあくまでも筆者の推察だが、4連覇を願うオリックスファンの願いが、ファンを突き動かしたのだろうと考える。シーズン開幕前の宮崎キャンプでの観客数は約24万7000人で、昨年の約20万人を上回っている。コロナ禍が終わりを告げ、少しずつではあるが日常が戻ってきている証左だろう。

 観客動員数でパ・リーグ3位となった北海道日本ハムファイターズ。今シーズンは207万5734人の観客数で、昨シーズンよりも約19万3000人増えた。シーズンはリーグ2位の成績で、圧倒的な成績を残した首位のソフトバンクに及ばなかったものの、クライマックスシリーズファーストステージではリーグ3位の千葉ロッテマリーンズに競り勝つ底力を見せた。

 日本ハムの観客動員が200万人を超えたのは2017年の208万6410人以来7年ぶり。新庄剛志監督の采配なども相まって、選手たちは明らかに見違えるほどのプレーを見せていた。日本ハムが本拠地とする「エスコンフィールド北海道」がある北海道北広島市では、来年春に商業施設「トナリエ北広島」が開業を予定。JR北広島駅前にも広場を整備する見通しで、北広島のまちづくりはさらに進みそうだ。

来年2月から始まる「SNS規制」、純粋に野球を楽しむきっかけに

 SNSを通じて野球を楽しんでいる野球ファンにとっては、大きな話題だろう。「キャンプイン」となる来年2月からは、NPBが「写真・動画等の撮影及び配信・送信規程」を施行。ボールインプレー中で選手の写真などをSNSで配信することを禁止するなどとしている。

 この措置に対しては批判もあるが、SNSという便利なものを使っている反面、筆者はいわれもない誹謗中傷などの被害が相次いでいることも大きく関係していると推察する。誰もがスマートフォンを持ち、自らが情報を発信できるようになった。しかしどうだろう。筆者は、そもそも野球の試合中に、あまりスマートフォンで撮影することはしない。選手たちのワンプレーに集中し、スマートフォンを操作している暇はあまりないと感じている。

 これはあくまでも邪推だがこれを機に、野球ファンは選手たちのプレーを単純に楽しみ、色々なことがあっても「それも野球」と割り切って楽しむくらい、気軽に楽しむ姿勢が必要になってくるはずだろう。

 何はともあれ、入場者数はコロナ禍前の水準に戻ったばかり。これから、さらにどれくらいの収益を伸ばし、入場者数を増やし続けられるのかを注視していきたい。

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この記事の著者
小林英介

1996年北海道滝川市生まれ、札幌市在住。ライター・記者。北海道を中心として、社会問題や企業・団体等の不祥事、交通問題、ビジネスなどについて取材。阪神タイガースをこよなく愛しており、体は酒でできている。「酒はライフラインだ」を合言葉に、道内や東京などで居酒屋めぐりをするのがライフワーク。

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