社会保険料の滞納14万件、倒産も爆増中「本人負担を隠す政府の『増税』トリック」あまりの理不尽に税理士が激怒…106万円の壁撤廃の恐怖

帝国データバンクによると、社会保険料や税金など、「公租公課」の滞納が要因となった企業の倒産が増加している。「倒産は、2020~2023年度の4年間で334件判明した。このうち、2023年度は138件となり、全体の41.3%を占めた」という。海外では給与税ともいわれる初回保険料だがなぜ、そこまで会社や経営者を苦しめているのか。作家で経済誌プレジデントの元編集長・小倉健一氏が解説するーー。
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海外では「給与税(payroll tax)」と呼ばれるワケ
社会保険料とは、会社で働く人のための仕組みだ。保険という名前がついているが、実際には税金、もしくは税金に極めて近い性質を持つ。海外では「給与税(payroll tax)」と呼ばれることが多い。病気やけが、老後のための資金を賄う仕組みだが、この保険料が会社の経営を圧迫する大きな要因となっている。
分かりやすい例を挙げる。社会保険料(介護保険を含む健康保険および厚生年金)は労使折半で、給与額面の約30%を負担する仕組みだ。月給20万円で通勤代が1万円の会社員の場合、会社はこれに加え約15%の会社負担分を支払い、合計で約24万4500円の人件費が発生する。一方、本人は約15%の保険料を負担するため、手取りは約17万8500円に減少する。ここからさらに雇用保険料、所得税、住民税が引かれるため、手取りはさらに減る。
ボーナスにも同じく保険料がかかるため、会社は簡単に給料を上げることが難しい。年収500万円の例では、会社は人件費として575万円(給料500万円+会社負担分75万円)を支払うが、働く人の手取りは社会保険料75万円、所得税14万円、住民税などが差し引かれ400万円に届かない。この実質的な税金の負担は、会社にとって非常に重い問題となっている。
会社の経営者たちは、この問題に対して強い懸念を示している。ある経営者は「34万9000円の人件費(会社負担の社会保険料込み)を支払っても、働く人の手取りは22万円にしかならない。給与税のような保険料が高すぎる」とX(旧Twitter)で切実に訴えている。
特に問題なのは、社員が増えれば増えるほど保険料(しつこいようだが、実質的な税金)も増加することである。現在、「106万円の壁」と呼ばれる社会保険の加入基準が撤廃されようとしている。
手取りをやっぱり減らそうとする政府
これにより、これまで社会保険の加入対象外だったパートタイム労働者にも保険料が課されるようになり、本人の手取りが減少するだけでなく、会社の負担が突発的にさらに増加することが懸念される。