絶対家へ帰れない少女に「あなたの家泊めて?」と言われたらどうするべきか…「お母さんに刺されそうになった」18歳トー横キッズ

歌舞伎町「TOHOシネマズ」周辺に溜まる少年・少女たちが「トー横キッズ」と呼ばれ始めたのは2019年のことだった。以来、未成年による援助交際、暴行行為、オーバードーズなど、犯罪の温床として度々メディアに取り上げられるようになった。しかし、問題はいまだ解決していない。「トー横キッズ」の現地取材を続けるライター・ツマミ具依がその実態を届ける。第1回は「トー横キッズと警察のいびつな関係性」について――。
目次
補導されるトー横キッズが減ったワケ
「あのー、“私服”ですか?」
私がトー横に顔を出すようになった当初、トー横キッズに何度も言われたセリフ。“私服”とは、私服警官のことだ。

トー横キッズが溜まる歌舞伎町の「シネシティ広場」
「警察って、警察か聞かれたら正直に答えなきゃいけないんだって。だから聞いてるの」
トー横に通う未成年は、警察の存在を常に警戒している。中高生が警察を「私服」と俗称で呼ぶのは異様であるが、共通の言葉を使いこなす連帯感も感じる。
警視庁少年育成課の発表によると、2024年1月~11月にトー横周辺で補導された少年・少女は725人で、同期比138人減となった。人数が減ったのは、単純にトー横キッズの全体数が減少しているだけとはいいがたい。
「今日、一斉補導があるらしいから気を付けて」
彼らが常日頃から気にしているのが、一斉補導だ。無論、一斉補導が警察から事前に告知されることはない。だが、警察が普段より多数目撃されたり、過去の傾向から予想がついたりすると、お互いに注意を呼びかけあったり、SNSで情報が流れたりする。繰り返されている一斉補導は、いまや情報戦なのだ。
6人の私服警察が女子を取り囲み…
12月7日の一斉補導もそうだった。22時、セブンイレブン新宿東宝ビル店前には30人ほどのトー横キッズが集まっていたが、徐々に人が減っていく。自宅に帰る人や仲間の家に泊まる人は駅へ向かい、ホテル暮らしをする人は宿に戻った。そして23時には未成年の姿はなくなり、10人程度の成人組だけが残った。

22時には人だかりができていた

23時には人だかりは消えていた
23時過ぎ、複数人の私服警官がトー横に現れ、地雷系ファッションの女子に声をかけた。6人の私服警察が女子を取り囲み、それだけで威圧感がある。「わたし未成年じゃないんだけど」と19歳の女子は不満げにいう。身分証を見せて持ち物検査に従うが、それでも警察は引き下がらず、親に連絡を入れさせていた。
「おつかれー」
警察が去って女子が輪に戻ると、仲間がねぎらいの言葉をかけた。そんな傍ら、別の仲間が「私服、あっちにもいるよ」と情報共有をしていた。警察という共通の敵がいることは、仲間意識を高める種となっていることを感じた。
補導によって状況が好転した人も、少なからずいると信じたい。しかし、そんなケースは共有されることはなく、ただただ警察ヘイトの感情が広がっている。
一斉補導とともに報じられるのが、未成年誘拐の疑いで逮捕される大人たちだ。夏のある日、私も危ういことがあった。
未成年を家に泊めてほしいと言われて
「今新宿駅にいるんだけど、ナナ(仮名・15歳)が終電逃しちゃって。こっち来てくれない?」
23時頃、焦った口調でLINE通話をかけてきたのは、タクヤ(仮名・20代前半)だ。言われた通り、私はトー横からJRの改札付近へ駆け足で移動すると、立ちすくむナナとタクヤを見つけた。タクヤはスカイブルーのジャージ、ナナはピンクのドンペンサンダルを履き、家路を急ぐ大人の中で二人は遠目でも目立っている。ツインテールのナナは、身長が140㎝ほどしかなく、見るからに子供だ。
「このまま俺と2人でいると、明らかにヤバいから」
傍から見れば誘拐と疑われる状況だ。女性の私がくることで、その疑惑は多少緩和されるだろう。親との関係に悩むナナは「どうしたらいいかわかんない」とうずくまる。タクヤは事の経緯を説明しながら、私にこう話した。
「ナナ、親には友達の家に泊まるって言ってあるんだって。『勝手にして』って親に言われてて、明日の朝にはすぐ帰るし、捜索願い出されるってことはまずないから」
それって……。