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“何か隠したいことがある”から結ぶ守秘義務条項「中居正広トラブル」に弁護士が告白「誰も守らない実態」日本の闇

(c) AdobeStock

 中居正広氏の騒動に関連し、守秘義務の意義について議論が起きている。守秘義務条項は、当事者間の示談において秘密を守るための重要な取り決めである。ただし、この条項の効果は限定的であり、被害者が家族や友人、職場の関係者などに話す場合、それを防ぐことはできない。実際、周囲の人々には守秘義務が適用されないため、情報の漏洩を完全に防ぐことは難しい。一方で、当事者本人が情報を口外しないことには一定の意義がある。本人が守秘することで、名誉やプライバシーを大きく損なう事態を避けやすくなるからである。

 今回の事件においても、示談の一環として守秘義務条項が交わされたことで、具体的なトラブルの内容は公表されていない。この守秘義務は、当事者の人権やプライバシーを守る重要な役割を果たしている。ただし、守秘義務が情報を隠すための「隠れみの」として使われるべきではない。守秘義務が存在する中でも、社会にとって必要な情報を公開し、真実を解明する努力が求められる。

 今回のケースでは、守秘義務が法的な制約となり、中居正広氏自身が発信を控える状況が続いていた。示談が成立しても、守秘義務の調整が完了しない限り、具体的な説明をすることは難しい。結果として、引退という選択が守秘義務を遵守しつつ、これ以上の混乱を避けるための結論であったと推測される。守秘義務条項は、人権を守るために重要である一方で、情報の透明性や真実の解明を妨げる側面もある。

 この条項が適切に運用されるためには、単なる秘密保持だけでなく、当事者間や社会における公平性や正当性を考慮した対応が求められる。中小企業を中心に数多くの顧問先を抱えコンプライアンス案件などについてもアドバイスする城南中央法律事務所(東京都大田区)の野澤隆弁護士に、本件の見解を伺った。(聞き手は小倉健一)

目次

そもそも守秘義務ってどういう意味?

――報道では「和解」の条件に「守秘義務」があった旨の話がたびたび出ていますが、これらはどういった意味なのでしょうか。まずは、契約の基本的なことに中心にご説明ください。

(野澤隆弁護士)

 契約自由の原則という考え方があります。この原則は、契約を結ぶ人たちが話し合いによって、どのような内容の契約でも自由に決められるというものです。

典型契約のどれにも該当しない特殊な契約

 とはいえ、民法という法律が、契約の内容を分かりやすくするため、また、争いが起きたときに問題を整理しやすくするために、契約の基本的な類型を13個設けています。この13個は、贈与、売買、賃貸借、雇用、委任、請負、組合といった身近な契約が中心です。

 例えば、「売買」は物やサービスをお金と交換する契約、「賃貸借」は家や車などを貸し借りするために結ぶ契約といった感じです。トラブルが起きた場合、裁判所は問題をこの13個のどれかに当てはめ解決を図ろうとします。問題がシンプルな場合、裁判所もすぐに適切な契約類型を見つけ判断を下すことができます。

 しかし、業務委託契約のように、「雇用」に近いのか、それとも「請負」に近いのかの判断が難しいケースもあります。「雇用」とは働く人と勤務先が結ぶ契約で、給料とそれに見合った仕事内容が取り決められます。「請負」とは、建設工事やソフトウェア開発業務のように、仕事を完成させた上でお金と引き換えに出来上がった建物やデータを引き渡すことを目的とした契約のことです。

 このような解釈が難しい契約の場合、裁判所も簡単に結論を出すことができません。また、フランチャイズ契約のように複数の契約内容が混ざり合っている場合、条項同士の論理関係や優先関係などをよく点検しないと結論が出ないことも多く、そもそも13種類の典型契約に該当しない場合、解釈はその人次第となり、結論を導くことはより一層難しくなります。

 今回の「守秘義務契約」は、13種類の典型契約のどれにも該当しない特殊な契約、いわゆる非典型契約です。守秘義務契約とは、「事件の秘密などを第三者に漏らさない」という約束をする契約であり、それなりの会社に勤務しているとよく見かける秘密保持契約と同じカテゴリーに位置付けられます。

 なお、家庭内のDV事件や不倫問題で、「今後は一切連絡を取らない」、「二度と近づかない」といった接触禁止条項がよく出てきますが、これも「破られたらどうする」につきかなりの検討が必要な非典型契約の一種です。

――「和解」とは何を意味していますか。「守秘義務」につきもう少しご説明ください。

和解の中核は「お金を中心とした事項について、これ以上の文句をお互い言わない」と推察

(野澤隆弁護士)

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