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ホンダ関係者「別に日産の技術はいらない」…日産、リストラ策強化報道「感情的決裂は両社に痛手」単独では将来描けず次のパートナー探し

(c) AdobeStock

 ホンダと日産自動車の経営統合が「白紙」となった。昨年末の基本合意から1カ月あまりでの打ち切りは「1+1=2」とはならない深い溝を感じさせる。なぜ協議は破談となったのか。そして、日本の自動車産業はどうなるのか。経済アナリストの佐藤健太氏は「熾烈な競争を繰り広げる世界の自動車業界をにらめば、単独での生き残りは難しいだろう。統合見送りによって『日の丸勢』の先行きは混沌と言える」と見る。

目次

「日産のターンアラウンド(事業再生)の実行が絶対的条件」

 やはり、というのが大方の見方ではないだろうか。昨年12月23日、ホンダと日産自動車は経営統合に向けて本格協議に入ると発表した。両社が傘下に入る形で2026年8月に持ち株会社を設立し、経営統合による効率化とともに相乗効果を発揮させていくというスキームだった。

 世界の自動車市場で存在感を高める米テスラや中国のBYDなど新興EVメーカーの台頭をにらめば、単独での生き残りは簡単なことではない。ホンダと日産が統合後、「世界第3位の自動車メーカー」となるスケールメリットを活かして競争力を高め、遅れるEV(電気自動車)分野などでの失地回復を目指すのは当然の流れと言えた。

 だが、昨年末の記者会見で気になったのは、ホンダの三部敏宏社長が「締結した合意はあくまでも経営統合に関する検討を正式に開始するという段階であり、その実現に向けてはまだ議論すべき点が存在する。率直に申し上げれば成就しない可能性も『ゼロ』ではない」と語っていた点だ。

 三部社長は「両社が統合することで、あらゆる領域で化学反応が生まれることによるシナジー効果の可能性は想定以上に大きいことが再確認できた」と強調した上で、業績不振の日産に対する「救済ではない」と説明した。にもかかわらず、「その前提条件としては、日産のターンアラウンド(事業再生)の実行が絶対的条件になる」とクギをさしていたのだ。

たしかに数の上では、販売台数(2023年)が世界7位のホンダ(398万台)と日産(337万台)が経営統合すれば、首位のトヨタ(1123万台)、「フォルクスワーゲン」(923万台)に次ぐ世界3位の自動車グループが誕生する。三部社長は「世界トップレベルのリーディングカンパニーになることが可能」としたが、2024年9月中間連結決算で純利益が前年同期比93.5%減と低迷する日産の状況は深刻だ。

つまり日産は事業再生を諦めたのか

 日産の内田誠社長は「実質的に我々がターンアラウンドできない、断念した、ということはない。2026年に日産が350万台レベルであっても利益が出るような会社に再生する。その道筋をつけていくのが私の責務だ」と説明したが、2024年11月に公表した全従業員の7%にあたる9000人リストラや世界生産能力の2割削減などの経営立て直し策は具体的ではなく、踏み込み不足にも映る。

 2月5日時点の時価総額は、ホンダが約8兆円、日産は約1.5兆円だ。5倍ほどの差が生じているのだが、日産は「対等合併」にこだわった。世界で10万人以上の従業員と家族を抱える日産の経営陣からすれば、ホンダによる「救済」はプライドが許さなかったのかもしれない。

 ただ、北米市場で販売が好調なハイブリッド車(HV)を投入できず、EVは中国勢との競争で劣る日産に残された選択肢は極めて少ないのが現状だ。事業再生が条件としていたホンダ側は具体化させない日産の姿勢に不満を募らせ、日産の子会社化案を打診したのは当然だろう。

社内からも「売れるクルマがない」との声が漏れる日産

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この記事の著者
佐藤健太

ライフプランのFP相談サービス『マネーセージ』(https://moneysage.jp)執行役員(CMO)。心理カウンセラー・デジタル×教育アナリスト。社会問題から政治・経済まで幅広いテーマでソーシャルリスニングも用いた分析を行い、各種コンサルティングも担う。様々なメディアでコラムニストとしても活躍している

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