プレジデント元編集長「あのまま古巣にいたら…ぞっとする」紙メディア崩壊のカウントダウン!コンビニ雑誌棚消滅でも出版社が変われない根本理由

産経新聞は2月7日、3月からファミリマートとローソンの計1万店で雑誌の販売が終了すると報じた。これは読者の紙媒体離れや輸送コスト増の問題が起因している。だが、そもそもニーズがないから雑誌棚がなくなるのであって、コンビニで雑誌が買えなくなったところで多くの利用者からすれば関係のない話だろう。むしろ関係があるのは、出版社だ。3年前の2022年に発売した『週刊誌がなくなる日』に「(当時から)5年後の2027に売上がゼロになる」と記した経済誌プレジデントの元編集長で作家の小倉健一氏が解説するーー。
目次
あのまま古巣にいたらと考えるだけで、ぞっとする
「雑誌コーナーが、また減った…」
東京都墨田区の両国駅の近くに住んでいるのだが、最寄りのセブンイレブンが大きな店舗レイアウト改装工事を行い、一週間ほど休業していた。しかし、改装後になってみると、雑誌コーナーが以前の3分の1ほどに小さくなっていた。近頃開業した近所のローソンには、そもそも雑誌コーナー自体が無かった。そして、三年前に雑誌出版社を飛び出した自分としては、あのまま古巣にいたらと考えるだけで、ぞっとする気持ちになった。
産経新聞(2月7日)によれば、「ローソンは3月以降、国内全店舗の約3000店で雑誌販売を終了することを決定した。これは全体の約2割に相当する。ファミリーマートも具体的な数字は示さないが、同様に3月以降に数千店舗で雑誌販売を終える予定だ」としている。
雑誌はコンビニで「インバウンド需要を取り込めない」
私は3年前の2022年に『週刊誌がなくなる日』という題の本を執筆した。そこでは、雑誌の売上が下がり続けると、5年後の2027年には売上がゼロになると記した。しかし、現実はその予想を上回る展開を見せており、あと2年以内に、紙の週刊誌が消える可能性も出てきた。
予言が的中するというのは聞こえがいいが、実際に週刊誌を作っている人たちにとっては、それどころではない。近い未来についての安心枯渇どころか、年内にも大きな動きが予想される状況だ。
雑誌業界が厳しい理由は明確に二つある。スマートフォンとインバウンド需要の影響だ。スマートフォンに市場を奪われている点は書籍も同様だが、雑誌は特にコンビニなど競争の激しい売り場に置かれることが多い。インバウンド需要を取り込めないことで販売が比較的伸び悩み、撤去の対象になりやすい。
広告主側も明らかに紙離れしている
週刊文春は毎号発行するたびに赤字が続いているとされる。週刊誌の盟主とされる文春でさえこの状況であれば、他の週刊誌も同様以上に苦しいはずだ。特に広告収入は壊滅的だ。日本を代表する企業で広告を発注する幹部複数人に話を聞くと、「紙媒体への広告出稿は、反応が薄く、メディアとのお付き合い目的がメイン」「効果を求めるなら動画広告。文字媒体ならYahoo!ニュースがギリ」といった趣旨の発言ばかりが返ってくる。文春に広告を出稿することで批判を避けたいという意図があるのかもしれないが、広告主側の本音は明らかに「紙」から離れつつある。
では、どうすればいいのかということになる。
現時点では、有料の経済メディアをつくることが最善の策である。現在、日経新聞、ダイヤモンド、みんかぶマガジンなど、有料デジタル会員制度が辛うじて成功しているメディアは、すべて経済メディアだ。
工夫次第で十分に勝機はある
政治や芸能の記事は無料でしか読まれないのに対し、付加価値の高い経済情報は、対価を支払ってでも購読する傾向がある。100万円の株を買うかどうか迷っている状況で、数千円程度の情報コストを惜しむことはないという理屈だ。
経済メディアを立ち上げるにしても、やみくもに始めれば成功するわけではない。東洋経済やプレジデントは、(紙媒体は依然として存在感があるが)有料デジタル事業は現時点で成功しているとは言い難い。特にプレジデントは、かつて筆者が所属していたこともあり「もっと上手くやれないのか」と感じることが多い。ノウハウの欠如が課題となっているのかもしれない。
今日現在、ノウハウを持たないことは確かにディスアドバンテージだが、それが敗北を意味するわけではない。工夫次第で十分に勝機はある。
昨年、読売新聞は新たな株価指数「読売333」を発表したが、結果として大きな空振りに終わった。しかし、このような一発逆転を狙う経済サービスは「着手の方向性」として優れており、挑戦を続ける価値がある。経済メディア市場への参入を試みる読売グループの姿勢には、依然として覇気が感じられる。
プラットフォームへの働きかけを強める読売グループの動きについて、不公平な競争環境を生む可能性があるため、快く思えない部分も筆者にはある。