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「iDeCoは勧めない!」ファイナンシャルプランナーが老後資金を増やしたい自営業夫婦にズバッとアドバイス。その理由とは…

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 公的年金の加入者数を考えれば「勤め人(厚生年金加入者)」の数が圧倒的に多いものの、近年では自分の好きなことを仕事にする自営業やフリーランス、あるいは思い切って起業するという働き方も増えてきました。かく言う筆者も零細企業を起業した1人。起業の後、ある程度の規模になれば健康保険や公的年金などの福利厚生も充実してくるでしょうが、そこまで達しない、またはあえて規模を大きくしないという選択を取る人もいます。今回は、好きなことを仕事にされたという自営業の40代ご夫婦、波多野さん(仮称)のケースをご紹介しましょう。

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目次

相談時には家計収支を把握していなかった

 波多野さんは、ご夫婦ともに自営業で子どもはいません。マイホームの購入にも興味は無く、将来仕事を辞めたらご夫婦いずれかの田舎にUターンするか全く関係のない田舎にIターンしても良いと考えているからです。ご夫婦の仕事は順調ですが、家計管理はどんぶり勘定的であることから一念発起してご相談に来られました。相談時の波多野さん世帯の金融資産は預貯金が450万円。世間ではiDeCo(個人型確定拠出年金)が騒がれていることから私たち夫婦にもメリットがあり加入した方が良いのかもと気にされておりました。反面、投資の経験は無いことから可能ならあまりリスクをとらない形で老後の準備を行いたい希望がありました。

 収入は年によってやや変動があるものの平均すると波多野さん本人が手取り450万円、妻が300万円の750万円、支出は年間500~600万円位かな?と把握していない状況でした。そこで波多野さんにアドバイスを送ったのはまず家計収支をしっかり把握することを述べたうえで、家計収支の平均値550万円として簡単な収支の試算を行いながら以下のようにアドバイスしました。

65歳時点で5250万円の貯蓄。だが高齢無職世帯の生活費は…

 波多野さんご夫婦は田舎に転居される年齢を決めていませんでしたが。試算するにあたり65歳としました。手取収入が65歳まで変わらないとすれば収入750万円、支出は550万円ですから差額は200万円。相談時の波多野さんの年齢が41歳だったので65歳までに200万円×24年で4800万円を準備することができます。相談時の金融資産額450万円に準備できる4800万円を加えると65歳時点で5250万円の貯蓄を準備できることになります。

 老後資金2000万円問題から比較すると5250万円も貯蓄を準備することができ、また65歳から田舎暮らしになれば波多野さん夫婦は悠々自適の老後を過ごせるように思えますが、夫婦ともに年金は国民年金のみ。若いときに会社勤めがあったものの夫婦合わせて受け取ることができる年金は125万円程度。手取りにすれば115万円前後にしかなりません。波多野さん夫婦が田舎に転居されたとしても毎月の生活費は20万円以下に抑えるのは難しいと考えられます。高齢無職世帯(世帯主が65歳以上)の夫婦の毎月の生活費は平均すると26万円前後。年間にすると312万円になります。波多野さんが平均より多少生活費を抑えても25万円位かかるはずです。

 なぜなら、賃貸住宅に住むため通常の統計データなどより住居費が嵩むと考えられるからです。さらに田舎に転居すれば普段使いの車の保有も考えられます。車の買い替えも1回程度は考慮しておくと都合2回になり、1回あたりの費用を200万円とすれば400万円になります。準備できる貯金額5250万円から差し引くと残りは4850万円になります。

「人生100年時代」を考えれば91歳で貯蓄がゼロに

 毎月の生活費を25万円とすれば年間300万円、公的年金が115万円ですから、毎年の赤字額は185万円になります。65歳時点で4850万円の貯金があっても毎年185万円のペースで取り崩す(=赤字額をカバー)と26年強、波多野さんが91歳で貯蓄は底を尽くことになります。人生100年時代を考えれば、91歳で貯蓄が無くなってしまうのですからとても余裕があるとはいえないでしょう。また、65歳以降は好きなことにお金を費やしたり、家電製品の買い替え、もしかしたら最初に転居されたところから再度引っ越すことなども考慮すれば、残念ながら老後資金は不足すると言わざるをえない状況でした。毎年の貯蓄額をアップさせるためにも、家計収支をしっかり把握しましょうと念を押したのは言うまでもないことです。

 たとえば、毎年の貯蓄額を50万円アップすれば65歳までの24年間で1200万円金融資産を増やすことができます。それだけで貯蓄が底を尽く年齢を6年強、97歳まで伸ばすことができます。また、65歳以降も働いて収入を得る、あるいは支出を削減できれば余裕があるとは言い切れませんが100歳がみえてくるでしょう。厳格に試算するならもっと貯蓄額を増やすことも波多野さんには必要でしょうが、現在の生活を犠牲にしてまで老後に備えるのがベストなのか疑問が残るため、相談時は年間250万円の貯蓄を行うアドバイスに留めました。どんな方法で老後資金を準備していくかは以下のようなプランにしました。

iDeCoには流動性リスクがある。口座管理料もコスト

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この記事の著者
深野康彦

ファイナンシャルプランナー。ファイナンシャルリサーチ代表。1962年生まれ。クレジット会社を経て独立系FP会社に入社、96年に独立。30年以上の実績を持つ日本のFPの草分けの一人。さまざまなメディアやセミナーを通じて家計管理の重要性や投資のあり方を発信するとともに相談業務も行っている。

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