なぜ?石破内閣支持率30%で2カ月ぶり回復…「103万の壁」見直し、政府・与党はデッドラインを前に苦渋の判断「みんなディールが下手」

毎日新聞が2月16日に発表した石破茂内閣の支持率は1月より2ポイント増の30%で2カ月ぶりに回復した。しかし、石破茂政権の迷走は止まらない。昨年秋の総選挙で大敗し、与党が衆院で過半数を確保できなかった事情はあるものの、明確な国家ビジョンを持たない首相の姿勢も加わり「決められない政治」が続いているのだ。一方、好機を迎えたはずの野党も主導権争いに終始し、活路を見いだせていない。経済アナリストの佐藤健太氏は「今の政治状況は野党が一丸となれば何でもできる。一体、野党はいつまで寝ているつもりなのか」と厳しい。
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3月2日、迫る予算案のデッドライン
デッドラインは3月2日―。国や地方自治体、国民生活に直結する2025年度予算を今年度内に成立させるためには、憲法の規定で3月2日までの衆院通過が欠かせない。単独で可決することができない与党は立憲民主党や国民民主党、日本維新の会などの賛成を取り付ける必要があり、予算案の修正を含めた協議を重ねている。
野党第1党の立憲民主党は「予算を人質に取るやり方は国民生活を考えれば望ましいことではない」(野田佳彦代表)として物価高対策などを盛り込んだ予算修正案を示し、与党との協議を進める。高校授業料の無償化や社会保障改革を唱える維新は、与党が提示した無償化スキームについて検討。国民民主党は「年収103万円の壁」見直しを突き付け、政府・与党はデッドラインを前に苦渋の判断を迫られる。
2月13日の衆院予算委員会で立憲の重徳和彦政調会長は「与党が過半数割れした衆院はムダな予算を国民生活応援の予算に置き換える議論をする格好の場だ」と指摘した。まさに、その通りと言えるだろう。会計検査院は昨年11月、無駄や改善が必要な税金の使われ方が345件・約650億円に上ると指摘したが、政府・与党が衆院で過半数を確保できていない今の状況は「ムダ撲滅」の絶好のチャンスと言える。
だが、残念でならないのは野党同士で主導権争いをしているように映ることだ。繰り返すが、自民党と公明党、同調する無所属議員を足しても過半数に満たないということは、逆に言えば「野党系」が一丸となれば法案を可決し、成立させることが可能となる。もちろん、「野党系」にも保守系からリベラル系まで混在するため一筋縄でいくわけではない。ただ、政府提出の予算案に反対の立場ならば、少なくとも「修正」においてまとまることができるはずである。
主要野党3党でまとまることもできるはずなのにディールが下手
たとえば、立憲はガソリン価格に上乗せされている「暫定税率」の廃止や小中学校の給食費無償化、高校授業料無償化などを予算修正案に盛り込む。維新は教育無償化に加え、市販薬で代替可能な薬を公的医療保険の適用外とすることや医療のデジタル化など、社会保険料引き下げ策の早期スタートを予算案賛成の「必要条件」としている。国民民主は昨年12月、「年収103万円の壁」見直しや「暫定税率の廃止」で与党と合意している。
これを見れば、少なくとも「教育無償化」や「暫定税率の廃止」は主要野党3党でまとまることができるはずだ。物価高対策や社会保険料の引き下げ策なども程度の違いはあれ、政府・与党に「野党案」を突き付けていくことが可能と言える。もちろん、財源とセットで示す必要性が生じるが、それもスキーム次第だろう。石破政権は、患者の医療費自己負担を抑える「高額療養費制度」の上限額引き上げを検討しているが、これも野党が結集すれば凍結できる。
立憲の野田代表は2月14日の記者会見で「現実的に実現可能な予算だ」として、政府予算案に対する総額3兆8000億円規模の修正案を発表した。基金や予備費、地方創生関連交付金などを削減して財源を捻出し、給食無償化や高校無償化、「暫定税率」の廃止、高額療養費制度の自己負担上限額の引き上げ凍結などを政府・与党に迫る。
少数与党の衆院では野党も責任がある
ただ、今夏の参院選の「1人区」で野党候補を一本化する可能性を模索するくらいならば、野党第1党として維新や国民民主と足並みをそろえて政府・与党に突き付ける方が良いのではないか。自民党サイドからすれば、一部の野党議員の賛成を取り付けさえすれば予算は成立できる。それが立憲だろうが、維新だろうが、国民民主であろうが構わない状況の中で政策実現のための「ディール(取引)」があまりに下手と感じてしまう。