「早慶ダブル合格なら早稲田に行く」慶應ネットワークの恩恵は最初だけ「早稲田一強時代へ」

私立大学の難関とされる早稲田と慶應。野球やラグビーといったスポーツの対抗戦だけでなく、入学難易度でも長くライバル関係が続いているが、ここにきてちょっと変化が起きている。教育事情に詳しい経済誌プレジデントの元編集長で作家の小倉健一氏は「早慶ダブル合格なら早稲田に行く学生が増えている」と語る。なぜなのか。小倉氏が詳しく解説していくーー。
目次
慶應に入学するメリット「三田会」
早稲田大学や慶應義塾大学のようなエリート大学の価値は、卒業後のキャリアに与える影響によって測ることができる。卒業生ネットワークの強さは、労働市場での成功に直結する要素であり、学問的な評価や偏差値以上に重要な要素となる。慶應義塾大学と早稲田大学の両方に合格した場合、どちらを選ぶべきかを述べたい。
こうした卒業生ネットワークについての大掛かりな調査がある。『エリート大学における卒業生の就職ネットワークとアファーマティブ・アクションの有効性』(2022年、ドイツ労働経済研究所)だ。
この研究は、1995~2011年のUERJ(ブラジルのリオデジャネイロ州立大学)の入試データ(試験スコア、合否、学科選択、学生属性)をもとに、卒業生たちの労働状況を追ったものだ。
研究では、卒業生ネットワークが初期キャリアにおいて強い影響を持つことが示された。特定の大学の出身者が多く在籍する企業に就職する可能性が高まり、高賃金の職場へのアクセスが向上する。
慶應義塾大学の卒業生ネットワークは、日本国内でも屈指の規模を誇る。メガバンク、総合商社、大手メーカー、政府機関、スタートアップ業界など、多様な分野に広がっている。三田会と呼ばれる卒業生組織の結束が強く、仕事の紹介やリファラル採用の機会が豊富である。特に、採用担当者が同窓の出身者に対して信頼を持つことが多く、これが就職活動の際に強力な武器となる。
しかし、卒業生ネットワークの強さは永続するものではない。研究の結論でも、卒業生ネットワークにアクセスできた学生は、初期キャリアでは収益の向上を享受できたが、長期的にはネットワークの影響が減少し、収益の優位性も消失した。企業の内部では、昇進の際に新たな評価基準が適用され、学歴よりも個人の能力や実績が重視されるようになる。