子供を国立医学部・上位私立医学部に受からせたい人向けの最強の塾・予備校ルート…名古屋大医学部合格者「大学ごとに求められる力の傾向や出題スタイルには明確な違いがある」

沸騰する医学部人気の中、医学部受験は「情報戦」の様相を呈している。教育投資ジャーナリストの戦記氏に、この戦いを勝ち抜くための最強の塾・予備校ルートを考察していただいたーー。みんかぶプレミアム特集「医学部受験 完全攻略法」第5回。
目次
医学部受験のトレンドがここ1年間でガラッと変わった
教育投資ジャーナリストの戦記(@SenkiWork)と申します。
医学部受験に向けた塾のシステムについては、昨年2024年7月に記事「港区教育ママ・パパだけが知る、謎多き医学部受験専門塾リスト…トップ医学部合格者たちしか知らない謎の塾とは『マッサージサービスも提供されます』」を寄稿させて頂きました。都内中高一貫女子校(鉄緑会指定校)に通う当時中3の娘の視点から見た医学部受験塾の生態系について解説させて頂きましたが、あれから約1年が経過し、医学部受験市場には以下の3つの大きな環境変化が発生しています。
①2025年1月の第二次トランプ政権の発足
②2025年大学受験における女子の東大離れと医学部シフト
③2025年4月からの医学部受験市場へのベネッセの参入(「鉄緑会監修医学科特進コース」)
上記を踏まえて、2025年4月現在での医学部受験塾の王道ルートを探ってみたいと考えます。
第二次トランプ政権の発足で留学希望者が国内回帰するか
第一に、2025年1月の第二次トランプ政権の発足は大きな変化と言えるでしょう。現在も継続している各種混乱については日々報道されている通りですが、「日本からの海外大学受験者」が国内にシフトする可能性があることから、日本の医学部受験市場への影響も無視できないと分析しています。尚、実数的にはインパクトは低そうなのですが、上位層の選択はSNSでの情報発信影響力が大きいので無視できない、という意味とお考え下さい。
具体的な数字で検証してみます。独立行政法人日本学生支援機構が公表している統計データ(「2022(令和4)年度日本人学生留学状況調査結果」)によれば、2022年の日本人留学生は58,162名、そのうち1年以上が1,917名であり、内訳は北米が749名、欧州が744名、他が427名となります。
不思議なことに、日本人による18歳時点での海外大学進学数というデータはどうやら存在しないので推測するしかありませんが、コロナ期間の留学生減少や大学院への進学などの要素を考慮しても、毎年ざっくり300~500名程度が18歳での大学進学先として海外大学を選択していると推測可能です。
海外大学といっても、例えば米国にはコミュニティカレッジから、西海岸のUC系(カリフォルニア大学)や東海岸のIvy Leagueまでありますので、ひとくくりにして語るのは難しい。つまり、日本における東大受験や医学部受験に匹敵するような難易度の海外大学へ進学する18歳は、最大でも200名程度とざっくり推定可能です。東大の定員(約3,000人)や医学部の定員(約9,400人)を考えると、この200名の全員が国内回帰しても影響は大きくないのですが、上位層の情報発信はSNS上では実態以上に影響が大きく見えることになると予想します。海外大学受験を選択肢にしてきた中学生・高校1-2年生が、進路を変更する可能性は高まっていると考えるのが自然です。
留学生向けのF1ビザ取り消し問題が発生して強制送還されるケースも発生している
その主な理由としては、①米国の各種奨学金制度を活用する不確実性が高まったこと(トランプ政権発足後に海外留学生向けの奨学金が打ち切りの事例)、②留学生向けのF1ビザ取り消し問題が発生して強制送還されるケースが発生していること、③トランプ関税ショックに伴う米国株暴落による保護者の教育投資財源への悪影響、④トランプ政権発足前から困難であった米国企業への就労ビザ問題がさらに悪化する見通しであること、等が挙げられます。
首都圏中学受験市場では、過去10-15年間においては、渋幕・渋渋・広尾などの国際系中高一貫校の人気が急上昇しました。特に、過去5年間においては、「東大よりも海外大学(特に米国大学)」のようなトレンドが明確に発生していましたが、第二次トランプ政権運営の不確実性を考えると、米国大学への進学を積極的に考える受験生層が先細りする可能性は高いと言えるでしょう。
つまり海外大学志望者が国内大学受験に回帰することで、東大受験や医学部受験市場に影響が出るというシナリオが成立することになります。尚、海外大学志望者は英語運用能力が極めて高いことから、その国内回帰が進んだ場合、英語の比率が高い早慶受験市場への影響は不可避であると僕は考えています。
女子の東大離れと医学部シフトがトレンドに…大手教育事業者もこのトレンドに乗っかり市場参入
第二に、2025年大学受験における女子の東大離れと医学部シフトという、可視化されている環境変化です。難関校とされる都内女子中高一貫校からの2025年東大合格者が減少していることは、各種報道の通りです。
X(旧Twitter)を中心に、「いよいよ女子の東大離れと医学部受験シフトが発生している」との分析が散見されますが、高1娘が通っている学校の雰囲気を見ている限り、学校内成績上位層で東大志向である同級生は少なく、大半が医学部志向であることから、恐らくこのトレンドは暫く続くものと思われます。
東大に進学したとしても、その後の民間就職を含めたキャリア設計の不確実性を考えると、医師キャリアを構築した方がライフイベントの幅が広い女性にとっては生きやすいのでは、という思想が広がっているように思います。
第三に、2025年4月の医学部受験市場への新規参入が発生していることです。ベネッセが、2025年4月に鉄緑会が監修する医学部医学科志望者向けのオンライン塾「医学科特進コース」を開始しました。日本最大の教育事業者であるベネッセが、拡大する医学部受験市場に進出したというニュースはXではあまりフォーカスされていませんが、トレンド変化を感じさせるものです。