有事にこそ、企業業績や配当継続性を確認すべきワケ・・著名バリュー株FIRE投資家が“有事’’だから教える銘柄選択のポイント

本稿で紹介している個別銘柄:JT(2914)、Jパワー(9513)、三菱商事(8058)、アジアパイルホールディングス(5288)、日本電計(9908)、SRAホールディングス(3817)、横浜ゴム(5101)、クリエートメディック(5187)、ジェコス(9991)、三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)、リケンNPR(6209)、キヤノン(7751)、日本冶金工(5480)、IDホールディングス(4709)
米国のトランプ大統領による関税発動が未曾有の衝撃を与え、4月7 日には日経平均株価が一時2700 円超も急落した。2024年8月の「令和のブラックマンデー」に次ぐ下落は、激動の始まりを感じさせるには十分だ。日本銀行の利上げ延期もささやかれ、経済は不透明な展開が続いている。
政治の「不確実性」と経済の「混迷」が交錯する今、それを乗り越える道とは・・・。
バリュー株投資歴26年の経験を持つ「Ricky日本株研究所」氏(X : @jstockslab) に相場における注目トレンドなどについて話を聞いた。
目次
有事にこそ、企業業績や配当継続性を確認すべきワケ
ーーRickyさんが配当金を重視する理由について、改めてお聞かせください。
私が配当金を重視する理由は、株価に比べて動向が予測しやすいからです。株価は経済情勢や外部要因で大きく変動しますが、配当金は企業の財務状況や経営方針に基づいて比較的安定しています。
第1回でも触れましたが、昨今、日本では累進配当を採用する企業が増加していて、配当の信頼性がさらに高まっています。こうした事例もあり、配当重視の投資がますます魅力的になっていると言えます。
また、市場の暴落は、配当利回りが上昇する絶好のチャンスと捉えることできます。仮に、配当利回り3%の銘柄が株価下落によって4.5%に上昇した場合、割安で買い増すチャンスとなるわけです。
私は、暴落などの有事が合った際は、企業の業績や配当継続性を改めて確認し、冷静に投資判断を下すよう意識しています。
私のように家族の生活を支える投資家にとって、市場の波に左右されにくい「収入の柱」としての配当金は、経済的にもかなり安心感がありますからね。
ーーキャピタルゲインについては、どのように考えていますか?
市場が回復すればキャピタルゲインを得られますが、私は「極めて重大な不祥事が
起きない限り、購入した銘柄は絶対に売らない」というルールを徹底しています。
そのため、キャピタルゲインはあくまで副次的なものと考えており、私の投資の主軸は配当金によるインカムゲインです。
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ーー最近の経済状況や投資環境について、どのように考えていますか?
そうですね、確かに今は不確実性の高い状態です。関税の動向は貿易に影響しますし、日本の政局が揺れると政策の方向性がわからなくなる。
国際紛争も、資源価格やサプライチェーンに影響を及ぼすリスクがあります。こういう時期だからこそ、私はリスクを分散させることを最優先にしています。
ーー具体的に、どんな企業を選ぶときに重視しているポイントはありますか?
主に以下の点を重視しています。
過去10年間のEPSが右肩上がりか
過去10年間のEPSが右肩上がりで増えている企業は、業績が安定していて、市場の変化にも強い可能性があります。
なかでも、2020年のコロナショックの時期に注目していて。あのときは多くの企業が大打撃を受けましたが、赤字にならずに利益を維持した企業は、危機に強いと考えています。
配当金が増加傾向にあるか
連続増配をしていたり、それ以外でも全体的に配当が増える傾向にあるかどうかを重視しています。
累進配当政策やDOEを採用しているか
配当金は景気が悪くなったり、業績が一時的に落ち込んだりすると、減配する企業もでてきます。しかし、累進配当政策を宣言している企業は、たとえ業績が少し悪化しても、減配を避ける努力をしてくれるのです。
また、通常配当金は「その年の利益」に基づいて決められることが多いのですが、利益は年によって大きく変動することがあります。
ですが、DOEを導入している企業は利益の変動に左右されず、株主資本をもとに配当を決めるので、配当金の金額が予測しやすくなるのです。
個別銘柄への過度な期待を避ける
とはいえ、どんなに優良な企業であっても、突発的な問題が発生する可能性は否定できません。そのため、リスクを分散させるために、1つの銘柄への投資額が資産全体の5%を超えないよう、慎重に管理しております。
「JT、電源開発、三菱商事…」主力11銘柄が2倍に
ーーちなみに、どのようなポートフォリオなのでしょうか?
私のポートフォリオは60銘柄以上に分散していて、以下のような銘柄に投資しています。
- JT(2914)
- Jパワー(9513)
- 三菱商事(8058)
- アジアパイルホールディングス(5288)
- 日本電計(9908)
- SRAホールディングス(3817)
- 横浜ゴム(5101)
- クリエートメディック(5187)
- ジェコス(9991)
- 三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)
- リケンNPR(6209)
- キヤノン(7751)
- 日本冶金工(5480)
- IDホールディングス(4709)
現在、上記14銘柄のうち11銘柄が株価2倍以上(ダブルバガー)を達成しています。長い保有期間中には減配や株価急落といった試練もあり、理想通りに進まないこともありました。それでも、波乱を乗り越えてきたポートフォリオです。
この成果は、銘柄選びのポイントである①割安な指標、②セクター分散、③非減配・増配の実績と期待、④ディフェンシブ銘柄、高海外売上比率銘柄、成長株のバランスを意識し、長年ナンピンでコツコツ買い続けた結果です。
〈構成・西脇章太(にげば企画)〉