なぜ為替はここまで動くのか?為替トレーダーが語るトランプ・有事・日銀・参院選の影響は

6月、為替は大きく変動した。ファンダメンタルズを重視している為替トレーダーのYS氏は、その背景に「トランプの施策やアメリカの経済状況、有事など、さまざまな要因がある」と話す。為替を動かす背景と今後の為替はどうなるのか。YS氏にうかがった。みんかぶプレミアム特集「どうする?下半期の攻め方」第4回。
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「トランプ VS マスク」その対立を読み解く
為替が大きく動いている背景を振り返るうえで、まず重要なのがアメリカの「債務上限問題」です。債務上限とは、アメリカ政府が国債発行などで借金できる債務残高の枠のことですが、債務はすでに上限に達しています。
なお、アメリカの債務が膨らんだ大きな要因は、新型コロナウイルス流行時の経済政策にあります。州によっても異なりますが、失業保険に上乗せして週400ドルを給付する州もあり、そのために債務が膨らんでしまったのです。
そのためアメリカではいま、資金を調達するために財務省短期証券(Tビル)と呼ばれる短期債を発行して借り換えを行っているのですが、その結果起きたのが、利払い費用の膨張です。2024年の国債の利払い費用は、初めて国防費を上回る水準となりました。
このような状態を脱却するため、トランプ大統領は「金利を下げろ」と言い続けているわけです。さらにトランプは、米政府効率化省(DOGE)によりレイオフを加速させました。労働市場が弱まったことで、いま米国では消費がどんどん落ち込んでいます。
そこでトランプ氏は景気の下支え策として減税法案を成立させようとしていますが、イーロン・マスク氏からしてみれば、「利払い費用が膨らんでいて、まだインフレが続いているのにもかかわらず、国に入ってくる税収入を下げてどうする」と強く反発したわけです。
すでに下院では減税法案が成立しており、近く可決される見込みです。そのため「アメリカ経済は大丈夫なのだろうか」といった懸念から、ドル円はしばらく下降基調にありました。
イスラエルによる攻撃で「有事のドル買い」
その流れを変えたのが、6月13日のイスラエル軍によるイラン核施設への空爆です。かねてより有事の際には、円を売ってドルを買う「有事のドル買い」が進みます。今回も「イランとイスラエルの報復合戦が進むだろう」と考えられてドル円が乱高下し、23日には、円相場は一時1ドル148円台まで円安が進みました。
ただ他方で、米国の経済は依然として良くないままですよね。企業の売上高も個人の消費も減速したままです。そんな中で23日に開かれた連邦公開市場委員会(FOMC)で、また流れが変わりました。