「給付か減税か」はメディアが作った幻想だ…自民党青年局長が痛烈批判 野党もマスコミに“便乗”の残念な現状

 祖父に中曽根康弘元首相、父に弘文元外務大臣を持つ、自民党の中曽根康隆衆議院議員。誰もが認める政界のサラブレッドだが、その経歴は決して平坦なものではなかったという。

 物価高、少子化、安全保障――。課題が山積する日本で、現役世代の代表として何を思い、何を目指すのか。青年局長として自民党という巨大組織を内側から変えようと奔走している同氏に、紆余曲折の半生から日本の未来像まで、たっぷりと語ってもらった。短期連載全4回の第3回。(取材日:6月24日)

目次

「提言だけでは自己満足」自民党青年局の“本気度”とは

――提言を出すだけでなく、具体的なアクションも起こしているのでしょうか。

 もちろんです。提言するだけで終わってしまっては、自己満足に過ぎません。おっしゃる通り、提言と同時に、自分たちでできることはどんどん実行しています。

 先ほど申し上げた通り、青年局の強みは全国47都道府県にいる約2,000人のネットワークです。例えば、「このテーマでいこう」と決めれば、全国の地方議会にいる青年局のメンバーが一斉に、それぞれの議会で首長に質問を投げかける、といったことができます。これは、国会での議論とはまた違う、非常に大きな力になります。全国各地の県議会や市町村議会で同じテーマが取り上げられれば、それが条例の制定につながったり、社会的なムーブメントになったりすることもありますから。

自民党は「古い価値観に縛られている」若手ホープが断言

――自民党をアップデートし、次世代の政党にしていくために、今、最も必要なことは何だとお考えですか?

 自民党は、良くも悪くも戦後の日本を長く担ってきた政党です。それゆえに、過去の成功体験や、その時代から続く古い慣習、価値観に縛られている部分がまだまだ根強く残っています。しかし、社会の価値観は、もはや劇的に変化しています。その中で、私たちは「令和の時代」に合った自民党を本気で作っていかなければならないし、具体的なことを言えば、やっぱり世代交代というものを、もっと進めていかないといけない。その問題意識が、我々青年局の活動の根幹にあります。

 これまでの自民党のままでは、もう持たない。そのくらいの危機感を持っています。

 具体的にどうやって世代交代を進めるか。いくつか方法はありますが、例えば自民党が自ら決めた「比例代表における73歳定年制」というルールがあります。73歳を超えたら、党の公認候補にはなれないというルールです。しかし、この自分たちで決めたルールすら、現状では完全に守られているとは言えない状況があります。

 また、青年局の中からは、「閣僚の半分を50代以下にすべきだ」「女性議員のクオータ制があるならば、青年世代にもクオータ制を導入してはどうか」といった声も上がっています。あるいは、単なるパフォーマンスとして若い大臣を一人入閣させるのではなく、党の重要な意思決定プロセスそのものに、青年世代を本格的に参画させてほしい、という強い要望もあります。

 ただ、少しずつですが、変化の兆しを感じているのも事実です。特に、派閥が解消されたことによって、党内の空気は大きく変わりました。「派閥に属していれば、当選回数を重ねるうちに順番にポストが回ってくる」といった、かつての順送り人事はもうありません。一人ひとりの議員が、自らの能力を磨き、政策を訴え、それをアピールしていかなければ役職を得られない。ある意味で、健全な競争原理や切磋琢磨が働く環境が生まれつつあります。当選回数や年齢に関係なく、能力のある若手が重要なポジションに抜擢されるケースも増えてきており、これは大きな変化だと感じています。

多忙な政治家の意外な素顔「夜の会食の前に…」

――プライベートでは双子の父親でいらっしゃいますが、お仕事との両立はなかなか大変ではないでしょうか?

 確かに仕事との両立は大変ですが、自分で意識して子どもたちと過ごす時間を作るようにしています。例えば、朝早く起きて子どもたちの朝ごはんを作ったり、夜の会食が入っていても、その前に一度家に帰って子どもたちをお風呂に入れたり。可能な限り、父親としての時間を大切にしたいと思っています。

日本の子育て支援に欠けている最も重要な視点 問題はお金じゃない?

――ご自身の子育て経験も踏まえ、今の日本の少子化対策や子育て支援について、どのようにお考えですか?

 今の子育て支援策についてですが、こども家庭庁が創設され、子育て関連の予算が実際に増えていることは、非常に良いことだと評価しています。子どもを育てるには、やはりコストがかかります。特に現役世代の親にとって、経済的な負担は非常に大きい。

 ただ、これはお金だけの問題ではない、ということを強く感じています。私が重要だと思うのは、社会全体の意識改革です。

 「子育ては母親がするものだ」といった古い価値観は、まだ根強く残っています。最近でこそ男性の育休取得も進んではきましたが、まだまだ十分ではありません。社会全体で子どもを育てていくんだ、というコンセンサスを、もっともっと醸成していく必要があります。

 例えば、子どもをベビーシッターさんに預けると言うと、一昔前は「なんで自分で育てないの」「母親失格だ」というような、悪であるかのような見方をされる風潮がありました。しかし、これからの時代は、親が「子育て」と「自分の人生」を両立できるような環境を作っていくことが不可欠です。そのためには、お金の支援だけでなく、こうした社会の意識や価値観を変えていくことが、政治の大きな役割だと考えています。

「給付か減税か」はメディアが作った幻想だ…野党も“便乗”の残念な現状

――物価高対策として自民党は2万円の給付を打ち出していますが、国民からは「ばらまき」との批判も根強くあります。現役世代の負担感を、本質的にどう軽減していくべきでしょうか。

 まず、この物価高を何とかしなければならない、という点においては、どの政党も同じ認識のはずで、正直、政策的な差別化は難しい部分です。

 その中で、自民党は責任政党、与党として、何か政策を打つ際に、その副作用や財源を常に考えなければなりません。ですから、野党のように、ある意味で無責任に、耳障りの良いキーワードだけをSNSのショート動画で拡散させる、というような手法は取れないのです。そうすると、同じ思いで、同じ方向性の政策をやろうとしていても、「野党は提案しているのに、自民党は何もやっていない」という構図になりがちです。

 実際には、ガソリン、ガス、電気、あるいは米価対策など、あらゆる分野で対策を講じており、それによって国民の皆さんの負担は確実に軽減されています。しかし、おそらくその「伝え方」が下手で、やっていることが国民の皆さんに届いていない。それが「何もやっていない」という批判につながっている面は大きいと思います。

 いわゆる「給付か減税か」という二元論の議論がありますが、私は、自民党はそもそもこのメディアが作った二項対立の構図に乗るべきではないと考えています。政治が考えるべきは、短期的な視点と、中長期的な視点の両方です。

 減税は、短期的には多くの人にとって嬉しいことかもしれませんが、それが中長期的に国の財政にどう影響するのか。将来の年金や医療、介護を支える財源を損なってまで、目の前の短期的な効果を優先することが、本当に国益に資するのか。そこを冷静に考えなければなりません。

 今回の給付金についても、「ばらまきだ」と批判されることは覚悟の上での、政治判断だったと理解しています。その上で最も重要なのは、なぜ今、これが必要なのかという「説明責任」を、政府・与党が徹底的に果たしていくことです。「ばらまきと言われるかもしれないが、今、これをやる。なぜなら……」という丁寧な説明が国民に届いて初めて、政策は意味を持つのだと考えています。

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