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中国共産党がいま一番恐れている意外なモノとは…拘束されて“失踪”する大学教授の共通点を中国出身エコノミストが証言

 不動産バブルの崩壊や深刻なデフレに見舞われ、先行き不透明感が増している中国経済。年金制度崩壊の危機も囁かれる中、漂流する世界2位の経済大国が向かう先はどこなのか。独裁色を強める習近平政権が追い詰められて台湾を進攻する「暴走シナリオ」とは。日本と中国双方の政治・経済に精通したオピニオンに定評がある東京財団政策研究所 主席研究員の柯隆氏に、詳しく話を伺った。短期連載全4回の第1回。(取材日:6月19日)

目次

中国の経済学は役に立たない 著名エコノミストが日本を選んだ理由

――本日はお忙しい中ありがとうございます。今日は改めて、柯隆さんがどのような経緯でエコノミストとして日本を拠点に活動されるようになったのか、その原点からお伺いできればと思います。

 ゆっくり話すと私の人生そのものなので非常に長くなりますが、簡潔に申し上げますね。私は生まれも育ちも中国です。中国にいた頃、ある程度日本語も勉強したのですが、もともと私が学びたかったのは経済学でした。ただ、当時の中国で経済学を学ぼうとすると、それはマルクス経済学になる。これは役に立たないな、というのは分かっていました。

 そんなとき、あるきっかけがあって名古屋へ留学することになったのです。1988年のことですね。

南京出身のエコノミストが日本語を勉強した意外なワケ

――アメリカなど他の選択肢もあったかと思います。なぜ日本、そして名古屋だったのでしょうか。

 1980年代当時、まだ個人で自由に海外留学に行くというのは一般的ではありませんでした。海外へ行くには、その国に身元引受保証人が必要だったのです。何かあった場合に保証してくれる人がいないとビザが取れない。私の場合、たまたま名古屋に面倒を見てくださる方がいて、「私が身元引受保証人になってあげるよ」と言ってくださった。それで名古屋に留学に行ったわけです。もし知り合いのアメリカ人がいれば、今頃ニューヨークにいたかもしれません。こういう偶然性と必然性が重なるところが、人生の面白いところですね。

 もちろん、日本語を勉強していたからこそ、その方と知り合えたという経緯もあります。なぜ私の故郷である南京で日本語を学んだかというと、これもまた偶然が重なっています。南京は歴史的な経緯もあって、もともと日本語のできる人が少なかった。そこに1980年代の半ば、800人規模の日本人代表団が南京を訪れるという話が持ち上がりました。通訳が圧倒的に足りないということで、将来の通訳者として育成するために私が選ばれたのです。当時は英語はできましたが、日本語はさっぱり分かりませんでした。そこで必死に日本語を勉強した、というわけです。

もう中国には戻れない? 日本で生きていく決意をした瞬間

――なるほど。そして名古屋で学ばれた後、エコノミストの道へ進まれたのですね。

 名古屋では6年間留学し、最終的に名古屋大学で学位を取りました。そして就職活動をしたのが1994年。ご存じの通り、日本はすでにバブルが崩壊した後で、就職は大変でした。色々紆余曲折ありましたが、最後に落ち着いたのが、今ではもう存在しませんが、日本長期信用銀行(長銀)の長銀総合研究所です。そこで採用していただき、エコノミストとしてのキャリアが始まりました。

 エコノミストの仕事というのは、様々な産業やトピックを調査してレポートを書き、それを外部に発表することです。今日のようにマスコミから取材を受ければ、それに答えるのも仕事です。この仕事を始めたとき、すでにある覚悟はできていました。それは、「こういう仕事を続ける限り、私はもう中国には戻れないだろう」ということです。なぜなら、中国では自由に発言することができない。下手にしゃべれば捕まってしまうからです。ですから、私には日本にとどまるという選択肢しかありませんでした。そこで仕事人生が固まったわけです。

 面白い話があって、私が長銀に就職が決まった時、名古屋の皆さんが送別会を開いてくれて、「君はもう日本の優良企業、あの長銀に入ったのだから、人生は安泰だ。生涯心配いらないから頑張りたまえ」と送り出してくれたんです。

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この記事の著者
柯隆

柯隆(か・りゅう) 1963年中国・南京生まれ。88年来日、94年名古屋大学大学院、経済学修士号取得。長銀総研、富士通総研を経て、2008年東京財団政策研究所主席研究員に。中国政治、社会関連の著書多数。「『中国「強国復権」の条件』(慶応義塾大学出版会)が第13回樫山純三賞を受賞、近著は『ネオ・チャイナリスク研究』(2021年、慶応大学出版会)。日本と中国双方の政治、経済に精通したオピニオンに定評。

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