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参政党の“消費減税”実現なら国債暴落で金融危機か…海外投資家が最も恐れる悪夢のシナリオとは モーリー・ロバートソン氏が欧米メディアの本音を暴露

(c) AdobeStock

 2025年夏の参院選で躍進し、国内メディアの注目を独占した参政党。しかし、その熱狂とは裏腹に、海外メディアの反応は驚くほど冷淡であったという。なぜ、これほどの温度差が生まれるのか。国際ジャーナリストのモーリー・ロバートソン氏は、その背景に日本の地政学的な存在感の低下と、米国を揺るがす巨大な国内問題があると指摘する。

 海外メディアが参政党のイデオロギーを「スルー」する一方で、その経済政策がもたらす「財政リスク」に鋭い監視の目を向けている実態を、同氏に解き明かしてもらったーー。みんかぶプレミアム特集「参政党が勝ち、リベラルが負けた理由」第3回。

目次

騒いでいるのは中国だけ 西側メディアは参政党を「スルー」

 欧米の主要メディアが参政党を冷静に“値踏み”してほぼスルーしているのは、ここまでお話してきた通りです。では、海外メディアは日本の参院選に全く価値を見出していないのでしょうか。実は、一つだけ、彼らが極めて鋭い視線を向けているポイントがあります。それは、政治的なイデオロギーではなく、純粋な「経済的リスク」です。

 象徴的だったのは、ドイツの国際放送局「ドイチェ・ヴェレ(DW)」の報道です。参政党の神谷代表は「ドイツのAfD(ドイツのための選択肢)を参考にしている」と公言しています。AfDは、現在のドイツ政界をかき回す極右政党であり、ドイツ人にとっては非常に強い刺激を持つ「トリガーワード」です。にもかかわらず、DWが報じた参政党に関する記事の論調は、驚くほど「ぬるい」ものでした。「政権を取ってから、また話を聞きましょう」とでも言いたげな、突き放したような態度です。これは、政治的な脅威としては全く認識されていないことの証左です。

 唯一、声高に騒いでいるのは中国の政府系メディアですが、これは「日本の政治家は支持率アップのために中国を悪者にしている」という、いつものプロパガンダの一環であり、客観的な分析とは言えません。

参政党の“消費税減税”で通貨・国債暴落か…海外投資家が最も恐れる悪夢のシナリオ

 海外の、特に経済メディアが本当に注目しているのは、参政党が掲げる「消費税減税」という公約が、日本経済に与えるインパクトです。

 経済通信社であるブルームバーグは、この点を極めて詳細に分析しています。彼らの試算によれば、もし参政党の案の通りに消費税を段階的に廃止した場合、年間で25兆円もの財源が失われることになります。この規模は、日本のGDPの4%以上に相当します。そしてこの数字は、2022年に大規模な減税策を打ち出して通貨と国債の暴落を招き、わずか49日で退陣したイギリスのリズ・トラス首相が引き起こした経済危機、「トラス・ショック」の規模に匹敵するのです。

 ブルームバーグは、もし日本が安易に大規模な消費税減税に踏み切れば、「トラス危機」が日本で再来する可能性があると警鐘を鳴らしています。これこそが、海外の投資家たちが最も懸念しているシナリオです。

“変わらない国”日本が持つ、世界でも稀有な「安全資産」としての価値

 なぜ彼らは、それほどまでに日本の財政規律を気にかけるのでしょうか。それは、これまで長年にわたり、日本円や日本の国債が、世界中の投資家にとって「セーフヘイブン(安全な避難先)」と見なされてきたからです。

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この記事の著者
モーリー・ロバートソン

国際ジャーナリスト、ミュージシャン、コメンテーター、DJといった多岐な分野で活躍。日米双方の教育を受け、1981年に東京大学とハーバード大学に同時合格する。日本語で受験したアメリカ人としてはおそらく初めての合格者。東大、ハーバード大学に加え、MIT、スタンフォード大学、UCバークレー、プリンストン大学、エール大学にも同時合格。東京大学を1学期で退学し、ハーバード大学に入学。電子音楽とアニメーションを専攻。アナログ・シンセサイザーの世界的な権威に師事。1988年にハーバード大学を卒業。2001年「情熱大陸」でフィーチャー。2005年ポッドキャストのパイオニアとなり、ネットでラジオ番組「i-morley」を配信。ニフティ社から「Podcasting Award」を受賞。現在各種メディアでも活躍中。

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