「南国リゾートで高収入バイト」の正体は“監禁部屋”? 沖縄出身作家がヤバすぎる実態を暴露

沖縄といえば、青い海と空が広がる南国リゾート。しかし、その華やかなイメージの裏側には、本土とは異なる独自の生態系を持つアンダーグラウンドな世界が広がっているという。かつて暴走族に身を置き、少年院も経験した作家の神里純平氏が、その実態を赤裸々に語る。短期連載全3回の最終回。(取材日:7月4日)
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沖縄でいま最も蔓延しているドラッグの実名
――違法ドラッグについてはいかがでしょうか。沖縄ではどのような薬物が蔓延していますか?
覚醒剤に関しては、昔から暴力団の専売特許というイメージが強く、一般の不良の間では「覚醒剤に手を出すのはダサい」という風潮があります。それに代わって、ここ最近、特に若者の間で圧倒的に広まっているのが大麻です。
――大麻は人気があるのですか。
非常に人気があります。沖縄には観光客も多く訪れますが、彼らの中にも「沖縄に来たからには吸いたい」と考える人がいるようで、「どこで売っていますか?」と聞かれることもありました。最近では、リキッドタイプのものなども出回っていると聞きます。
沖縄の違法ドラッグは誰が売っているのか?
――そういった違法ドラッグは、誰が売っているのでしょうか。
元締めは暴力団だと思います。しかし、末端の売買に関しては、組織化された不良グループが売人をしているというよりは、ユーザーが自分で使う分と一緒に少し多めに仕入れて、仲間のユーザーに売って小遣いを稼ぐ、という個人間のやり取りが主流のように感じます。
――石垣島などでは大麻が自生しているという話も聞きますが、そういったものが供給源になっているのでしょうか。
自然に生えている大麻は、有効成分であるTHCの濃度が低く、いわばアルコール度数の低いビールのようなものです。
一方、市場で出回っているのは、品種改良されてTHC濃度が非常に高くなった、ウイスキーのような強力なもの。ですから、自生しているものよりも、室内でライトなどを使って人工的に栽培されたものや、密輸されたものが出回っているケースがほとんどだと思います。沖縄県内にも、部屋の一室を栽培工場にしている「グロワー」と呼ばれる生産者は存在します。
ドラッグ密輸“石垣ルート”の恐るべき実態「漁師がGPSで…」
――密輸ルートについても、沖縄は地理的に中継地になりやすいイメージがあります。「石垣ルート」といった言葉も聞きますが、これはどのようなものなのでしょうか。
海外から日本国内に薬物を持ち込む際、最大の障壁は空港や港の税関です。そこで使われるのが、税関を通らない海を使ったルートです。例えば、海外の組織が薬物を防水加工してGPSを取り付け、計算された海域に投下します。それを、依頼を受けた日本の漁師などが船で探しに行き、回収する。これが代表的な手法のひとつです。
――一部の漁師が密輸に加担している、と。
そういうケースが多いと聞きます。例えば台湾から密輸する場合、台湾側の組織が潮の流れを計算して沖縄近海にブツを落とし、日本側の組織と繋がりのある漁師がGPSを頼りにそれを拾いに行く。一度、石垣島のような国内の島に入れてしまえば、そこから本土に送るのは格段に容易になりますから。海を使った密輸は、昔からあるポピュラーな方法です。
「運び屋は米兵」沖縄で横行した脱法転売ビジネスのカラクリ
――ドラッグ以外にも、沖縄ならではの「裏稼業」や「シノギ」は存在するのでしょうか。
たくさんあります。その中でも最も沖縄らしいのが、アメリカ軍基地を利用したビジネスです。
――米軍基地ですか。
はい。米軍基地の中は、法的にはアメリカのカリフォルニア州と同じ扱いになるんです。つまり、基地の中にいる米兵は、アメリカ国内向けのネット通販、例えばAmazon.comなどを現地の送料で利用できる。しかも、関税がかかりません。
――関税がかからないのは大きいですね。
ええ。例えば、車のパーツなどをアメリカ本国から買うと、関税がかからないだけで日本の市場価格の半値くらいで手に入ることがあるんです。そこで、米兵と仲良くなって、彼らの名義で商品を基地の中に送ってもらい、それを基地の外で受け取って転売する。いわゆる「関税飛ばし」と呼ばれる手法で、これをやっている人間は多かったですね。
沖縄の街にリサイクルショップが不自然なほど多いワケ
――沖縄では、街中にリサイクルショップが不自然なほど多い、という話をよく聞きますが、あれにも何か裏があるのでしょうか。
一時期、本当にリサイクル業がブームのように増えた時期がありました。一つには、沖縄には大学進学や移住で県外から来る人が多いので、家電などの需要があるという側面もあります。
しかし、裏の稼ぎとしては、不用品回収に妙味がありました。「無料で捨ててあげるよ」と言って家財道具一式を引き受けるのですが、その中から価値のある金属や古紙などを分別して売ったり、依頼主が価値を知らずに手放した骨董品などをヤフオクで売って儲けたり、ということが行われていました。
「南国リゾートで高収入バイト」の正体は“監禁部屋”?
――最近では、本土で活動していた特殊詐欺グループが、摘発を逃れて沖縄に潜伏しているという話も聞きます。
それは噂ではなく、本当です。私も実際に何人か見ましたし、彼らがアジトにしているアパートや、警察に追われている現場を目撃したこともあります。
――なぜ彼らは沖縄に逃げてくるのでしょうか。
一つは、実行犯となる「かけ子」を集めやすいという点です。「南国リゾートで高収入バイト」といった甘い言葉で若者を本土から呼び寄せ、アパートの一室に半ば監禁状態で住まわせて、電話をかけさせるんです。
那覇市内をうろついていると、レンタカーの「わ」ナンバーの車が同じアパートの周りをずっとグルグル回っていることがあって、地元の人間なら「あそこの部屋で何か悪いことをやっているな」とすぐに分かります。あれは監視役ですね。
なぜ詐欺師はキャバクラでカネをばらまくのか
――そういった詐欺グループのメンバーは、どのような生活を送っているのですか?
彼らは明日をも知れぬ身なので、非常に刹那的なお金の使い方をします。ストレス発散のために、夜は必ずと言っていいほどキャバクラで豪遊する。
しかし、彼らは大金を持っていても、自己評価が著しく低いんです。悪いことをして稼いだカネだという自覚があるし、銀行に預けることもできない。だから、お金を持っていることを褒めてくれるキャバ嬢に承認欲求を満たしてもらうしかない。そういう姿を何度も見ました。
米兵は犯罪を犯しても「軍の病院」へ…“治外法権”の実態
――米軍関連では、他にどのような犯罪やビジネスがあるのでしょうか。
米兵による犯罪で言えば、やはり強姦事件や、酔って人の家に侵入する不法侵入が後を絶ちません。彼らは逮捕されそうになると「体調が悪い」と訴えて、軍の病院に逃げ込むんです。
一度、軍の施設に入られてしまうと、日米地位協定の壁があって、日本の警察は手が出しにくくなる。これは昔から問題になっています。また、クラブなどで薬物を使用しているのも、米兵が多いという印象ですね。
沖縄の軍用地ビジネスを支配する、見えない「利権の壁」
――「軍用地ビジネス」という言葉もよく耳にします。
あれは、かつては非常に旨味のある投資でした。仕組みとしては、日本政府が地元の地権者から土地を借り上げて、それを米軍に基地として提供する。地権者には、日本政府から借地料が支払われるわけです。
――国が借り手なので、賃料の取りっぱぐれがない、と。
その通りです。まさに究極の安定資産で、昔は利回りも非常に良かった。しかし、人気が出すぎて価格が高騰しきってしまい、今から新規で購入しても、投資としての旨味はほとんど残っていません。
米軍幹部が基地の外に住むための「外国人住宅」への不動産投資も同様で、家賃は高いのですが、物件が限られており、政治家なども絡んだ利権でガチガチに固められているため、今から新規参入するのは極めて困難です。
沖縄「裏社会」を知り尽くした男が明かした“故郷への本音”
――様々なお話を伺ってきましたが、神里さんご自身は、今後、沖縄に帰るご予定はあるのでしょうか。
いいえ、もうしばらくはないですね。
――それはなぜでしょうか。
これはあくまで私の個人的な感覚ですが、ふるさとというのは、案外、自分が一番嫌いな場所でもあると思うんです。私にとって沖縄は、少年時代に嫌な思いをしたり、辛い経験をしたりした場所でもあります。
誰かに借金があるとか、そういう具体的な理由はないのですが、なんとなく帰っても落ち着かないというか、そこに自分の居場所がないような気がして。だから、今は東京で自分のやるべきことをやろうと思っています。