子供をトップエリートサラリーマン(総合商社、戦略コンサル、外資IT、外資投資銀行)にするための逆算子育て戦略…どこまで学歴・英語力を身に着けさせれば正解なのか

子供に中学受験をさせる最終的な目的とは何だろう。もちろん、わが子に幸せな人生を送ってもらうことだろう。では、具体的に、中学受験をすることでその後の人生の何が有利になるのだろうか。
元総合商社マンであり、数多くの企業でCFOを務めてきた教育投資ジャーナリストの戦記氏が、現代のトップエリートサラリーマンになるために必要な学歴や英語力などについて論じる。さらに、PEファンドにお勤めのトップエリートインフルエンサーにも取材した。
初の著書『中学受験の“不都合な真実”: サピックス、鉄緑会、早期英語の真価 (みんかぶマガジン新書)』の売れ行きも絶好調な戦記氏がレポートするーー。
みんかぶプレミアム特集「キャリアから考える中学受験の最強戦略」第10回。
目次
教育投資ジャーナリスト「そもそも、中学受験は新卒就職活動の準備のために存在する」
教育投資ジャーナリストの戦記(@SenkiWork)と申します。
今年も10月1日を迎えました。毎年この日には、日本の主要大企業が内定式を行い、社長などの幹部が来春に入社する内定者たちに訓示するのが通例になっています。中学受験を現在進行形で戦っている親御さんも、新卒での内定式とその後の懇親会について記憶されていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。
中学受験プロセスにいると目の前の偏差値という短期的かつ狭い視野にならざるを得ないのですが、当たり前のおさらいをしてみたいと考えます。つまり、中学受験→大学受験→新卒就職活動、という人生ゲームを考えると、中学受験は新卒就職活動の準備のために存在する、と定義づけることが可能です。
弁護士や公認会計士、そして医師などを目指す場合は、資格要件を満たすために通常の新卒就職活動とは異なるプロセスとなります。しかし、それらを除くと、大半の人は民間企業に新卒就職をすることになります。
本稿では、我が子を民間キャリアトップティア層に送り込むためには、どのような中学受験・早期英語戦略が必要となるのか、分析してみたいと考えます。
子供が就職したらママ友に胸を張って自慢できる企業はどこか
定義するのが難しいのではありますが、30歳時点で年収1,000万円に到達するような会社やキャリア、と考えるのが適切なように思います。
「おたくのお子さんはどちらの中学校に通っているのですか?」とママ友から聞かれて、うつむくことなく胸を張って答えることができる中高一貫校の名前のようなニュアンスで考えると、我が子が以下企業群に就職を果たした場合、親御さんとしては誇りに思うのではないでしょうか。
総合商社(三菱商事、三井物産)、戦略コンサルティング会社(マッキンゼー、ボストン コンサルティング グループ、ベイン・アンド・カンパニー)、投資銀行(ゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレー)、プライベートエクイティファンド(KKR、ベインキャピタル)、米国テック企業(GoogleやAmazonといったGAFAM)。
上記企業群に共通することを抽出すると、以下の通りになります。
①大企業であること。
②グローバル企業であること。
③各業界の上流工程にいること。
④知名度が高いこと。
資本主義市場における上流工程に位置する会社は、少ない人数で大きな金額を動かしますので、従業員一人当たりの生産性が自然と高まる構造になっています。
他方、下流工程にポジションを取る会社ほど参入障壁が低く、各種競争に晒されることから、構造的に生産性が低下します。会社自体が競争に晒されるということは、もちろん従業員のスキルセット的にも競争に晒されることになりますから、給与所得がなかなか伸びないことになります。
エリート中のエリートサラリーマンたちの共通点
上記企業群を観察して、具体的な業務を思い浮かべてみましょう。「三菱商事とGoogleの共通項なんてないじゃないか・・・」という声が聞こえてきそうですが、実は、僕の目線では重要な共通項が存在します。それは以下の通りです。
①M&Aやスタートアップ投資などで「株式」に絡むこと。
②上記①の結果として、「経営者」(=取締役)に絡むこと。
世の中で認識されているハイエンドキャリアですが、それは企業単位や企業内部の様々な職種を考えても、この2点を満たすキャリアは専門性が高く、そしてその結果として代替人材が少ないことから高所得になりやすいように思います。
少し具体的に解説してみますと、例えば、最近の大学新卒就職で人気がある、総合コンサル6社を想像してみましょう。アクセンチュア、デロイト、PwC、アビーム、EY、KPMG。総合コンサルなので、既存企業の経営支援などを行っているのは勿論ですが、実は、高い収益率を誇る花形の業務は、M&Aアドバイザリー業務だと思います。動く金額が億円から数兆円の世界ですので、失敗が許されない世界なのです。
つまり、どのようなキャリアを歩んだとしても、M&Aに関係する業務がハイエンドキャリアに繋がっていると考えても大きくは間違っていないように思います。
トップエリートサラリーマンになるための必須知識
それでは、どのようにすればM&Aや経営に関わるキャリアを構築できるのでしょうか。結論としては、以下スキルセットを10代から20代にかけて具備することが、M&A関係のキャリアを構築する入口になると考えます。
①会計知識
簿記2級取得は必須だと考えます。簿記3級では工業簿記の原価計算を扱いませんので、知識としては不足です。とはいえ、簿記1級はあまりにも難易度が高いので、経理のプロを目指す人以外は実務には直結しないと考えます。
簿記2級は、M&Aの世界への最初の一歩になると考えます。BSとPLの関係が理解できるようになると、企業の財務諸表を読めるようになります。簿記2級レベルの知識があれば、証券アナリスト試験の1次試験「II」(財務分析、コーポレート・ファイナンス)や、中小企業診断士試験においても1次試験の「財務・会計」の学習時間を大幅に削減することもできます。
②ファイナンス知識
M&Aに絡むハイエンドキャリアを構築したい場合は、証券アナリスト資格は避けて通れない道だと考えるのが良いでしょう。証券アナリスト資格は合格しておいてあまりにも当たり前なので、関係者の間では話題にも上りません。
なぜファイナンス知識が必要かを一言で答えると、「企業価値(株式価値)を算出するために必要な知識だから」です。株式価値を求めることをバリュエーションと言いますが、これには様々な方法があります。詳細は割愛しますが、EBITDA、DCF、NPV、WACC、IRRなどの常識を必要とする世界で、これらの知識が無ければ仕事が全く進みません。証券アナリスト試験に合格すると、これらの知識を網羅的に獲得することが可能となります(エクイティのみならず、債券の世界の解像度も高くなります)。
尚、証券アナリスト資格試験は最終合格までに時間がかかる試験であることに注意する必要があります。つまり、1年間の通信教育後に初めて年に2回ある1次試験(3科目)を受験可能となり、1次試験突破の1年後に年に1回ある2次試験が受験可能となるためです。
これが何を意味するかというと、大学に入学した後に証券アナリスト試験に申し込んだ場合、最速で大学2年生で1次試験が受験可能となるのです。具体的に、今年2025年4月に大学生になったAさんの目線で考えてみます。今年2025年の場合は、申込期間が「2025年5月20日~2026年1月31日」ですので5月に申し込むとします。この場合、Aさんが受験可能な試験は大学2年生の2026年4月(春試験)と9月(秋試験)からです。仮に4月に合格したとしても、2次試験は大学3年生の2027年6月の挑戦となります。しかし、就職活動の早期化により、Aさんは証券アナリスト試験の1次試験合格はアピール可能ですが、2次試験合格はアピールするのが難しい構成になります。
つまり、大学入学直後に証券アナリスト試験講座に申し込んだとしても、就職活動時のアピールには間に合わない可能性が高いのです。
もう皆さんはお気づきでしょうが、このタイムラグを解消する手段は、高3生が5月に証券アナリスト講座を申し込んでおくことが正解なのです。そうすれば、大学1年生の9月(秋試験)に1次試験に合格し、大学2年生の6月の2次試験に挑戦することが可能となります。
現代のトップエリート、M&A担当者のリアルな1日をシミュレーション
③英語力
日本国内で完結するM&A(IN-IN型)では英語力が問われる機会は少ないと思います。しかし、実際には、日本企業が海外企業をM&Aしたり(IN-OUT型)、海外企業が日本企業をM&Aするケース(OUT-IN型)はもはや珍しくありません。国をまたぐグローバルなクロスボーダー取引は、日経の一面でも盛んに報じられている通りです。
クロスボーダー取引の場合、もちろん高い英語力が必要となります。例えばOUT-IN型の場合は、ディール中は以下のような毎日を過ごすことになるでしょう。M&Aはプロジェクトマネージャー(通称プロマネ)が仕切るのが一般的ですので、プロマネのリアルな1日を追ってみましょう。