最短で永住権「黄金カード」…その数に驚き!中国人留学生が押し寄せる早稲田「土地取得規制、出入国厳格化進める高市政権の難題」

高市早苗政権が土地取得規制や出入国・在留管理の厳格化など外国人問題に取り組む中、もう1つの難題が浮上している。それは、外国人留学生をめぐる問題だ。日本を代表する東大や京大、さらに慶應義塾大学や早稲田大学などには留学生が大量に押し寄せるようになった。背景には「永住権」の取得緩和がある。作家の伊藤慶氏は「ビザ発給要件の緩和や永住権の取得申請に必要な期間が大幅に短縮され、特に中国から留学生が殺到するようになった。日本の永住権取得を目的としている人も少なくない」と指摘する。日本の人口戦略が揺れる中、高市首相はどのような方針を打ち立てるのか注目される。経済事情に詳しいライターの伊藤慶氏が解説するーー。
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早稲田外国人留学生、中国がトップの3200人
日本を代表する名門大である慶應と早稲田が外国人留学生に人気だ。早稲田大学留学センターの公式サイトによれば、2024年度の外国人学生在籍者数(通年)は8188人で、2014年度の6404人から大幅に増加した。外国人学生を国・地域別(2025年5月1日時点)で見ると、トップの中国が断トツの3235人、2位は韓国で688人、3位は台湾の347人と続く。
独立行政法人「日本学生支援機構」の調査(2024年度)によると、日本の大学等には33万6708人の外国人留学生が存在する。2014年は18万4155人、2004年は11万7302人だ。2015~2018年は前年に比べて10%超増加し、さらに2023年は前年比20.8%、2024年は20.6%も増加していることがわかる。
出身地域別では、アジア地域からの留学生が92.5%を占め、欧州・北米地域からが計5.3%。中国だけで12万3485人、36.7%に達している。外国人留学生の在籍を見ると「大学」は8万7421人で、「大学院」は5万8215人。「専修学校」も7万6402人いる。
興味深いのは、外国人留学生の受け入れが多い大学(2023年5月1日時点)だ。トップは早稲田大学の5562人で、2位は東京大学の4793人、3位は立命館大学の3258人、4位は京都大学の2791人となっている。
まず、なぜ外国人留学生が急増したのか触れておきたい。先に触れたデータには「出入国管理及び難民認定法」の改正によって2011年以降は、「高等教育機関」に加えて「日本語教育機関」 に在籍する留学生も含めた点も影響する。
留学生急増、法改正という理由だけでは説明できない
だが、それだけでは説明できないだろう。
ポイントになったのは、2015年の中国人に対するビザ発給要件緩和だ。安倍晋三政権は2014年11月に観光立国推進を目指して、人的交流を拡大するため中国人を対象に数次ビザ(マルチビザ)の発給要件を緩和することを決定した。「インバウンド」という言葉が一般的になったのも、この頃からだ。2024年の訪日中国人は698万1200人で、その旅行消費額は1兆7335億円に上る。日本政府観光局が10月15日発表した今年1~9月期の訪日外国人客は前年同期比17.7%増の3165万500人で、過去最速で3000万人を突破。初めて年間4000万人を超えるペースを見せる。国籍・地域別では、中国が42.7%増の748万7200人と最も多い。
2015年からのビザ発給要件緩和に注目した中国人は、自らの子供たちの留学先として日本を有力な選択肢に加えるようになった。さらに、2017年に安倍政権は外国人受け入れに舵を切る。成長戦略の一環として「高度外国人材」の確保を重視し、2016年4月の「産業競争力会議で「永住権取得までの在留期間を世界最短とする」と宣言したことを踏まえ、外国人が日本で永住権を申請する場合に必要な原則10年以上の在留期間を、最速1年とする大幅な緩和に踏み切った。一定条件を満たせば、永住権取得や家族の帯同も認めるものだ。
「永住権取得までの在留期間を世界最短」という日本
出入国在留管理庁によれば、2025年6月末時点の在留外国人数は395万6619人(前年末比18万7642人、5.0増)で過去最高を更新している。国籍・地域別では、中国が90万738人で前年比2万7452人増、2位はベトナムの66万483人で2万6122人増、3位は韓国の40万9584人で346人増だ。在留資格別では「永住者」が93万2090人で最も多く、次いで「技術・人文知識・国際業務」(45万8109人)、「技能実習」(44万9432人)、「留学」(43万5203人)、「特定技能」(33万6196人)と続いている。
ここまで読んだ方は、もうお分かりだろう。安倍政権時代の2016年に政府の産業競争力会議が宣言した通り、「永住権取得までの在留期間を世界最短」という日本で、永住権を取得することは外国人にとっては魅力的に映る。
「黄金カード」を手に入れられる最も容易なルートは「留学」
そして、その「黄金カード」を手に入れられる最も容易なルートは「留学」ということになる。
日本語などを学んだ後に大学等に進み、卒業後は日本で就職すれば「就労ビザ」がゲットできる。そこで一定期間働けば、永住権取得にたどりつくことができるというわけだ。これは中国において、もはや多くの人々が知る「ゴールデン・ルート」にもなっている。
そこで最初の関門となる「留学」を考えてみたい。東大や京大という日本で最難関といわれる大学はもちろんなのだが、私大最高峰の慶應や早稲田なども日本人が受ける一般入試とは異なる道が外国人にはある。日本の高校にあたる学校を卒業している(卒業見込みを含む)ことが前提となるが、まず留学試験(EJU)は試験の科目数自体が少ない。さらに英語試験の点数や志望書などを突破すれば、面接・小論文で合格することも可能だ。
これは、日本人も国内の難関大学に入学するためにやっている奇策の1つでもあるのだが、外国人留学生や帰国生向けの入試が一般入試と比べて容易な点を踏まえ、高校時代は海外で過ごし、大学入試の際は日本に戻るという子女が存在する。外国人の場合は日本を訪れてから勉強し、留学生向け試験で大学に合格。さらに日本の企業に就職し、永住権を取得できる道がある。
日本の有名大の試験の方が簡単で、欧米と比べれば学費や生活費も安い
早稲田大学は、中国共産党の創設時メンバーである陳独秀や李大釗が留学したことでも知られ、日本の名門大学と認知されている。慶應はグローバルなビジネスリーダーを目指す大学として有名で、卒業生のネットワーク(三田会)の強さは中国人にも魅力的だ。慶應義塾大学の公式サイトによれば、2025年5月1日時点の留学生は2196人を受け入れ、中国が951人(43.3%)、韓国が367人(16.7%)と両国だけで半数を上回る。2023年度卒業・修了外国人留学生の進路先は、日本での就職が最も多い163人となっている。
北京大や清華大といった中国の難関大学に進むよりも、中国人にとっては日本の有名大の試験の方が簡単で、欧米と比べれば学費や生活費も安い。言語や文化の「壁」は存在するものの、大学卒業後の就職やネットワークの確保、さらに永住権取得という道があるならば、ビザの発給要件が緩和されている日本に目をつけるのは当然だろう。
高市政権による外国人規制
東京・銀座や大阪・梅田といった大都市の中心を訪れれば、今や日本人よりも外国人の方が多くなったのかという錯覚にすら陥るようになった。一部の外国人による違法行為や地域住民の摩擦も生じている。高市首相は、外国人政策を話し合う会議を設置し、外国人による不動産取得規制や出入国・在留管理の厳格化、不法滞在者対策などの検討を始める方針だが、どこまで制度や運用を見直していくつもりなのか。移民政策は採らないというならば、そろそろ日本の未来のカタチを示すべきタイミングを迎えている。
留学生政策と永住権取得の緩和がもたらした「永住者予備軍」の急増は、単なる教育や観光の枠を超え、日本の社会構造や国家戦略の根幹を揺るがす問題となっている。高市政権が掲げる「移民政策は採らない」という方針と、現状の「留学からの永住権ルート」との間の矛盾をどう解消するのか。外国人材の受け入れの是非ではなく、日本の国益、治安、そして将来的な人口構成を視野に入れた、明確で持続可能なグランドデザインが今、強く求められている。