日経平均5万円時代の勝者、東証改革・AI・為替150円が描く「日本株の新局面」
本稿で紹介している個別銘柄:アドバンテスト(6857)、SBG(9984)、フジクラ(5803)、住友電気工業(5802)
首相交代、為替150円、AIブーム。2025年秋、日経平均株価は史上初の5万円台を突破した。
1989年のバブル期から実に35年。長い停滞を経て、日本企業の「構造改革」がようやく市場に評価され始めている。
この節目をどう読むべきか。“ミスプライシングの発掘”に定評のあるfundnoteファンドマネージャー・神谷悠介氏に話を伺った。
目次
「東証がアクティビスト化した」株価上昇の本質
神谷氏はまず、「今回の株高は単なる景気循環ではない」と断言する。
「最大の変化は、東証自体がアクティビスト化したことです。企業に対して“PBR1倍割れを放置するな”、“ROEを意識した経営”と直接圧力をかけ始めました。この仕組みが資本効率の改善を促し、日本株再評価のトリガーになりました」
2023年以降、東証による「PBR1倍割れ是正要請」を受け、企業の自社株買い・資本政策改革が一気に加速した。
かつての“現預金をため込む経営”から、“株主還元と資本効率を両立させる経営”へ。
「財政緊縮派と評される岸田政権、石破政権においても、株価は落ちなかった背景には、“企業が変わった”という大きな要因があります。ROEやPBRを経営目標に据える企業が増え、企業が株価を意識した経営を行うようになりました」
為替150円は“企業体質の変化”を映す
政局の変化も、株式相場を支える一因となっている。
2025年10月に実施された自由民主党総裁選の結果、高市早苗氏が新総裁に選出され、その後、同年10月21日付で日本の第104代内閣総理大臣に就任したことが、株式市場でも大きな注目を集めている。
ポスト・アベノミクスとして、積極財政に傾くとみられる高市政権について、市場関係者からは円安が進みすぎるのではないかとの懸念も出ていた。
また、2024年から日本では利上げの議論が続いているが、この点について神谷氏は「石破政権に比べて高市政権は円安になりやすいが、すでに織り込んだ水準」と分析する。
「高市政権は、経済財政諮問会議のメンバーに若田部・前日銀副総裁や第一生命経済研究所の長浜氏を、日本成長戦略会議の委員にクレディ・アグリコル証券の会田氏、元日銀審議委員の片岡氏を選出し、日銀に対して拙速な利上げを牽制してくる可能性もあると考えます。
高市総裁就任後、市場はすでにこれらを織り込んだと見られ、もう一段円安に進むには材料不足と考えます。為替が150円台前半に留まるとすると、来期140円程度と見ている市場の目線が引き上がると考えます」
1円の円安は、日経平均採用企業のEPS(1株利益)をおよそ1%押し上げる。
この水準が維持されれば、今予想されている13%程度の来期増益率が20%近くまで上振れする可能性が出てくる。さらに高市政権が積極財政策をとることで来年度のGDP成長率が引き上がると見られ、企業のEPSが押し上げられそうだ。
日経平均5万円は「高すぎない」TOPIXで見た妥当性
「日経平均5万円は行き過ぎではないか」という声もある。 しかし神谷氏の見方は明快だ。
「全く高くありません。むしろ“成長と再評価の中間点”だと思っています」