「サナエノミクス」で買うべき株、売るべき資産?著名投資家が教えるインフレ時代の最強ポートフォリオ

松本侑
(c) AdobeStock

本稿で紹介している個別銘柄:三菱重工業(7011)、川崎重工業(7012)、IHI(7013)、ソフトバンクグループ(9984)、東京エレクトロン(8035)、鹿島(1812)、大成建設(1801)、大林組(1802)、東京電力ホールディングス(9501)、関西電力(9503)、SCREENホールディングス(7735)、ニトリホールディングス(9843)、神戸物産(3038)、フィリップ・モリス・インターナショナル(PM)、プロクター・アンド・ギャンブル(PG)、コストコ・ホールセール(COST)、みずほリース(8425)、NEXT FUNDS 日経平均高配当株50指数連動型上場投信(1489)、パランティア・テクノロジーズ(PLTR)、半導体需要の動向を見る上でインテル(INTC)、マイクロン・テクノロジー(MU)、ニューモント・コーポレーション(NEM)、SPDRゴールド・ミニシェアーズ・トラスト(GLDM)

 株式市場は「サナエノミクス」への期待に沸き、日経平均株価は5万円の大台を突破。為替も1ドル=150円台での円安が定着しつつある。

 まさに「期待」が主導する、この上昇相場で個人投資家はどう立ち回るべきなのだろうか。このままトレンドの波に乗るべきか、それとも下落局面に備えるべきか。

 今回は『Financial Free College』(以下、FFC)CEOの松本侑氏に、いま注目すべき狙い目セクター、避けるべきセクター、投資家が気をつけるべきポイント、そして厳選銘柄まで詳しく語ってもらう。インタビュー連載全2回の第1回。

目次

防衛・半導体・・・「国策」が追い風の4セクター

ーー高市早苗政権が発足し、市場は積極財政への期待で湧いています。リスクと、注目すべき「高市ドリーム株」についてお聞かせください。

 高市政権は「少数与党」という構造的リスクを抱え、政権運営に綻びが生じれば株価急落もありえます。このリスクを念頭に置きつつも、現状の「サナエノミクス」で恩恵を受けるセクターに注目するのは当然の戦略です。

ーーでは、「サナエノミクス」で恩恵を受けるセクターとは。

 まず筆頭は、政策の柱である防衛・安全保障関連です。高市氏は防衛費の増額を明確に打ち出しています。

 これは三菱重工業(7011)川崎重工業(7012)IHI(7013)といった日本の防衛産業の中核企業にとって、長期的な追い風となります。

 続いて、ハイテク・AI・半導体分野です。AIや宇宙分野への国家投資も強調されており、ソフトバンクグループ(9984)のAI戦略や、東京エレクトロン(8035)、レーザーテック(6920)といった半導体製造装置メーカーは、まさに国家的なテーマに直結します。

ーー防衛やAIは成長分野ですね。昔ながらの公共事業はいかがですか。

 まさしくその分野、インフラ・建設も注目すべきセクターです。 「国土強靭化」や公共事業の拡大は、国から安定的な発注が見込めるため、鹿島(1812)大成建設(1801)大林組(1802)といった大手ゼネコンには確実な収益源です。

 そして最後は、エネルギー安全保障の観点から見直されているエネルギー・原発です。原発の再稼働や新増設もテーマに上っており、東京電力ホールディングス(9501)関西電力(9503)にも勢いがあります。

 また、半導体洗浄装置とエネルギー分野の二本柱であるSCREENホールディングス(7735)なども投資対象としておもしろいでしょう。

激動相場で手放すべき「三重苦セクター」

ーー逆に、この熱狂相場の中で、手を出さないほうがよいセクターはありますか。

 第一に、銀行株です。

ーーこれまでの日銀の政策転換期待で、銀行株は「万年割安株」を脱却して買われてきた側面もありますよね。

 その期待こそが、まさに高市総裁の誕生で大きく後退したと見ています。これまで株式市場は日銀の利上げを期待していましたが、新政権は明確に金融緩和の継続を選びました。

 金融緩和が続けば、銀行の主な収益源である利ざやの改善は当面見込めません。これはメガバンクだけでなく、同じ収益構造の地方銀行も同様です。

 期待で上がっていた分、その期待が剥落すれば下落圧力は強い。積極的に銀行株へ投資する理由は見出しにくいのが現状です。

 第二に、輸入に頼る小売業です。

ーーただ、インフレ下では価格転嫁が進んでいる企業もありますし、消費者の「安さ」へのニーズはむしろ高まっているのでは。

 問題は、その「安さ」を提供する構造にあります。現在、為替は1ドル154~155円台と、歴史的な円安水準が続いています。

 これにより、ニトリホールディングス(9843)のように製品の多くを輸入に頼る企業は、仕入れコストが膨らみ続けます。また、神戸物産(3038)のような国内向けの小売業も、原材料高騰の影響は避けられません。

 価格転嫁しようにも、インフレで消費者の財布の紐は固くなっている。つまり、円安によるコスト増とインフレによる消費の冷え込みという、二重の逆風に直面していると分析しています。

「値ごろ」で買うな、米国株で逆張りは危険

ーーちなみに、米国株で避けるべきセクターはありますか。

 米国株市場では、トレンドが長く続く傾向があり、逆張り投資はリスクが高いです。日本人投資家は「値ごろ感」で買いたくなる傾向がありますが、今の市場で特に注意すべきは、下落トレンドにあるディフェンシブ株です。

ーー本来、不況に強く、ポートフォリオの「守り」として組み入れるのが定石だと考えられていますよね。

 それこそが、今の市場の注意すべきポイントと言えます。

 おっしゃる通り、フィリップ・モリス・インターナショナル(PM)のようなたばこ株、プロクター・アンド・ギャンブル(PG)コストコ・ホールセール(COST)といった日用品・小売株は、本来ディフェンシブ銘柄です。

 ところが、現在は市場の関心がAIやテクノロジーに集中しており、これらのセクターから資金流出が顕著になっています。つまり、今は「守り」として機能しておらず、単純に下落トレンドを描く「落ちるナイフ」の状態と言えます。

 短期的な回復は難しい状況ですので、市場のトレンドが落ち着くまで、最低でも半年から一年は、これらの銘柄への新規投資は控えたほうがよいでしょう。

インフレ3%時代、国債・預金では目減り確定

ーーインフレ下での資産防衛はどうでしょう。インフレ率3%超の今、元本が守られる「国債」や「預金」が安全と考えがちですが…。

 ですが、これからの時代「安全」の定義はアップデートすべきです。インフレ下で名目上の元本が守られても、お金の購買力(実質的な価値)が目減りするなら、安全とは言えません。

 日本のインフレ率約3%に対し、国債の利率は1%台前半。毎年2%近く実質価値が毀損します。現金預金はさらに深刻です。

 対してゴールドは実物資産であり、インフレ対策の王道です。ポートフォリオの一部にゴールドを振り分けることは、必須の選択肢と言えます。

ーー資産防衛とは逆に、最大の負債である「住宅ローン」はどうでしょう。金利も上がっていますし、インフレ下の今は様子見が賢明では。

 そこがインフレ時代の本質です。インフレは現金の価値を減らす一方、債務(借金)の実質的な負担も軽くします。だからこそ、住宅ローンは「今が借り時」という結論になります。

 たしかに金利は上がりましたが、歴史的に見れば現在の金利は依然として破格の水準です。インフレが常態化すれば、金利はさらに上がる可能性が高いです。将来慌てずに済むよう、今のうちに返済額が変わらない長期固定金利を選ぶのが賢明でしょう。

 インフレ下ではお金の価値が下がるため、30年後に返すお金は、今より実質的な価値が低くなっていますからね。

「高配当・国策銘柄、ゴールド」インフレ下のポートフォリオ

ーーでは最後に、これまでの注目セクターや注意点を踏まえ、松本さんが厳選する最強ポートフォリオの組み方を教えていただけますか。

 はい。現在の市場は、高市政権の政策期待という「攻め」と、インフレ・円安という「守り」の両面を意識したコア・サテライト戦略が有効です。

 まず「コア」として、日本株のインフレ対策と高配当銘柄を据えます。 債券から株式にシフトする狙いは、インフレ率を上回るリターンを確保することにあります。

 例えば、みずほリース(8425)は連続増配21年で、最新配当利回りは約3.6%。金融セクターですがリース業は金利上昇局面でむしろ業績が向上しやすく、日本のトレンドに適合しています。 

 また、ETFを活用するなら「NEXT FUNDS 日経平均高配当株50指数連動型上場投信(1489)」が面白い。配当利回りは約4%で、配当を多く出す企業の株を多く組み入れる「配当利回りウェート方式」を採用しているため、インカムゲイン確保に適しています。

 SBI証券などではETFの自動積立も可能になり、手間なくドルコスト平均法を実践できます。

 次に「サテライト」として、成長性の高い日本株と米国株を加えます。

  日本株では、やはり「サナエノミクス」関連が主役です。防衛の三菱重工や半導体の東京エレクトロンなど、テーマ性のある銘柄を組み入れます。

 米国株では、AI関連のパランティア・テクノロジーズ(PLTR)や、半導体需要の動向を見る上でインテル(INTC)マイクロン・テクノロジー(MU)に注目しています。

 米国株ETFでインカムを狙うなら、SPYD(SPDR Portfolio S&P 500 High Dividend ETF)が適しています。最新配当利回りは約4.5%で、変動性が低いディフェンシブセクターが多いのが特徴です。

 最後に、インフレ対策としてゴールド(金)を組み入れます。 S&P500に含まれる唯一の金鉱株であるニューモント・コーポレーション(NEM)は、金価格上昇局面で大きな値動きが期待できます。

 より安定的にゴールドに投資したい初心者の方には、純金積立や、NISA口座でも運用可能なSPDRゴールド・ミニシェアーズ・トラスト(GLDM)がおすすめですよ。

〈構成・西脇章太(にげば企画)〉

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この記事の著者
松本侑

投資スクール「Financial Free College(FFC)」を運営する株式会社バイアンドホールドCEO。千葉県出身。大学卒業後メガバンクに就職し、投資に興味を持つも、適応障害を経験。その後、難関大学向け大学受験塾講師として働きながら本格的に投資を開始するが、最初の3年間は損失が続く。試行錯誤を重ねた結果、長期投資を軸としたスタイルを確立。2020年には資産を4,000万円に増やし、サイドFIREを達成。現在の総資産は8,000万円に到達。

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