「自分で勉強する子」の親がしている、たった一つのこと

なぜ、「勉強しなさい」とガミガミ言ってしまうのか
いつの世も親の心配の多くは子供に向けられます。先生や友達と仲良くできるか、ケガや大病に悩まされずに過ごせるか、大人になった時に働いていくことができるか・・・。心身ともにスクスク育つことを願わない親はいません。2022年4月に成人年齢が18歳に引き下げられ、親離れ・子離れが求められるタイミングはあっという間に訪れます。多感な学びの時期、親はテスト結果や通知表を片手にガミガミ言ってしまうことも多いですが、それはNGです。では、親は子供たちといかに過ごせば良いのでしょうか。今回は、「自分で勉強する子」の育て方をテーマに記したいと思います。
「お前の道は、お前が決めろ」。2021年4月から日曜日の夜、受験生やその親が注目するドラマが放送されました。最高視聴率が20%を超えたTBSの「ドラゴン桜2」です。俳優の阿部寛さんが演じる桜木建二、長澤まさみさんの水野直美という2人の弁護士が独特な指導方法によって生徒たちを東大合格に導く学園ドラマで、受験を控える親子に刺激と衝撃を与えたことでしょう。
桜木がこう生徒たちに投げかけたセリフは一見、乱暴にも矛盾にも見えるのですが、実はこれが「自分で勉強する子」が育つ真髄とも言えます。なぜならば、親は自らの経験や知識から「勉強しろ!」と叱ったり、ガミガミと言ってしまったりすることがありますが、それは必ずしも良い効果を生まないからです。思春期ともなれば、親が考える進路先や勉強法には反発すら覚えます。愛しい子供とはいえ、別の人間、別の人生、別の歩み方があるという理解と尊重をすることが欠かせません。
「テストの点数が悪いと親に怒られるから勉強している」「親も先生も『みんな違って良い』とカッコいいことを言っているのに、勉強だけは他人と比べてばかり」。このような心の叫びが多く寄せられています。偏差値が高く、難関といわれるような進学校でもメンタル不調を抱える子供がみられます。身体が大きくなっても心がついていかず、自分に合わない勉強のスピードや方法、家庭環境から過度なストレスを感じてしまうケースがあるのです。
親から言われたのは「あの著者の本、楽しかったよ」だけ
東大社会学研究所とベネッセ教育総合研究所が小中高生を対象に実施した「子供の生活と学びに関する親子調査2015-2016」は、「自分で勉強する子」が育つヒントとなります。これを見ると、小学4~6年生の29.9%、中学生の53.3%、高校生の59.6%が「勉強嫌い」と回答し、学習内容の難度が上がるにつれて「勉強嫌い」は増加しています。しかし、転機を迎える子供には1つのポイントがあることがわかります。1年後に「嫌い」から「好き」に変わった子供はどの学年にも1割程度が存在していますが、「勉強好き」になった理由に「新しいことを知るのがうれしいから」をあげた子供が7割超に達しているのです。これは、自らの興味や関心といった内発的動機が重要であり、学習時間の増加や成績アップにつながるものといえるでしょう。
では、親はどのように接していけば良いのでしょうか。心理カウンセラーの立場で言えば、子供に対しては「押しつけ型」ではなく、基本的な心理的欲求を刺激することがポイントになります。端的に表せば、「知りたい」「気になる」という人間の欲求をくすぶり、モチベーションに働きかけるのです。これは「見守り型」「刺激型」と言い換えることもできます。
具体的に1つの例をあげてみましょう。現在、東京都内の国立大に通う男子大学生Aさんは、今でも毎日1冊の本を読み切る「読書好き」です。中高は誰もが知る男子の私立最難関校で、小学6年生時は有名進学塾の最上位クラスで学んでいました。しかし、親からいわれたのは「○○さんの本を読んだけど、本当に面白かったよ」という言葉だけ。「なんだ、この成績は!」「もっと勉強やらなきゃ」と叱責を受けた経験はありません。Aさんは「親が楽しそうに本を読んでいるのを見て、自分も読書が好きになりました。幼い頃から親に読み聞かせを毎日してもらい、『どんな内容なんだろう』『もっと先を知りたい』と気になって仕方がないと感じるようになりました。友達は親から『もう宿題やったのか、って言われて頭にくる』などと愚痴っていましたが、僕にはその経験はない。国語は最初から得意でしたが、読解力が上がることで算数や理科、社会の点数もアップしていきました」と振り返ります。