やっぱり「とりあえずS&P500を買っておけ」が投資の真理である理由…ウクライナ侵攻が「強さ」を証明した

ETF(上場投資信託)にも多くの銘柄があるが、初心者はまず何を選ぶべきなのか。投資で得た利益を基に40代半ばでFIREを達成した桶井道(おけいどん)さんは、「シンプルに、オーソドックスにいくべき」と投資信託でも人気のS&P500を薦めている。日本と米国のETFの違いやS&P500を選ぶべき理由について、株初心者にもわかりやすく解説する。全3回のうちの3回目。
※本稿は、桶井道『月20万円の不労所得を手に入れる! おけいどん式ほったらかし米国ETF入門』(宝島社)の一部を抜粋・再編集したものです
第1回:ほったらかし投資「超」入門…月20万円の“じぶん年金”を生み出すETFの錬金魔法
第2回:これは打ち出の小槌だ! …ETFで「喜びを噛みしめる毎日」を送る40代個人投資家
初心者はまず「東証ETF」から
ETFには、日本国内の東京証券取引所(東証)に上場している「東証ETF」と、米国のニューヨーク証券取引所などに上場する「米国ETF」の二つがあります。
ただし米国ETFを購入するには、証券会社に外国株式取引口座を開設したうえで日本円を米ドルに両替し、外国株口座の取引画面で注文しなければなりません。慣れてしまえば簡単なのですが、最初は少しハードルが高いかもしれませんね。
初心者は、証券総合口座だけ開設すれば、日本の個別株と同じように日本円で取引できる東証ETFから始めるのが無難でしょう。税金面でも米国ETFより有利です。値上がり益や分配金にかかる税金は、日本国内で徴収される20.315%のみです。
東証ETFは全部で266銘柄(2022年7月1日現在)。当然、日本の株価指数である日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)に連動したものなど、日本株を投資対象にしたものが多くなっています。その上、東証には米国の株価指数S&P500やNYダウ、全世界株式、先進国株式に連動するETFも上場していて、好きなものを選べます。米国のIT・半導体関連のハイテク成長株が多数組み入れられ、ここ10年ほど強烈な上昇が続いていたナスダック100に連動するETFも、ちゃんとあります。
東証ETFの中で私がおすすめするのは、米国のS&P500、全世界株式、先進国株式のETFです。ツイッターで「最初は何を買えばいいですか」とフォロワーさんに聞かれることがよくありますが、最初の1本として検討したいのは、S&P500に連動した東証ETFですね。株式、全世界株式、先進国株式のいずれかをメインに1本選び、あとはトッピング的にナスダック100やリートなど、少しずつ気になるものを買う形がよいと思います。
男は黙って「S&P500」!
私がなぜ、米国メインで投資しているのか。それは、米国企業の株主還元意識が世界で一番高いと思うからです。また米国は長年成長し続けていて、S&P500を見てもITバブル崩壊、リーマン・ショック、コロナショックなどの金融ショックで下落しながらも、長期的には右肩上がりに成長し続けています。
確かに、投資の未来は誰にもわかりません。ここ20年、30年近く世界最強だった米国がこれから10年、20年で凋落して、別の国が台頭してくる場合も、もしかしたらあるでしょう。リーマン・ショックと同レベルの大暴落が米国市場を襲うかもしれません。いや、それ以上の金融危機や景気後退で、10年、20年と米国経済が低迷し続ける可能性も、決してゼロとは言い切れません。
私自身、これまで何度も、株価暴落を体験してきましたので、そういったリスクはわかっているつもりです。でも、私は今のところ米国の優位性を疑っていません。米国は現在、世界において、通貨(金融)、軍事、経済、政治の面で覇権を握っている最強の国です。その傾向は、ウクライナ侵攻で経済制裁を受けるロシアの衰退や、中国に対する西側諸国の経済包囲網の変化により鮮明になってくるだろうと見ています。
米国では常にイノベーション(技術革新)が起き、急成長を遂げる企業が登場してきました。自由と民主主義の国です。世界中から才能豊かな移民を受け入れている米国企業の成長はこれからも続くでしょう。
S&P500は、そんな世界最強国家である米国の、厳しい条件を通過して選ばれた500社のエリート揃い(選ばれた後、ダメになったら入れ替え)。優秀な企業ばかりですから、一時的に急落しても立ち直るでしょう。急落したときは「今は安く買えるチャンス」と、毎月の積み立て以外にスポット買いをするのもいいでしょう。
種類の豊富さ・純資産総額の大きさでは米国ETF
東証ETFを〝入門編〟とするなら、米国ETFは〝応用編〟になります。ETFは米国で発達した金融商品のため、とにかく種類の豊富さが段違いです。米国ETFは日本のネット証券で買えるものだけでも350本以上。より効率的に利益を出せるよう、自分好みにチューンアップしたポートフォリオを作るために、米国ETFも活用しましょう。
純資産総額から見ても、東証ETFは米国ETFほど大きくはありません。つまり、東証ETFは日々の売買高が少ないのが難点です。買い手も売り手もいないと、取引時間中に売買がほとんど成立せず、価格がつかないETFもあります。一方、米国のS&P500に連動するETFの中には、資産総額が約50兆円のものもあります。「億円」ではなく「兆円」。実際はドルベースですが、日本のETF市場とはケタ違いです。
東証ETFではなく米国ETFでデビューする場合も、やはり私はS&P500を推します。S&P500のETFに関しては、東証での品揃えも充実していますが、米国ETFの信託報酬に相当する「経費率」が東証ETFより安いものが多い点は米国ETFのメリットです。長期投資はわずかなコスト差が利益に影響します。
現地の米ドルベースで時間差なしに取引できることも魅力の一つです。私の場合、全体相場の状況に合わせてリアルタイムで買い付けを行うこともあります。東証ETFと異なり、自動積み立ても可能です。運用力や信頼性という面から考えて、あえて米国ETFを買う意義はあります。

桶井道『月20万円の不労所得を手に入れる! おけいどん式ほったらかし米国ETF入門』(宝島社)